ハルくんの気持ち、と会長の話
「は…ハルくんてさ、高校卒業したら…どうするの?」
「どした?突然」
ハルくんが笑いながら言う。
部活から帰ってきて、
私の部屋に来ていたハルくんに、私は切り出した。
「そういえば、そういう話…聞いたことなかったなと思って」
「うーん。…考えてなかったな。バスケは続けたいけど。」
ハルくんが曖昧に笑う。
「そう、なんだ」
「茗子は?大学とか考えてるの?」
「ううん…全然」
逆に聞かれて戸惑う。
ーーーそうだよな…進路とか考えてなかった。
漠然と大学とか行くんだろうなとは思ってるけど。
「ーー茗子?」
私を後ろから抱き締めたまま、ハルくんが言う。
「ん?」
「もしかして、生徒会長からなにか言われた?」
「え?」
「寛人がたまたま生徒会室から茗子が出てくるところ、見たって」
「あ…」
ーーーーそうだったんだ…。
「俺に、生徒会長になるように説得してとか頼まれた?」
「…うん」
ーーーーそれも気付いてたの…?
「やっぱりか」
ハルくんがため息混じりに言う。
「どうして?」
「ついこの間に、嘉津先輩にも言われたから…。あの柏木会長、色んな人に説得するように頼んでるみたいで…」
「ーーーハルくんは、やりたくないの?」
「……俺にはバスケがあるし」
ハルくんが静かに言う。
「でも、中学では生徒会長やってたよね?バスケも生徒会もちゃんとできてた」
「………じゃあ、茗子も生徒会副会長、やる?」
ハルくんが私の顔を覗き込む。
「え、私は出来ないよ、そんな人間じゃない」
顔が近くて、ついうつ向いて答える。
「茗子が隣に居てくれるなら、やるよ」
「………」
「茗子と居られる時間を、これ以上邪魔されたくない」
ハルくんが私の顎に手を添えて、視線を合わせる。
「ハルくん…」
そして、優しくとろけるキスをした。
「柏木先輩」
「あら、相田さん。」
翌朝、私は生徒会室に出向く。
「私も…生徒会副会長に立候補しても良いですか?」
「あなたが?」
柏木会長が驚いたように言う。
「それが、ハルくんが生徒会長に立候補する条件です」
私は、柏木会長にハッキリと告げた。
「………まぁ、いいわ。当選するかなんて、分からないし。それで澤野くんが立候補するのなら」
「じゃあ、この間の写メ、削除してください」
私の言葉に、柏木会長が携帯電話を取り出す。
「分かった……ほら、消したわ」
携帯電話の削除しましたの文字を確認して、ホッと息を吐く。
「でも、あなた、本当可愛いわね…」
柏木会長が微笑んで言う。
「え…」
-ーーー何、急に…。
私が赤面していると、
「比嘉には気を付けなさい、あなた、狙われてるわ」
「………どうやって気を付けろって言うんですか?」
ーーーー私だって気を付けることで防げるなら、気を付けたいよ…。
「ふふ…まぁ無理よね…あいつは一度狙った女は逃さないし。まぁ追い掛けてるのが好きみたいね、そして相手に好かれたらすぐに捨てるわ」
「どんだけ最低なの…」
ーーーーヒトの気持ち弄んで楽しんでるってこと?
「あなたも惚れたふりして、一度抱かれたら?そしたらもう追ってこないわよ」
「柏木先輩は…そうしたんですか?」
ーーーー何それ、他人事だと思って…。
カチンときて、自分がそうしたのかと聞いてみた。
「えぇそうね。しつこいから相手したわ一度。」
「え…」
しれっと答えた柏木先輩に、私は唖然とする。
ーーーーそんなこと…私には出来ない。
何その、割りきった関係…。
それで誰が幸せになるの?