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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
123/283

罪の跡

「おはよう、茗子ちゃん」

ありすさんが、

朝練の時間に間に合うように私を起こしてくれた。


「………」

私は布団から顔を出せずにいる。


ーーーーどうしよう、絶対ひどい顔してる。


「茗子ちゃん?調子悪いの?」

「……はい」


私が言うと、ありすさんが、ため息をつく。

「昨日、夜どこ出掛けてたの?遊びに来たんだったら、さっさと帰ってくれる?」

「え?」

「澤野くんと逢ってたんじゃないの?バスケ部の合宿なんだから、恋愛に時間割いて、部員に迷惑かけるなんて、マネージャーとしてどうかと思うけど?」


ーーーーありすさん、誤解してる…。

私、別にハルくんと会ってたりしてないのに…。

部員のためにって、情報収集してただけで…。



昨日のことを思い出して、また気分が滅入る。


でも、確かに…。

私のせいで、部員に迷惑かけたくない…。


勇気を出して布団から顔を出す。


「茗子ちゃん…どうしたのその顔…目もと真っ赤よ…?」


「はい、ちょっと…」

「泣いたの?」

「……いえ」

無駄だと思ったけど、嘘をつく。


ありすさんが、呆れたように、私の首を指さす。

「首…赤くなってるけど…」

言われて、バッと首もとを手で隠す。



「私のポロシャツ貸してあげる…着替えたら?」

「ありがとうございます…」

ありすさんが、素っ気なくポロシャツを貸してくれた。

キスマークを隠すように着て、髪を右側で束ねる。




朝練が始まり、

私は洗濯物を抱えて体育館を出る。


「相田さん、昨日はごめん!」

待ち構えていたように、矢野部長が飛び出してきた。

「ーーーもう、いいです。忘れました。」


「俺、どうかしてた。その…シャンプーの香りを嗅いだら…止められなくてーーー」


バシッと手が勝手に矢野部長の顎を殴っていた。


ーーーー頬を殴ったつもりが…背が足りなかった…。


「矢野部長が、そんな人だったなんて、ショックでした。」



「ーーーどうかしたのか?」

嘉津先輩が私と矢野部長の雰囲気に気付いて、

体育館から出てきた。


「俺が昨日ーー」

矢野部長が泣きそうな顔で自白しようとする。


「いえ、何でもないです。ーー嘉津先輩、私洗濯してきます」

無理矢理遮って、私はその場から立ち去った。



「ありがとうございました」

西宮高校と練習試合を終えて、

夕方、バスに乗り、みんなで地元へ帰る。


皆、疲れて眠っていた。



右隣に座っていたハルくんが、私の髪に触れる。


「茗子、これ…どうしたの?」

ハルくんが苛立つ気持ちを押し殺して聞いているのが分かる。

ーーーー見つかった…。


ハルくんが、私の首筋をそっと撫でる。

「ーーーっ」

震える私に、ハルくんが静かに言う。


「誰にされた?」


ーーーー昨日のことを話して…許してもらえるのだろうか…。


「ハルくん…」

「矢野部長…?」

私が言う前に、ハルくんが私に尋ねる。


ーーーー私は黙って頷いた。


心臓が凍りそう…。

ハルくんに嫌われたら…私は…。




そこからハルくんは何も言わなかった。

ただ、黙って窓の外を眺めていた。


バスに揺られて、会話もなく過ごす時間が、

信じられないぐらい、辛かった。



二人になって、家へ帰る道の途中で、

ハルくんが、口を開いた。


「どうして?」

「……ハルくん…」

「茗子は、俺が好きなんだよな?」

「…うん」

「じゃあなんで…」

「ごめんなさい…抵抗しようとしても身動きとれなくて…」

ーーーーこんなの、言い訳だ。


思わず涙が溢れる。



ー-ーーハルくんの為になることをしたかっただけなのに。


私は…ハルくんを傷付けてばかりだ…。


「ごめんなさい…」



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