三ノ五.伝わらない想い
「まぁそういうワケで、時期とタイミングと相性を見て三人の王子に責任をとってもらおうと思ったのさ。アンタたちはみんな癖はあるけど根っこは良い男だからね。王子たちに罪はないけど、先祖の後始末をつけるのも子孫の役割ってね!」
(なんかソレ微妙に違うような……)
と、心の中でツッコミを入れるわたしの横で、彫像のようになっていたファレスが無表情で「話を先へ進めましょう」と切り出した。
なんだかえらく冷静に見える。あくまで他人事なのだろうか……?
「呪いを解くための条件として、リオナさんが男性に慣れつつあるというのは事実だとします。もう一つの条件の『男を愛する』をクリアするためには、私たちの誰かと愛のある結婚をするということですよね?」
うがあぁ、結婚! すっぱり忘れてた。
ヴァーラの呪いは二九代目王の咎をこの三人に責任転嫁させるためのものだったわけか……。元妹のための復習劇とは言え、なんて用意周到に準備されていた計画なのだろう……。
やはり膨大な記憶を持つ強大な魔女というのは伊達ではないのだな、と感心しかけたところで、ふと気付いた。
(いや、でも……だからって本当に王子様と結婚しなくちゃいけないの??)
わたしはそろりと片手を上げて遠慮がちに声をあげた。
「あのぅ……責任とってもらうのは『男に慣れる』という部分だけで十分では? それさえクリアできたら、自分でお見合いでもして気の合うヒトを捜すし……」
とたん、王子たちが一斉に凄い勢いでわたしを振り返った。なんか目が怒ってる!? う、怖いんだけど!
「だ、だって、もしも、仮に、本当に、結婚するってなったとしても、わたしの立場って側室かなんかでしょ? そこに愛がなきゃ駄目だなんて、当人同士も正室の人も、みんな困るだろうし!?」
「アルディアでは全ての民が一夫一妻だ。国王とて例外ではない」
「な”っ!?……あ、じゃあほら、そもそも愛とか恋とかの気持ちって人に言われて生まれたり育んだりするものではないと思うので、そういう先入観から始める関係ってどうなのかなー、なんて……」
「「「………………」」」
示し合わせたように、神妙な顔で無言になる三人。よっしゃー! 分かってもらえたか?
……と思ったら、三人がくるりと背を向け、顔を見合わせながらブツブツとわけの分からない会話を始めた。
「はぁー。分かってないのは分かってたけど、結構落ち込むものだねー」
「……非常に遺憾だ」
「そうですか? 私は予想通りですけどね」
溜息をつくセイに、憮然とするウォーレン。それに対し一人ケロリとしているファレスがいつもの調子でこちらに向き直り、ニッコリと微笑みながらやけにゆっくりとした口調で言葉を紡いだ。
「つ、ま、り、ですね。
今日こうしてヴァーラさんに言われるまでもなく、私たち三人共、もうとっくに、ずっと想っていたのですよ。
―――あなたの夫になりたい、とね」




