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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
130/283

インターハイ2戦目

朝、ふと目を覚ますと、ハルくんの姿がなかった。




ーーー夢…?


でも私は何も着ていなくて…。


「あ…」

時計をみて、慌ててシャワーを浴びて支度する。




インターハイ二戦目。

試合が始まると、やはり緊張して胃が痛む。


相手が去年の準優勝校の松代高校だから、

昨日やる気になってた先輩たちも、すっかり萎縮してしまっている。



ーーーダメだ、私がこんな表情(かお)してたら…。

私は胃が痛いのを堪えて、

笑顔を作ると、皆に声をかけた。


「皆さん、いつも通り、楽しんできてください」






ーーーー試合は、

第三クウォーターまで相手方のペースで進められて…結果、30ー58。

かなりの点差で押され続けていた…。



「まずいな…完全にのまれてる…」

第四クウォーターも残り半分のところで、

嘉津先輩が、険しい顔で言う。


ハルくん以外の皆がシュートしても、

毎回相手のブロックに遭い、外してしまう。


皆もパスをハルくんに回して、

ハルくんにシュートさせる回数が増えていた。

それが相手の予測通りらしく、

ことごとくパスをカットされてしまう。



「向こうのセンター…二メートル近いしな…」



このままじゃ、終わっちゃう…。



「頑張ってーーぇ!」

私はなりふり構わず叫んだ。

ーーーーハルくん…みんな…頑張って!!

私の声が届いたのか、皆に笑顔が戻る。


ハルくんが寛人さんにボールを回す。

寛人さんが先輩にパスする。

先輩が、相手のディフェンスをかわして、ハルくんにパスが通った!

ハルくんがスリーポイントを打つ。

綺麗なフォームで…スローモーションのようにボールが円を描いて…スポッ…っと心地良い音が聞こえた。


ーーーーーひさしぶりの得点に皆も喜んだ!

その瞬間はいつもの、楽しんでる試合(バスケ)だった。



でも…やはり去年の準優勝校だけあって、

点差は縮まらず、

結果、45ー62で、西高は負けてしまった。



「あの、松代高校相手に、第四クウォーターではかなりディフェンス出来てたよ。リバウンドも負けてなかった。」

嘉津先輩が拍手する。

「すみません…」

ハルくんが頭を下げる。


「先輩たちの分も…頑張って、せめてベスト8くらいまでの結果が欲しかったのに…」


「春…お前のせいじゃない」

「言っただろ、バスケは個人プレーじゃないって」

先輩達が口々に言う。


「先輩達の最後の大会なのにーーーー」

ハルくんがつらそうに言いかけると、

嘉津先輩がハルくんの肩に手を置いて言った。


「春、楽しかったよ。ありがとう」

他の先輩たちも、笑顔だった。



ーーーーこれで…三年生は引退…終わりなんだ…。

先輩たちは、清々しい顔をして笑っていた。


でも、

ハルくんは、まだ落ち込んでいるように見えた。




ーーーハルくん…二年なのにレギュラーだったから責任感じてるのかな…。


私はかける言葉がなくて、

ただ隣にいるしか出来なかった。


帰りのバスで、ハルくんが私の肩に頭を乗せる。

ドキンと心臓が高鳴る。


でも、一言も話さなかった。

ーーーーー私に出来ることって…なんだろう。


つらそうなハルくんに、私が出来ることーーー。


ふと窓を見ると、

窓ガラスにつらい表情(かお)をしている私が映っていた。


ハルくんがつらいと…私もつらい…。

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