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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
102/283

勉強会の前に

自分の気持ちに向き合えず、

私はクラスでは航くんを避け、

ハルくんとは変わらずに仲良く過ごした。


その週末、土曜日の午前中に部活の朝練が終わる。

明日は大事な地区大会。

みんな、真剣に練習した。


「明日は絶対に勝つ!」

嘉津先輩の言葉で、皆が練習を終えて解散する。


「帰ろう、茗子」

ハルくんが着替えて、言う。

「うん、ちょっと待ってね」

片付けを終えて、私も帰る支度をする。



「これから、友達と勉強会だよな?頑張って…って茗子は教える側か…」

帰りながらハルくんが言う。

ハルくんは悪気なく話してるだけなのに、

なんだか胸にチクッと刺さる。


「うん」

私が笑顔で応える。


「じゃあ…勉強会終わったら、会える?」

ハルくんが言う。

「……うん」

私がまた笑顔で応える。

ーーー上手く笑えてる、よね?


「じゃあ終わったら連絡するね…」

私が言うと、ハルくんが道端で突然キスしようと顔を近づける。

「…ごめんなさい…」

私は初めて、顔を背けてしまった。


「あ、ごめん…俺が悪い。恥ずかしいよな」

照れたようにハルくんが言う。


反射的に顔を背けてしまった自分にショックをうけた。



ーーーー『他に好きな人がいるのに、そのまま付き合ってるのは…』

菜奈の言葉が頭をよぎる。


『もっと悲しい…』






待ち合わせの、彩の家の近くのバス停で、

皆を待っていると、航くんが来るのが見えた。


「あ、茗子ちゃん早いね」

「……うん」

「皆、まだなんだ?」

「そうだね」

航くんの顔を見ずに答える。


「茗子ちゃん、やっぱり避けてるよね?」

突然、航くんの顔が目の前に来て、驚いていると航くんが言う。


「なんのつもり?」

怒ったように航くんが続ける。

「友達にはなれない、って言ったのは俺だけど…別に俺が勝手に諦めないでいるだけなんだから、今までみたいに仲良くしてよ」


「だから…」

私が泣きそうになるのを堪えながら言う。

「そんなこと言われたら…仲良くしたくたって出来ないじゃん」


「え?」

航くんが驚いて私を見つめる。


「茗子ちゃん、俺のこと、好きなの?」

「好きだよ、友達として」


「それって残酷な答えだな」

航くんがつらそうに言う。

「航くんが言わせたんでしょ…」

私は顔を見ずに言う。



「あの…」

私と航くんの間に、いつの間にか仁科くんが立っていた。

「お邪魔して…ごめんなさい…」


「「………」」

私と航くんはお互い黙ったまま、愛梨と彩を待った。







「散らかってるけど、どうぞ入ってー」

彩のお母さんに挨拶をして、家に入る。

「これ、シュークリームです」

私が持ってきた紙袋のまま渡す。

「あら、気を遣ってくれてありがとう」

彩にそっくりな笑顔でお母さんが言う。




「じゃ、始めますか」

部屋に入ると、彩が数学の問題集を開く。

「茗子、この問題なんだけど…」

私が彩の問題集を覗き込む。


「あ、これはね、ーーー」

話しながら、チラッと航くんを見てしまう。

航くんは愛梨と英語を始めていた。



ーーーー『好きだよ、友達として』

友達…そうだよ、友達だよ。

航くんは私にとって、大切な友達。


愛梨と楽しそうに会話する航くんの姿に、

少し寂しさを感じていた。


ーーーー友達以上の感情なんて、ないはずなんだ。






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