春と茗子
「おはよう、茗子ちゃん」
「!!!」
―ー―またか。
家を出ると、即行好きな人に会って、
あいさつされるとか、もう…。
心臓がドキドキうるさくて、苦しい。
私は、
紺のブレザーを身に纏う彼が見慣れなくて、
そんな彼が眩しくて…うつ向く。
―――――彼、ハルくんは私の幼なじみ。
私が生まれてからずっとお互い隣の家に住んでいる。
小さいときは意識せずに一緒に遊んでいたのに。
いつから?
どうして?
四月に入って、私は余計に彼とまともに話せなくなった…。
重症なのは、まだ目も見れないこと。
―――春休み、会ってなかったからか、
ハルくん免疫がまだ無いんだよー!
心の中で叫ぶ。
「めいこちゃん?」
私が返事をしないと、
ハルくんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「ぉはょ…」
慌ててそれだけ言うと足早に彼の前を通りすぎた。
セーラー服のスカートが風でなびいた。
彼は澤野 春。高校一年。
私は相田 茗子、中学三年。
今年から学校も別々。
去年までは同じ学校だからと朝会えば一緒に歩いていた。
だけど…
今年からは方角も違うー―ー。
桜の花びらが落ちて、風に舞い、落ちていく。
―――ハルくん…また離ればなれになったね。