スキ
『私がハルくんをフるなんて、絶対無いから。私がハルくんにフラれる時が終わりの時だよ…』
『じゃあ大丈夫だな…俺も茗子を離す気全く無いから。』
『……茗子、愛してる…』
これは…少し前の私とハルくんの会話。
私と距離を置きたいと言ってから、
ハルくんは私より先に部活へ行き、
私より先に家に帰る。
会話もなく、目も合わない。
まるでそこに私が居ないかのように、
部員の皆と楽しそうに笑う。
髪を切ったその日、
私は思いきってその足でハルくんの家に押し掛けた。
「あら?茗子ちゃん…髪が短いから一瞬だれかと思ったわ?」
ハルくんのお母さんが驚いたように言うと、
ハルくんの部屋に通してくれた。
「春!?茗子ちゃんよー」
おばさんの声に、暫くしてドアが開く。
「あ、私、ちょっと買い物行ってくるから…ごゆっくり」
何も知らないおばさんが、笑顔で言うと、
階段を降りていく。
「なに…?」
ハルくんが私を見ずに素っ気なく言う。
「ハルくん…まだ怒ってるよね…。私、本当に最低なことしたもん…」
「茗子は悪くないだろ…」
ハルくんが目をそらしたまま言う。
「でも…」
「ーーー聞いた。あのあと、西宮高の部長から。」
「え?」
「確めに行ったんだ…あれから」
ーーー聞いたの?
「あの部長が、勝手に妙な気を起こして、嫌がる茗子に無理矢理…首にキスマークつけたこと…」
「じゃあ…」
ーーー私のこと、許してもらえる?
「それでも…ダメなんだ…」
「え…」
言い掛けた私のことばを、苦しそうにハルくんが遮る。
「茗子を誰にも触れられないところに…隠してしまいたくなる」
「ハルくん…」
「嫉妬でどうしても、茗子に優しく触れることが出来ない…」
「優しくなくていいよ…」
ーーーーもしかしてハルくんが、距離を置きたいって言ったのは…
私のこと…考えて…?
「ハルくんに触れてもらえるなら、私、なんだって嬉しい。ハルくんの好きにして欲しいよ…」
ーーーー突き放されることが一番つらいんだよ…。
私がハルくんに抱きつくと、
そのままベッドに倒れ込む。
「ハルくん…」
「茗子、本当に良いの?」
真剣な眼差しで、ハルくんが私を見下ろす。
「大好きだよ」
ハルくんに、聞かれて私は笑顔でそう応えた。
ハルくんが私の唇を思いきり塞ぐと、
舌を絡ませ、吸いあったりかみ合ったりして……。
顔を交差させて何度も、
夢中でいつもと違う少し激しいキスをしたーーーー。