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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
122/283

罠?偶然?

「何ですか?為になる話って」

体育館に足を運ぶ。


夕御飯の後、シャワーを浴びて部屋に戻ると、

矢野部長からメールが来ていて、呼び出されたのだ。


夜の体育館は、なんだか気味が悪い…。



「矢野部長…?居ないんですか?」

体育館に、私の声が響く。


「あ、相田さん。こっち、こっち」

体育館の横の部室から、矢野部長が顔を覗かせた。




「こっちに居られるのも、明日で終わりだし、西宮(こっち)の分で仕入れた他校の情報、教えてあげようと思って」

「あ…ありがとうございます」


ーーーーでも、

それって別に二人でなくても良いのでは?


何となく、部室に二人きりっていう状況に、

警戒してしまう。


かなり間を開けて、隣に座る。


「こないだ花丸高が、うちと練習試合した時の映像。見てみる?」


ーーーー花丸高って、優勝候補って言われてるところ…。


「はい、見たいです」


ーーーーあ、でも…。

「だったら、うちの部員にも声かけてきて良いですか?私だけじゃ意味ないし…」


私が立ち上がろうとすると、

「いやいや、相田さんだから見せるんだよ。部員には見せられない…」

矢野部長が言う。


「そんな…」

それじゃあ、私しか情報を得れないってこと?


「私、じゃあメモ帳を取りに行ってきます」

「それじゃあ、遅くなっちゃうよ。俺のメモ帳貸してあげる。」

また、立ち上がろうとした私を矢野部長が引き留める。


はい、どうぞ…と、ペンとメモ帳を渡される。

「どうも…」

受け取りながらお礼を言う。


「この四番が…」

矢野部長が説明してくれるのを、必死で書き留める。

「……なるほど。」

ーーーーこの情報が、ハルくんの為になると良いな。


私はその時、それしか考えてなかった。





「あ、あれ?」

試合途中で、見ていた映像が途切れた。

「故障かな…」

矢野部長が焦ったように言う。


「あ!大丈夫です、もう、充分見させて貰いましたから!!」

私が笑顔で言って、

「これ、ありがとうございました」

と、ペンを返そうとすると、

矢野部長の手からペンが落ちた。


「あ、すみません…」

私が慌てて拾おうとしゃがむと、

矢野部長も、

「あ、悪ぃ…」

と、同時にペンを拾おうとして、手が触れた。


「うわ…」

矢野部長が驚いた声をして後ずさる。

「あの…これ…」

私がペンを拾って、今度こそ手渡す。


「あ、相田さん…」

突然矢野部長が、

私がペンを手渡したその手を引いて、

抱きすくめられた。


ーーーーえ、何?



「ちょっと…矢野部長…ぅっ」


抵抗しようとしたその時、首筋に軽い痛みが走る。



「い…ぁ…んっ」

出したくもない声が漏れる。


ーーーーひどい。ひどい。何でこんなこと…。



必死で抵抗しても、全く身動きがとれない。


「うぅ…」

涙が溢れる。

………ハルくん…ハルくん…助けて、ハルくん。


「あ、俺は…」

突然矢野部長の腕が緩まり、

解放されると私は慌てて部室を飛び出した。



ーーーーハルくん…ハルくん…ハルくん。



部屋に戻ると、ありすさんはすでに眠っていた。


私は声を押し殺して、ベッドに潜り込んで、

泣いた。


ーーーーこんな私、絶対ハルくんに嫌われる…。


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