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茗子と咲(さく) ~咲目線~
茗子が春のことを好きなんて、
誰が見ても分かるしーーー。
俺は、小さい頃から茗子と遊んで育った。
一つ上のお姉ちゃんが大好きだった。
でも、茗子姉ちゃんは、いつも、俺じゃなくて兄ちゃんを見てたーーー。
小学校に入る前から、もう気付いてた、
この恋は絶対実らない。
小学校に入ると、
俺は茗子のことを呼び捨てするようになった。
「めいこ姉ちゃん」から「茗子」と呼ぶことで、
少しでも男として見てもらえると思ったからだ。
なんとも安易な考えだ。
中学は私立の進学校に通うことにした。
もう、限界だった、見たくなかったからだ……。
春と茗子の間には入り込めない。
茗子の目には今も春しか映ってないという現実をーー。
家が隣だから、茗子にはたまに会う。
「咲ちゃん」
会うと無邪気な笑顔で必ずあいさつしてくれる。
それだけで、幸せだった。
春が、あの女を彼女とか、言ってくるまでは………。
一年の差が、どれほど切ないものか……、
茗子の気持ちは痛いほど分かるから、
俺は春が許せなかった。
なんで、茗子のことを、
幸せにしてあげないんだ、春にしか、
出来ないのにーーー。