表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
115/283

顔合わせ会食

「改めまして、西宮高校の二年、田中ありすです。田中は多いんで、ありすって呼んでください」

料理を注文して、待っている間に、

ありすさんが、自己紹介をしてくれた。


「ーーーこっちは、バスケ部の部長、矢野太郎です」

ありすさんが、隣に座って私をじっと見たまま動かない矢野さんの代わりに言う。


ーーーめっちゃ見られてる…。



「私…西高一年、相田茗子です。マネージャーは初めてで…いろいろ教えてください、よろしくお願いします」


「嘉津 樹、三年だ。俺はマネージャーもやってるが一応部長だ、よろしくな」

嘉津先輩が自己紹介をして、一息つくと、

「ところで矢野部長。さっきから、うちの相田に何か言いたそうですけど?」

矢野さんに言う。


「え、いや…別に。」

動揺しながらも、矢野さんが返事をする。


「ところで、合宿の詳細についてですが…」

ありすさんと嘉津先輩が話を始める。

私は慌てて、メモをとる。


視線を感じてチラッと顔をあげると、

矢野さんがこっちを見ていて、また目が合う。


でも、すぐに目をそらす。


………変な人だな…。

なんとなく、不信感を抱いてしまった。






「じゃあ、連絡先交換してもいいかな?…えっと、茗子ちゃん」

帰り際に、ありすさんに言われる。

「あ、はい」

お互いに連絡先を交換する。


「では、夏にお待ちしてます」

頭を下げて、ありすさんと矢野さんが帰っていった。



嘉津先輩が、夜遅いからと家まで送ってくれることになり、歩いて家まで向かう。


「なんか…矢野部長…様子おかしくなかったですか?」

「そうだな。いつもはもっと騒がしい奴なのに、腹の調子でも悪かったのかもな」

「私…めっちゃ見られてましたけど…」

「そうだな…あれは…」

「何ですか?」

「いや、何でもない。お前は心配すんな。それより、合宿の日程とか、みんなに連絡できるようまとめといてくれ」

「はい。来週には、配りますね」

私が言うと、

「相田、」

嘉津先輩がふと足を止め、私の顔を見て言った。

「お前がマネージャーで良かった…俺の夢も叶った」

「インターハイ…ですか?」

「うん」


「私…何もしてないですよ。皆の実力です」

「皆が実力を引き出せるのは…マネージャーがお前だからだ」


ーーーそんな風に言われると、すごく恥ずかしい。


「頼むな…来年も…」

「先輩…」


ーーー-そっか、嘉津先輩は、

インターハイが終わってしまったら…引退なんだ…。


急に寂しくなって、私は黙って歩き出す。

ーーー絶対後悔したくない。

嘉津先輩の最後の試合なんだから。



涼しい夜風に当たりながら、

私は、決意を新たにした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ