航くんとハルくん
「おはよう、茗子ちゃん」
朝から会いたくない人に会う。
「おはよ…」
ハルくんと並んでバスを待っていると、
航くんがやって来たのだ。
ーーーいつもはもっと早い時間なのに…。
「春先輩も、おはようございます」
「おはよう、仲西くん」
航くんが挨拶すると、ハルくんも応える。
ーーーー絶対わざとだ…私を困らせて楽しいの?
「茗子ちゃん、昨日はありがとう」
「……何が?」
「勉強会だよ、教えてくれて」
「航くんには何も教えてないけど?」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
ハルくんの目の前で、航くんと話したくなくて冷たい言い方で突き放す。
「春先輩に話したの?昨日泣いてたこと」
「……!?」
航くんが私の目の下に優しく触れる。
「俺が好きでいると…茗子ちゃん苦しいんだよね?」
「お前…茗子に触るな…」
私の代わりに、さっきまで黙っていたハルくんが手を振り払う。
「航くん…分かってるならほっといて」
私も航くんに睨み付けて言う。
「でも、仲良くしたい…だろ?」
「………」
私は、何も言えなかった。
………その通りだったから。
「春先輩……茗子ちゃんがかわいそう。離してやれよ…」
航くんが、ハルくんに向かって言う。
「茗子ちゃんがはっきり出来ないのは、あんたが縛り付けて離さないからだろ…」
「違う、そんなんじゃない」
私がハルくんを庇う。
「航くんは、関係ない。ハルくんと私の間に、これ以上入ってこないで…」
………ハルくんが離さないんじゃない。
私がどっちにも行けないだけの話。
ハルくんも好きで、
航くんとも仲良くしたい。
ーーーハルくんは、何も悪くない。
今はまだ…地区大会が終わるまでは…。
私はハルくんの側にいる。
そう、決めたんだ…。