五ノ九.解呪
ファレスの後方に居たウォーレンとセイの影から、いるはずのないヴァーラが顔を出した。
「どうしてここに?」
「ん? 皆が揃う良い機会だし、久々に弟とも会っておこうかと思ってね」
「弟……って?」
「ああ、我のことだよ、里緒。久しぶりだね、姉上。四〇年ぶりかな?」
「え? えええええ!?」
横からヴァーラを姉と呼ぶのはウトゥヌ神だった。
驚くわたし。ウトゥヌ神の姿や声が聞けない王子たちは疑問いっぱいの顔をしている。
「あたしはね、人間になるずっと前はウトゥヌの姉だったんだ。だから弟の神子になったせいで死んだ妹のリオナには本当に申し訳が立たなくてね。どうしても死の呪いから解放してあげたかった。男が苦手だった里緒には荒療治だったけれど、こうして無事に呪いに打ち勝つ精神を身につけてくれた。万が一まだ呪いが有効だったとしても、生死専門の弟が傍にいれば大丈夫だ。ウトゥヌ、里緒から目を離すんじゃないよ」
発破を掛けるようにウトゥヌの肩を叩くヴァーラ。Sランクで元神様の彼女は神と直接交流可能らしい。
「姉上に言われるまでもなく、里緒を手放す気はないよ。たとえ彼女が離れる事を望んでも、何かあればすぐに駆けつけると誓おう」
(ぬあぁぁ)
まるでラブソングの歌詞だ。聞いてる方は恥ずかしくて仕方ない。
「よし、その言葉、忘れるんじゃないよ。さて、後は王子たちに掛けた呪いだね。今解いてあげるよ」
呆然とするわたしたちの前で、パチンと指を鳴らす。
肩を回しながら「肩の重みが取れた」と言うウォーレン。
「呪いは解けたの? 本当に?」
「うん、魔力が消えたよ。軽くなった」
セイの言葉にファレスも頷くのを見て、肩の荷が降りた気がした。
「良かった―――!」
この時のためにアルディアへやってきたんだ。
わたしは無事に役目を果たすことができたらしい!
「王子たちには苦労を掛けたね。協力ありがとう。もうアンタ達は自由だよ」
心底労う口調のヴァーラに、しかしウォーレンは眉と口角を上げながらも噛みつくように低い声を出した。
「自由だ、と言われてもな。結婚の話を持ち出し、散々俺たちを弄んだ責任をどう取ってもらおうか?」
(ひぃぃ、ブラック! 笑いながら怒ってる!!)
「そうだよー! 里緒は神殿に残るんでしょ? それって、もう会えなくなるってことじゃないの? 僕、絶対イヤだから」
「あ、それは大丈夫。見習いの間は神殿に籠もる必要はないんだって。だから今まで通り、あっちの世界と行来きするよ。だから家に居る間は、またいつでも会えるよ」
ウォーレンとセイは少し考えた後、「それならば」と折れてくれたが、ファレスだけは納得してくれなかった。




