表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
124/283

苛立つ気持ちの矛先 ~春目線~

茗子の様子が朝からおかしいと思っていた俺は、

帰りのバスで、その理由に気づかされた。


「ハルくん、私、窓側が良いな」

そんなこと、今までのバス通学でも言われなかった。


「どうして?」

俺が尋ねると茗子が黙った。

「俺、窓側でも良い?」

なんとなく、そうすべきだと思った。


茗子は、分かった…と言って俺の隣、通路側に座る。


皆のイビキがあちこちから聞こえだす。


手を繋ごうとすると、するりと逃げられた。


茗子の顔を見ると、

泣きそうな顔をしてうつ向いていた。


すると、髪の間から首筋に赤い痕が付いていることに気づいた。


信じられない思いで、

茗子の髪をかきあげるようにして、触れる。


「茗子、これ…どうしたの?」

俺は苛立つ気持ちを必死に押し殺して聞いた。


ーーー頼むから、否定してくれ…。


祈るように、茗子の首筋をそっと撫でる。

「ーーーっ」

茗子が震えるように反応する。


頭の中が真っ白になった。

「誰にされた?」

茗子に感情的にならないように声を抑える。


「矢野部長…?」

嫌な予感がして、言いたくない名前を口にした。


ーーーー茗子が黙って頷く。


やっぱりか…。

あの野郎…絶対許せねぇ…。

この場にいたら間違いなく殴りかかっていた。


茗子はただの被害者だ…。

これは事故だ。


そんなこと、分かってるのに…。

どうしても、苛立ちを抑えられない。


なんでだよ…。


二人になって、家へ帰る道の途中で、

俺はどうしようもなく、口を開いた。


「どうして?」

「……ハルくん…」

「茗子は、俺が好きなんだよな?」

ーーー茗子に責めるようなことばを投げ掛ける。

「…うん」

「じゃあなんで…」

「ごめんなさい…抵抗しようとしても身動きとれなくて…」

ーーーーあいつ、やっぱり無理矢理…。


泣きながら言う茗子に、悲しくなる。

ーーー泣きたいのは俺も同じだ。


「茗子…」

泣きながら謝る茗子に、俺は立ち尽くしていた。



どうして、俺だけの茗子で居てくれないんだ…。

どうして、他のやつなんかに隙を見せるんだよ…。


「ちょっと…距離置きたい…」

俺は茗子に触れる前に言う。


「ハルくん…」

「ごめん。ちょっと…」

ーーーーこのままじゃ、本当に…茗子を監禁でもしてしまいそうだ。

優しくなんて…出来ない。

だから…。


俺はそれだけ言うと、

泣いてる茗子を置いて家に入る。



ーーーー誰にも渡したくない。触れさせたくない。

俺だけ見ていて欲しい。

我慢できない。


こんな気持ち…間違ってる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ