表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第一章 】
13/283

花火大会

「あ、来た来た!茗子(めいこ)、こっち」

菜奈が私に気付いて、手を挙げる。


「菜奈、浴衣すごく可愛いー」

「ふふっ、ありがと」

嬉しそうに笑う菜奈。


「甚と仲西くんも、あと少しで来るってー」

「うん」

菜奈には、試合を観に行ったこと、

言ってなかったな…。

放課後に腕を掴まれたことを思い出す。



「茗子も浴衣かわいい~、帯の結び方もオシャレだし」

「あ、これは……」

「え?」

「お母さん居なくて…それで、たまたまハルくんが……」


「え、春先輩に着付けてもらったの?!」

奈菜が驚き過ぎて、でかい声を出す。

「お待たせー」

そこにちょうど、甚と仲西くんが現れた。


ーー聞かれた?


何となく気まずくなって、うつむく。


「菜奈も茗子もやっぱ浴衣かわいいじゃんー」

「でしょ~、もう少し遅かったらナンパされて居なかったかもよ、ここに。」

「マジか、間に合って良かったぜ」

甚と菜奈がいつもの冗談半分の会話をする。


「甚の甚平と、仲西くんの浴衣もかっこいいよ~」

菜奈が二人に言う。

「ありがとう…」

仲西くんはそっけなくお礼を言った。


確かに、何だかいつもと雰囲気が違うから……。

なんか、照れるかも……。



「めいこちゃんの浴衣、見れて良かったわ、マジ」

花火会場に向かうときに、

菜奈と甚が先を歩いていたので、

自然と仲西くんと並んで歩いていた。


「え?」

仲西くんに聞き返そうと顔を向けると、

「すっげぇ、かわいい!!思った通り」

思いっきり間近に笑顔の仲西くんと目が遭った。


途端に、かぁぁっと顔の体温が急上昇してるのが分かる。

ーーーこの人…苦手だ。


しばらく、お互いに無言で歩いていると、

仲西くんがさっきより低い声で言った。

「それ…春先輩に着付けてもらったんだってね」


やっぱ聞かれてた。


「うん…」

私が頷くと、仲西くんは足を止めた。

「付き合ってないのに、そういうこと、出来る人なんだね…」

「え?」

なんか、怒ってる?

「春先輩、俺嫌いなんだよね。

好きな子、泣かせてばっかで……

なんで、平気なんだよ、彼女がいる男に浴衣着せてもらうとか…」


彼女がいる男ーーー。

それは、ハルくんのこと?

分かってるけど、認めたくない自分もいた。

彼女の存在ーーー。


「彼女のこと、なんで仲西くんが知ってるの?」

「彼女は…、かすみは、俺の…大切な人だから」


「え?」

「かすみは、元々幼なじみで…でも、気付いたらもうあいつと付き合ってた。」

仲西くんもーーー同じ………?

私と………。


「いつも、泣いてたよ…あいつと言い合いして…」


ハルくんと口喧嘩…?

あの、優しいハルくんが?

混乱する私に、仲西くんは続ける。


「好きなままで……虚しくならないの?」

「……」

「俺は、かすみには全く相手にされなかったし、ずっと報われなくてつらくて…春先輩が憎くて…でもそんな時、春先輩の隣にいためいこちゃんの事が気になり出したんだ。」

「え?」

「似てたから…俺の…表情とーーー。」

「私が?」

「気付いてたんだろ、去年から。もう…無理なんだって」

ドキッとした。

言い当てられた…。

本当に私のこと、見てたんだ…………。


「ずっと気になって、でも、接点無かったから話かけれなくて…ほら、茗子ちゃん、ガードめちゃ固いで有名だったし。でもこうやって知っていくうちに、惹かれてる自分がいるって最近気付いたんだよね…」

何も言えず、ひたすら俯いて聞いている。

ーーーこれって、告白?

心臓がうるさい。

いつもなら、

「興味ないです、ごめんなさい」で済ませていたし、こんな風に、赤面することもなかったのに。


「春先輩のこと忘れなくても良いから、俺との事、考えくれない?」

真剣なまなざし………。


「ごめんなさい、正直分からない…」

自分でもーーー。


「友達としてなら、仲良くは出来るけど?ってこと?」

傷付いた顔をしてる仲西くんが、弱々しい声になってることに気付く。

ーーー友達として…、なのかな。

でも、甚とはやっぱり違う。

こんなにドキドキしたりも、ないし。

ハルくんじゃないのに、ドキドキすることがあるなんて、初めてで、戸惑う。


「じゃあ、良いよ。」

「え?」

突き放された言い方に思わず顔をあげると、

唇に仲西くんの唇が触れた。


「これから、考えて?」

そう言って、腰に腕が回る。

またキスされる………、と思ってぎゅっと目を瞑ると、仲西くんが静かに言った。


「嫌なら、突き飛ばしてよ…」

嫌………じゃない?

なんで、私………受け入れようとしてたの?

分からなくて、混乱する。


花火が打ち上がる中、

私は、仲西くんにまたキスされた。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ