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五ノ四.対の存在

 おそらく、わたしは海中で死にかけていた。

 だが自分で海に飛び込んだのだから自業自得。


 あの時は連れ去られた先で「奴隷にされるかも」とか、「人体実験に使われるかも」とか、酷い未来しか想像できなかったが―――事情を知った今は、自分の考えの甘さと浅はかさが恨めしいばかりだ。無駄な抵抗などせず、おとなしく連れ去られておけば良かったんだ―――。



「今回のことで犯人の二名には厳しく処罰を下し、今後同じ事が二度と起きぬよう指導を徹底します。リオナ様には本当に申し訳ありませんでした……どう償えば良いのか―――」

 ミアーノは心底申し訳なさそうに頭を垂れる。

 神官長という立場から彼女が責任を感じているのは分かる。けれど親身に接してくれるミアーノを責める気にはなれない。

 わたしを攫った二人のやり方は間違っていたものの、女神とミアーノたちのためを思って暴走してしまったのだろう……。



「ううん、わたしも悪かったんだし、元の場所に帰してもらえればそれで良いよ。だけど、お願いがあるの。リオナに関することを教えて欲しい。どんな性格だったとか、どんな仕事ぶりだったのか、とか……」

 聞くと、ミアーノは急に前のめりになって顔を輝かせた。


「それでしたら喜んで! リオナ様は、それはもう身も心も美しい方でした! 神官たちからはもちろん、民からも大層慕われており、下働きの私にも気安く声を掛けて下さって、ウトゥヌ神の事も聞かせて下さいました。雲の上の方の話ですから、もう私は嬉しくて嬉しくて―――」

「え? 同じ神殿にいたのに、ミアーノが神と会うことは少なかったの?」

 何かおかしかったのか、長い睫毛を数回瞬かせてミアーノが固まってしまった。


「あ、申し訳ありません。その……何の障害もなく神と交流が可能なのは、イサを持つ方のみなのです」

「イサがないと何か支障があるの?」

 神だけに神々しすぎて、眩しくて直視出来ないとか?

「神と交流するためには、相当量の魔力を用いて複雑な手順を踏む必要がある上、神にご了承をいただかなくてはいけません。ですからわたしはウトゥヌ神とお会いしたことはありませんし、神官である現在もヴィエナ神との接触は容易にはかなわないのです」

「そう、なんだ……?」

 じゃあわたし達もウトゥヌの降誕祭に着いたら、その面倒な手順とやらが必要になるのか。

 しかも問題を起こした元妻(仮)との面会を神が了承するのか、かなり不安……。


「あー、じゃあリオナはウトゥヌ神の事をどんな風に言ってたの?」

「それが! もう! ステキなんです!」

 はしゃいだ様子で頬に手を添え顔を赤らめるミアーノ。神官長とか言う肩書きがなければ普通の女の子のようだ。

「神子は神の伴侶とされていますが、それは対となる存在という意味での比喩なのです。ですが、リオナ様のお話ではウトゥヌ神とは本当に恋人同士のように仲睦まじいご様子でした。神の事をお話されるリオナ様はとてもお幸せそうで、その様子を見ているこちらが恥ずかしくなるくらいで……」

「の、のろけ話を聞かされてたの!? うあ、聞いたわたしが恥ずかしい……なんか、本当ごめん」

 自分自身がしたことではないが、穴があったら入って埋もれてしまいたい。代わりに目の前のテーブルにがつんと自分の額を打ち付けてやった。


「止めなさい、傷がつくだろう?」

 額をグリグリ押しつけ悶絶していると、突然第三者の声がした。

 わたしのちょうど頭上あたり。低音でありながら透き通るような男性の声。

「そのように恥じることも謝ることもないのだよ。皆から祝福される素晴らしい関係ということなのだからね」

「へっ―――?」

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