生徒会長の依頼
新学期が始まり、
慌ただしく毎日を送っていた。
クラス委員も、
推薦により、クラスの人気者の、
彩と航くんに代わり、肩の荷がおりる。
そんなある日、
三年生の先輩に生徒会室呼び出される。
ーーー現在の生徒会長の柏木來香さんだ。
「ごめんなさいね、相田さん」
生徒会長の椅子にかけながら、柏木会長が言う。
「実は、あなたにお願いがあって…。澤野くんのことなんだけどーーー」
「え?」
ーーーーハルくんのことで、なぜ私が?
「説得して欲しいの、次期生徒会長に立候補してほしいって」
「生徒会長?ですか?」
ーーーーハルくんが?生徒会長…?
「澤野くんは、入学してからずっと学年トップの成績なの。それに、人望も厚いわ。」
ーーーーすごい…ずっと学年トップなんだ…。
知らなかった…。
「…彼こそ、相応しいと思うのよ。生徒会長に。ーーーー今の副会長の鈴木くんには悪いんだけど…彼はそうなるべき器じゃないの…務まらないわ…」
「私には…できません」
ーーーハルくんは、バスケの時間が大切で…。
ハルくんが望んでないことを、無理矢理させるなんて…私には出来ない。
「そう、残念だわ…」
生徒会長は、特に感情を込めずに言った。
「失礼します」
私か生徒会室を出ようとしたとき、
「あ、そうだ相田さん?」
生徒会長が思い出したように声をかける。
私が振り向くと、
彼女は携帯電話の画面を私に見えるように掲げて言った。
「これ、浮気かしら?」
「!!!」
私は青ざめてそれを見る。
ーーーこの間の花火大会の時の…。
比嘉先輩が私にキスしてる写メだった。
「どこでそれ…一体誰が…」
「これ、澤野くんが見たら、どう思うかしら?」
生徒会長が口元に笑みを浮かべて言う。
「脅すんですか…生徒会長のくせに」
私が悔し紛れに言うと、
「あら、脅すだなんて人聞き悪いわね。ーーー自分がこれを弱味だと思うから“脅す”だなんて発想になるんじゃない?」
椅子から立ち上がって、私に言いながら近付いてくる。
「ーーーー削除してください」
目の前に来た生徒会長に言うと、
「そうね、澤野春が生徒会長になったら…削除しましょ」
愉しそうに笑って、柏木会長が言った。
「………」
ひどい…なんて人なの…。
この人、比嘉先輩とグルなの?
同類ってことなの?
「来月までに、立候補するように伝えてね」
私の顔を覗きこみながら、柏木会長が微笑む。
ーーーーハルくん…。