誕生日
「明日の誕生日、一緒にお祝いしましょ」
お母さんに言われて、私は返事に困る。
「茗子と春くん、明日誕生日なんだし。付き合ってるなら一緒にお祝いしようって春くんのお母さんが言ってくれたのよ。有名なホテルの最上階で、ディナーよ!」
嬉しそうに、お母さんが言う。
「ありがとう…」
「何よ、喜ばないの?………まさか、ケンカ中?」
「そんなんじゃないよ」
私は言いながら部屋にこもる。
「……タイミング悪いよ」
独り言が部屋に零れる。
今まで忘れたことなんて無かったのに………
私の誕生日と、ハルくんの誕生日。
本当に最低だ…。
翌日、部活から帰ってくると、すぐに支度をして、
出掛ける。
「誕生日おめでとう」
ハルくんの両親と私の両親と私とハルくんの六人で、ホテルの最上階でディナーをする。
咲ちゃんは絶対嫌だと来なかったらしい。
「でも、二人が付き合ってるなんてな…」
お父さんがハルくんを見て嫌味のように言う。
「あら、知らない子よりは良いでしょ?春くんならお母さん、大歓迎だし」
お母さんはお父さんを睨んで言うと、笑顔でハルくんに言う。
「私も、茗子ちゃんが春と付き合ってくれるなんて…こんな嬉しいことないわ」
春くんのお母さんも私に笑顔で言う。
「………」
私も、愛想笑いで応える。
ーーーー気まずい…。
両親とも、悪気はなくて私たちを認めてくれているのに…。
今はその気持ちが重苦しく感じてしまう。
ハルくんは、私の気持ちに気付いていたのか、
笑顔でいつも通りに両親と話してくれていた。
「茗子、誕生日プレゼント…」
「ハルくん…」
帰り際、ハルくんに小さな箱をもらう。
ーーー貰っていいの?
「貰って?」
そう言って、私の手にプレゼントを渡すと家に入っていった。
部屋に戻って、プレゼントを開ける。
………指輪だ…。
ーーーー私は何も用意してなかったのに…。
右手の薬指にはめてみる。
ーーーぴったり…。
どうして私はハルくんにあんなひどいこと言ってしまったんだろう…。
あんなひどいことを言ったのに、
ハルくんはどうして変わらず好きでいてくれるの?
目が覚めたように、
頭の中がクリアになっていく。
航くんのこと、
友達として仲良くしたくて…。
まっすぐに、好きだと言われて、
ハルくんに罪悪感を感じて、
自分は気持ちが揺らいだと思っていたけど…。
やっぱり私は…。
ハルくん…ごめんなさい…。