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四ノ五.旅路四

 敷物の上にぺたんと座り伸ばした両足をグーでトントンと叩いていると、ファレスが手のひらサイズの可愛らしい陶器のような壷を差し出した。

「里緒、これを使って下さい」

 彼が蓋を捻ると爽やかな香りが広がった。黄色っぽいクリームのようなものが詰まっている。

「なにそれ?」

「鎮痛剤ですよ。乗馬初心者に筋肉痛はつきものですからね。特に里緒さんには無理をさせてしまっていますから、酷くなる前に処置した方が良いです」

(あ~、やっぱファレスの気遣いは尊敬しちゃうわ……)


 実は、運動不足というよりも運動皆無のせいで筋肉が全く無いから筋肉痛になったのだろうと、恥ずかしい気持ちになっていたのだ。

 けれど「それが当たり前」と言われれば「わたしだけじゃないのね!」と、ほっとする。

 それに、華麗な馬術を見せる三人の王子は筋肉痛とは無縁のはず―――とすれば、わたしのために薬を用意してくれていたのだろう。


 じーんと小さな感動にひたっていると「では失礼します」とわたしの足首に伸びた彼の手が、一気にズボンの裾を膝小僧までめくり上げた。

「ちょ、なにすっ……」

「薬を塗る前に、マッサージしておきましょう」

 ニコリニコリと、一見なんの邪気も無さげに見える―――が!!!

「ぬああああああッ」

 日光に当たらないために無駄に白い丸大根は、自分でさえ見るに耐えないシロモノ。だというのい、そこをサワサワと上下する長い指は一体!!!


「ぐぬっ!」

 逃げようとしたが動けない。片手で肩をガシリと固定されていた。

「ダメですよ? きちんとマッサージしないと、明日は馬に跨がることも出来ずに一日中私に横抱きにされることになりますからね。あ、勿論わたしはその方が嬉しいのですけどね。ふふ」

「な、ななな何言っ、、、にぁあッ!」

 ぎあああ、な、なんかヤバい!!

 皮膚の表面を滑るように、指先だけで優しく触れるか触れないかの微妙なタッチで撫でられる。ムズムズが止まらない!

(これ本当にマッサージ!?)

「ああ、なんて滑らかで柔らかなんでしょう……。幸福すぎて鼻血が出そうです」

「へ、ヘンタイーー! あんたやっぱりタダのお肉マニアだーー!」


 グーで顔を殴ってやりたかったけど、綺麗すぎる顔に申し訳なくて無理だった。イケメンは得だな。




 それから間もなく完成した天幕は一つだけだった。大人四~五人が雑魚寝してぎゅうぎゅうだろうというサイズ。

「もしかしてだけど~、皆で仲良く一緒にココに寝るの?」

 おそるおそる尋ねると、三人がさも当然と頷いた。呆然。


 これは寝返りを打てば触れてしまう狭さだ。

 積み荷の関係もあるだろうし、贅沢言える立場や状況ではないと分かってるけど……一応これでも年頃の女の子なので躊躇いと恥じらいが……。

「……あー、星が綺麗だなー。今日はお馬さんと一緒に夜空を見上げて寝よっかなー」

「止めておけ。夜は害虫や獰猛な獣の活動が活発になる」

「そうそう。でも天幕の中は魔力で結界が張ってあるから安心して」

―――万事休す!


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