残念なイケメン~航目線~
「お前今日…茗子ちゃんに何言った?」
部室で着替えながら、俺は甚を問いつめた。
「何って…茗子が自分の気持ち分からなくなってたから、助けただけだけど?」
「助けた?どうやって?」
俺の質問攻めに、甚がため息をつく。
「ーー航、俺言ったはずだろ、茗子は諦めろって」
「無理」
俺はロッカーを思いきり閉めて、即答する。
「茗子が苦しむだけだ。あいつはお前のこと友達で居たいから必死なんだぞ…」
甚が呆れたように俺から目をそらす。
「え…なんだよそれ」
ーーーー友達でいたいから、必死?
「俺は異性とか関係なく友達だけど、お前は違う。中学からの男友達なんて、お前くらいしか居ないんだよ…。ちゃんと異性として認識した上で友達でいたいって、あいつが初めて思えた相手なんだ。だから失いたくなかった」
甚の言葉に、あの時のーーーー
『好きだよ、友達として』
茗子ちゃんが即答してくれた言葉がよみがえる。
「それをお前は残念なことにポジティブに考えて、がっつきすぎ…春先輩まで巻き込んで…」
「そんな…」
ガンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
「相変わらず、残念なイケメンだな…」
よろよろと部室を出ようとした俺に、
甚がとどめの一言を浴びせる。
「甚、一発殴らせろ…」
「やだよ、ばか」
振り返って殴ろうとすると、
甚にすぐに腕を捕まれてもみ合いになった。
ーーーー俺の…勘違いだったのか。
それなのに、俺は…、春先輩にすげぇ強気な発言しちまった…。
恥ずかしすぎる…。
でも…茗子ちゃんが俺と友達でいたいと、
そんなに思ってくれてたなんて…。
ーーーそれだけで、すげぇ嬉しい。