見守る~航目線~
「あ…」
茗子ちゃんの家から出たところで、
春先輩と出くわす。
「仲西…なんでお前が茗子の家から出てくるんだ…」
春先輩が睨み付けながら低いトーンで問いかけてくる。
「………風邪引いて、ふらついてたから部屋まで送っただけだろ…」
目を見ずに答える。
-ーーーー本当は嘘だ。
ちゃっかり、眠りについた茗子ちゃんの額にキスしたくせに。
「そっか、ありがとな」
俺の言葉を信じたのか、春先輩がお礼を言うと、
そのまま茗子ちゃんの家に入っていった…。
ーーーーなんだよ…当然みたいに入ってくなよ…。
この間の茗子ちゃんの誕生日を思い出す。
ーーー部活の帰りに、学校の正門に車が停まっていた。
その車に、春先輩と茗子ちゃんが仲良く乗り込んで…。
あの二人の間には、入ることなんて敵わない。
思い知らされた。
茗子ちゃんを追えば追うほど、
彼女を苦しめていたこともわかっていなかった俺は…、避けられたとき、もしかしたら、“男”として見てもらえてるのかと期待して…。
『好きだよ、友達として』
その言葉の通りだったのに、もしかしたら、なんて期待して…。
本当は茗子ちゃんのこと、何も分かってなかった。
自分のこと、ばっかりで…。
『茗子は諦めろって言ったろ』
甚に聞かされるまで、その言葉の意味も考えずに。
ーーーーバカだな、ほんと。
でも…好きな人が同じクラスにいて、
仲良くしてたら…諦められるわけないだろ…。
だから、決めた。
俺は、勝手に好きでいる。
今までどおり、友達だと装って、側で見守ろう。
ーーー気持ちを彼女には、気付かれないようにして。