五ノ三.ミアーノ
重たい頭で目が覚めた。
ぼうっと視線だけを動かし、辺りを見回す。
簡素ながら品の良い調度品が揃えられた部屋だ。
ベッドの上で、身体が揺れている―――揺れている?
「ああ、目が覚めたのですね! 良かった!」
見知らぬ金髪碧眼の美少女がわたしを覗きこみ、胸を手に当てている。
「どうぞそのまま休んでいて下さいませ。低体温症になっておりましたから、温かくされませんと。水分は摂れそうですか?」
「―――うん」
「では薬湯をお持ちしますね」
「……ありがとう」
色々疑問はあるけど、とにかく生きているようだ。
(良かった……)
微笑む少女が背を向け立ち去るのを見送るが、薬湯を受け取る事なく再び眠りに落ちてしまった。
次に目が覚めた時、身体はだいぶ楽になっていた。
「目が覚めたのですね! 良かった!」
金髪碧眼の美少女がわたしを覗きこみ、胸を手に当てている。前回と全く同じだ。
「うん、おかげさまで。あなたが助けてくれたの?」
「助けるという程のことは何も。ずぶ濡れで甲板に倒れていらっしゃったので、こちらにお運びしただけです」
(甲板に、倒れてた―――?)
海の中であまりの寒さに震えるしか出来なくなって―――それからの記憶が曖昧だ。どうしたんだっけ?
「その時、配下の者に挙動不審な男がおりましたので事情聴取しましたところ、リオナ様をヴィエナ神の神子候補として強引に連れ去ったのだと自供しました。これはすべて私の監督不届きが原因です。せっかくこうして再会することが叶いましたのに、恩を仇で返すような事になってしまい、大変、申し訳ありませんでした―――」
頭を垂らし、はらはらと涙をこぼす美少女の謝罪にわたしの脳味噌は沸騰寸前。
「え? ええ?? どういうこと? というか、なんでわたしの名前知ってるの? 再会って? あなた一体、だれ?」
「えっ?」
聞いているのはわたしなのに、彼女の方が驚きと戸惑いの混じった顔になる。が、一拍置いてから少し気落ちしたように口を開いた。
「―――そうですか、リオナ様は前世の記憶を失っておいでなのですね。申し訳ありませんでした、順を追って説明いたします。わたしはミアーノ。かつて、ウトゥヌ神殿でリオナ様のお側に仕えさせていただいた者です。今は海の女神ヴィエナの神官長を務めております」
*****
ミアーノから聞いた話をまとめる。
彼女が仕えるヴィエナ神殿ではこの数百年間、神子が不在となっているそうだ。
そのため人々は十分な加護を受けることが出来ない状態にあり、海での事故や津波などによる被害が年々増えている。
それでも神官たちの力により、ある程度は保っているがミアーノ以外の者はあまり素質が高くなく、彼女一人に掛かる負担が大きい。
そこで世界各地から神子や神官としての素質がある者を探し出し、スカウトするような形を取ってきる。
わたしもその候補として同意の元に船に乗せられヴィエナ神殿に向かうはずだったのだが、今回は神官見習いとしても新米だった男二人が誘拐という勝手な行動をとってしまった。
結果、逃亡して海に飛び込んだはずのわたしが、何故か甲板に戻って気を失い倒れていたため、事情を知らない他の乗組員により騒ぎが起きた。
犯人の二人は自分たちが人攫いをしたという罪悪感があったのか、慌てふためいていた所を咎められ御用となった。
そして倒れているわたしのオーラを見て、リオナの生まれ変わりだと察したミアーノはすぐに手当を施し、今に至る―――というわけだ。




