初戦のあと
インターハイ初戦、
西高は、滝野高校と戦った。
ハルくんがシュートを決めても、
すぐに相手チームもシュートを決めてくる…。
第一クウォーター、
第二クウォーター、
共に同点で、ハーフタイムを迎えた。
ーーーー見てるだけの私は、本当に無力…。
祈るしかなくて、胃がキリキリ痛い。
なんとか、後半になると、緊張がとけたように、
皆の動きがいつもどおりになり、
第四クウォーターで二点差だけど相手方を引き離し、
なんとか初戦を勝ち取った。
その日の夜、
行われたミーティングでは皆、勝ったのにまるで負けたように元気がなかった。
「あんなでかいやつらばっかりじゃ、全然勝ち目ねぇよ…」
三年の先輩がボソッと弱気な発言をする。
「確かにうちのチームは身長が他のチームより低いな。」
嘉津先輩が言う。
「でも、動きでは負けてない。明日は去年準優勝のシード校だ。皆、気を引きしめて…」
「勝てる気がしねぇ…」
他の先輩もそんな事を言う。
「俺にもっとボールまわしてください」
ハルくんが皆に言う。
「それはダメだ。」
嘉津先輩がすぐに首をふる。
「お前がうちの得点源なのは、今日の試合で明らかだ。」
「でも…」
ハルくんが食って掛かる。
「バスケは個人プレーじゃないぞ、春。」
嘉津先輩が言う。
皆のモチベーションが下がっていて、
せっかく勝ったのに、明日は負けが決まっているかのようだ。
「あの…」
解散になったところで、
私が手を挙げると皆が一斉に私を見る。
「私…バスケ全然経験者じゃないので、こんな時、皆さんになんて言ったら良いのか分からないですけど…」
私は皆の視線に緊張して、赤面しながらも、
自分の気持ちを話す。
「西高のバスケは、他のチームより絶対に仲良しです。ーー-皆のパスも息づかいも本当に見ていてドキドキするほどピッタリで、かっこよくて。
別に、良いじゃないですか、相手との身長差とか…。
皆がいつも通り、イキイキと楽しそうにプレーしてる姿が…私は一番好きです…」
ーーーー皆を引き留めてまで、私は何を言ってるんだろ…。
「すみません…うまく言えないですけど…。
明日は今日より、楽しんでください…って言いたくて…」
「相田ちゃんにカッコイイとか言われたら、明日も頑張るしかないな…」
「そうだな、俺達は楽しんでやろーぜ」
「明日こそ、俺達の本気見せるか!!」
さっきまで弱気だった先輩たちが、笑って言った。
「先輩…」
嬉しくなって、笑顔を返す。
二年で唯一のレギュラーの寛人さんとハルくんも、
ホッとしたように笑い合う。
「さっきはありがと」
ホテルの部屋に戻る途中でハルくんが言った。
「私?」
ーーー少しは役に立てたのかな?
私は、照れ隠しにただ黙って首をふる。
「ハルくん…今日のプレーだけど…」
「ん?」
ハルくんが私の顔を見る。
「……無理してない?一人で…」
いつもならもっとパスしてたところも、
今日は一人でドリブルシュートにもっていっていた気がして、気になっていた。
「……今日は絶対勝ちたかったから。」
「え?」
ハルくんが、静かに言った。
私が聞き返すとハルくんがつらそうに言った。
「嘉津先輩の為に………絶対に初戦敗退なんて嫌だった。」
「ハルくん…」
ハルくんが私の宿泊部屋に入ると、
後ろ手でドアを閉めた。
「ハル………っっ」
ハルくんがすぐに唇を塞いだ。
「んっ……待って…ハルくっん…」
私がハルくんの胸を押し戻そうとしても、
力で敵うはずもなく、
そのままベッドに押し倒される。
「ハルくん…今日は…っん」
ーーーーダメだよ。明日は大事な試合なのに…。
ハルくんの手が私の服の中に滑り込む。
「ぁ…っ」
与えられる刺激に…、気付くと私は身体が反応し出して…、止められなくなった。
「ごめん…」
私を抱いたあと、
ハルくんは呟くと、私を抱き締めたままスヤスヤと眠ってしまった。
「ハルくん…」
眠りについたハルくんの前髪にそっと触れる。
ーーーーなんだか、つらそうな顔してる…。
ハルくん、プレッシャー感じてるのかな…。
心配でハルくんの寝顔を見つめていると、
ハルくんの体温が心地好くて…気付けばいつの間にか私も眠ってしまった。