茗子の嫉妬
合宿三日目。
昨日から?なんだかハルくんの様子がおかしい。
それにーーー
突き指をしたとき、自分一人で処置して、
私はマネージャーなのに、
彼女なのに…。
ーーーー頼ってもらえなかった。
テーピングもまだ上手に出来ないし…。
頼りないのは分かる。
でも、
ハルくんに頼って欲しかった…。
「あら、澤野くん、その指じゃうまくボールが触れないんじゃない?」
ありすさんが、ハルくんのテーピングに気づいて、
言うと、
「いや、大丈夫。」
ハルくんがぎこちなく笑顔で断る。
「大丈夫なわけないでしょ」
ありすさんが、突然怒り出す。
「大事なインターハイの前に、そんなつまらないケガで部員に迷惑かけるべきじゃないわ。テーピングぐらい、ちゃんとすべき!」
いいからそこ、座って!とハルくんを無理矢理座らせて、慣れた手つきでテーピングを巻き直す。
ーーーーーありすさんは、
西宮高のマネージャーなのに。
私のハルくんに、触らないで…。
見ていられなくて、
私は皆の洗濯物を持って、体育館を出た。
ーーーーー私、ハルくんの為に何ができるんだろう。
悔やしくて、涙が出る…。
「相田さん?どうかしたのか?」
顧問の先生のところから戻ってきた矢野部長が、
体育館横で洗濯かごを持ったまま立ち尽くしていた
私に気付いて声をかけてきた。
「いえ、何でもないです」
慌てて涙を拭うと、笑顔で応える。
「洗濯機、借りますね」
洗濯かごを持ち上げて、歩いていこうとすると、
「相田さん、俺の彼女になってくれ」
突然腕をつかまれたと思ったら、
思い詰めたように、矢野部長が告げた。
「……え?」
驚いたのと、咄嗟に腕をつかまれて、
私は洗濯かごを落とした。
「……一目惚れしたんだ。初めて会ったとき。」
「………すみません」
私がうつ向いたまま、謝ると、
「だよな、分かってた。ごめんな、困らせて。」
切ない声言い、矢野部長が笑う。
「いえ…」
私がまだ困惑していると、
「じゃあせめて、連絡先の交換ぐらいは…」
矢野部長が言う。
「それは…」
ーーーーそれは、どうなんだろう。
「インターハイで、また会うんだし、色々と情報交換できるし…。」
「…はい」
矢野部長に押しきられて、連絡先を交換する。
それだけでも、
矢野部長は嬉しそうに体育館へ入っていった。
ーーーーー私は、何やってるんだろう…。