帰り道
「茗子ちゃん、途中まで一緒だろ?」
四時過ぎには彩の家を出て、四人で帰る。
バス停から、それぞれの方角のバスに乗るので、
愛梨と仁科くんと別れると、航くんが言った。
「あ、私は…ちょっと寄りたいところあるから。帰ってて」
咄嗟に嘘が口から出た。
「じゃ、俺も付き合うよ」
「いや、迷惑だから…」
「付き合うって」
航くんも意地になる。
「何なの…本当に…迷惑だって言ってるじゃん」
私は苛立って声を荒げる。
「迷惑って何が?俺が勝手に茗子ちゃん、好きなこと?」
「………そうだよ」
航くんのまっすぐな言葉に、返事を返しづらい。
「ヒトの片想いまで否定すんな」
航くんが怒ったように言う。
「………」
「しょーがないだろ…好きで好きで仕方ないんだから」
ー-ーーやめて、聞きたくない…!!
「茗子ちゃんだって、そうだったんだろ?春先輩のこと…」
「………」
「好きで好きで、忘れられなくて。かすみと付き合ってたの知ったときも…」
言えない…
一度はハルくんを諦めようとしていたこと…。
花火大会でキスされた時、航くんのこと、好きになりかけてたこと…。
二人が別れていたことを知って、すぐにハルくんに想いが戻ったこと。
私は航くんと違う。
一途なんかじゃない。
ーーーー今だって……航くんにドキドキしてる自分がいる…。
最低だ…私。
いつからこんな気持ちを抱いていたんだろう…。
私は走って、航くんの前から居なくなろうとした。
泣いてるところ、見られたくない。
「何やってんの?」
航くんが追いかけてきて、すぐに腕を捕まれる。
「足、怪我してるのに無茶すんな…」
言い掛けて言葉を切った。
ーーーー泣いてるところ…見られた…。
止めたくても…涙は止まらなかった。
「茗子ちゃん、やっぱり…俺のこと好きでしょ?」
「好きじゃない」
私は、泣きながら答える。
「じゃあどうして泣いてるの?」
「………」
「俺のせいで泣いてるんだろ…?」
「………」
私は首を振る。
ーーー航くんのせいじゃない。
最低な自分が…許せないの…。