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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
132/283

花火大会

日も暮れてきて、

私たちは花火大会の会場へと歩いて向かう。


「ハルくん…これ…」

私は街に着いて色んなお店に入って見ていた時、

こっそり買ったリストバンドを渡す。


「どしたの、これ」

「さっき見つけて…可愛かったから…その…誕生日プレゼントに…と思って」

ーーーー私の好みだから、ハルくんどうか分からないけど…。


「ありがと、大事にする」

ハルくんが喜んで、腕につけてくれる。


「あとね、今日は私がお金払うからね、出店でなんでも欲しいもの言ってね」

「え?」

「私、今日のためにお小遣い貯めてたから!!ーーー誕生日プレゼント!」


ハルくんが驚いたように目を見開く。

「女の子にそんな奢って貰えないって」

ハルくんが慌てて言う。


「違うよ、誕生日プレゼントなの。」

「そっか」

私がむきになって言うと、

諦めたようにハルくんが笑う。


「じゃあ、たこ焼と…ポテト、食べよ?」

「うん!!」

手を繋いで、人混みの中を歩く。


出店も、すごく混んでいて、どこも長蛇の列だった。

「私たこ焼並んでるから、ポテト並んでて良いよ?」

きっと、分担しないと、時間ばかり過ぎて、花火始まっちゃう…。


「いやいいよ、一緒に並ぶ。急いでないんだから」

ハルくんが笑顔で繋いでる手をぎゅっと握る。


「そっか…」

私も笑顔で手を握り返す。



「あれ、もしかしてメイコちゃん?」

その時不意に、声をかけられる。


ハルくんと振り向くと、

比嘉先輩が浴衣姿で立っていた。


「うわ…可愛いなー浴衣姿!」

「なんで…ここに?」

私が警戒してハルくんの腕に隠れる。


「何でって、デートだよ。彼女が来たいってうるさいからさ」

ーーーーまた違う女の人…。


「早くそいつと別れなよ。俺相手してあげるよ?メイコちゃん?」

からかうように、私の顔をのぞき込む。


「ーーー別れないけど?」

ハルくんが低い声で言い返すと、

比嘉先輩は笑いながら歩いて行ってしまった。


「ーー何なんだ、あの人…」

ハルくんが比嘉先輩の背中を睨みながら呟く。






たこ焼とポテト…飲み物を買って、

土手に座って、花火が上がるのを待つ。


「あ、私、かき氷も買ってくるね。」

私が思い付いて、立とうとすると、

ハルくんが腕をつかんだ。

「ーーー行くな…」

ハルくんの表情に、私が驚いていると、

「茗子が心配なんだ…どこにも行かないで…隣に居てくれよ…」

真剣な眼差しで言われて、ドキッとした。


ーーーどうして…そんなに心配するの?


私が驚いていたまま固まっていると、

「ーーーなんて、な。良いよ、買ってきて。」

冗談だったのか、笑って腕を離される。


少しホッとして、買いに行こうとする。

「ハルくん…レモン味だっけ?」

「あ、うん。よく覚えてるな」

「あ…」

しまった…つい…。

ストーカーみたいだよね…昔よく食べてた味覚えてるとか…。





「かき氷屋さん、すぐそこだから。すぐ戻るね、座って待ってて」

「分かった」

私は急いで土手を上がって、かき氷屋さんに行く。



ーーー私はただ、たくさん買って、ハルくんを喜ばせたかったんだけど…。

かき氷とか…いらなかったのかな?

それより、側にいた方がよかった?



かき氷の列に並びながら、考えていると。


「え、あれー?キミもしかして独り?」

突然列とは関係なく、知らない人達3人に声をかけられた。



ーーー『心配なんだ』

ハルくんの言葉がすぐに頭をよぎる。


これって…ナンパーーー?



私が無視していると、

「ちょっと、シカトしないでくれる?」

「傷つくなー」

「可愛いからって、すましてんなよなー」

笑いながら私の腕をつかもうとする。


その時、ぐいっと肩に手を回されて、

「俺の彼女に、何か用?」

私の顔に顔を寄せて、

そう言ったのは…

ーーーーーーー比嘉先輩だった。



「ちょっと…」

私が抵抗しようとすると、


「話、合わせた方が賢明だと思うけど?」

耳元で比嘉先輩が囁くように言う。



私はとりあえずその場しのぎでその手を振り払うのを我慢した。



「…んだよ、彼氏近くにいたのかよ」

「他、探すかー」

知らない男達は、比嘉先輩の言葉を信じたらしく、

さっさと行ってしまった。



「良かったね」

比嘉先輩が私に意地悪に微笑んで言う。

「離してください」

私がすぐにイラつきながら腕を振り払うと、

「おいおい…助けてもらった先輩に対してその態度かよ」

「………ありがとうございました。」

不本意ながら、お礼を言う。


「うわ、全く感情こもってねーし」

「彼女さん、待たせてるんじゃないんですか?」

私が比嘉先輩のリアクションを無視して言うと、

「あ、そうだった」

比嘉先輩が笑って言う。


「まぁ、もう飽きたから今日ヤったら捨てるつもりだけどね」

「は?」

私があり得ない発言に思わず声を出すと、

「あ、これ、内緒なー!

それより、さっきのお礼、貰ってないなー」

「…かき氷ぐらいなら、奢りますよ」

イチイチ図々しくて、本当嫌いだこの人。

でも助けてもらったし…。


「お、やった…」

比嘉先輩が喜んだので、

単純だな、この人ーーーと思ったその時、

「ーーー…っんん?!」

目の前が暗くなり、突然唇を奪われた。


「ーーーって、ガキじゃねーんだし、かき氷なんかで喜ぶわけないじゃん?」

濡れた唇を指でなぞりながら、

比嘉先輩がからかうように、笑って言う。


「メイコちゃんの唇美味しいなー。俺好きだわ」

「………」

我に返って慌てて唇を両手で抑える。


この人…今ーーーー!?



『ーーー比嘉には気を付けろよ。あっという間に犯されるから』

ーーー嘉津先輩が前に保健室で忠告してくれたのに。


『俺の居ないところで、絶対他の(おとこ)に隙見せないで』

ーーーハルくんがあの時そう言ってたのに…。



何で私はいつも…。

ーーー自分が馬鹿すぎて、泣きそうになる。


「楽しいですか、好きでもない人にこんなことして」

「ん?俺メイコちゃん好きだよ?」

「私はあなたが嫌いです」

「うわー、面と向かってはじめて言われた」

茶化すようにリアクションする。


こういうところが嫌いなの。

ひとを馬鹿にしてるみたいで。


「話しかけないでください、もう。」

私が涙目で必死に凄むと、

「分かった分かった。

じゃあ澤野春にキスしちゃったこと、謝ってくるよ」

比嘉先輩が立ち去ろうと背を向ける。


「え、何言って…」

私がつい動揺すると、

「その顔…本当たまんないね」

比嘉先輩がまた、唇を寄せる。


ーーーーまたからかわれた!?


今度はすぐに自分の口を両手で押さえた。


「最低な人…」

吐き捨てるように言って、私はかき氷を買って、

すぐにハルくんのもとに戻る。


「はい、ハルくん」

「ありがと。ーーー茗子、どうかした?」


「え?」

ハルくんに言われて、

後ろを見ていた私はハッとする。


比嘉先輩が居ないか、

つい後ろばかり気にしてしまった。


「何でもないよ」


ーーーーまた、私…嘘ついてる。



「茗子?」

ハルくんが私の頭を撫でて言う。

「大丈夫?」



ーーーーー最低なのは私も同じだ…。


「大丈夫」

笑顔をつくって言うと、ちょうど花火が上がる。


「きれいだねー」

「そうだな」

見上げて言う私の言葉に、ハルくんも頷く。



花火が打ち上がって、消える度に、

私の罪悪感が増していく。


ーーー私から言うべき?黙っているべき?



どうしたら、ハルくんを傷付けないで済む?

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