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立体の男は異次元から  作者: 伊代
王子と過去と魔女と
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一.幻覚とキス

基本的にはさくっと楽しく読めるお話を心掛けますが、一部重たい心理描写が含まれておりますのでR15指定させていただきました。

ご了承の上、ご覧いただければ幸いです。


「私と結婚してください」




 突如、音もなく現れた品の良い見知らぬ人物(おそらくは男性)が、わたしにそう告げた。

 本当にあまりに突然すぎて、手にしていた大事な大事な携帯ゲーム機をポロリとフローリングの床に落としてしまった程だ。


 性別の判断に悩む中性的で優しげな美貌は、日本人とはかけ離れているために長身の女性とも思える。更に一人称が「わたくし」だというのも混乱の一因だ。


 けれど、いくら女らしさが皆無なわたしでも、それなりに胸はある。相手がわたしを男だと思っている可能性は…………あるのだろうか?(自信ない)


 足下の小さな液晶画面からは、うっとりと聴き惚れる人気声優の甘い口説き文句がメロディアスなBGMと一緒に流れているが、わたしは目の前のイケメンに釘付けになる。


 ……これは、もしかしてアレか? とうとう妄想が幻覚になったのか!?

 ひゃっほうと、飛び上がらんばかりにくたびれたウサちゃんクッションから立ち上がり、恐る恐るそのヒトの上半身に手を伸ばしてみる。

 一見細身ではあるが、薄手のシャツの上から程良い筋肉に覆われている硬く厚い胸が分かった。やはり男性に間違いないようだ。

 そのままペタペタと上半身から首筋を辿りながら頬へと触れ、まじまじと美しいお顔を観察する。


 耳の下で綺麗に揃えられたサラサラの癖のない髪は金に近い薄茶色。その前髪の下にある二重の瞳はグレーとブルーが混じったような不思議な色合い。

 抜けるような白い肌に、高い鼻。

 シミ一つない綺麗な肌は、脂っぽいわたしと違ってスベスベと滑らかな手触りだ。

 形の良い薄桃色の唇に触れてみれば、ぷにぷにとしていて驚きの柔らかさ。

 その感触に思わず夢中になっていると、それまで微動だにしなかった男性がピクリと身体を震わせる。

 と、その唇が僅かに開き、そこから洩れた吐息の温かさを指先に感じた。


(うわー、すごいリアリティ!)


 なんて感激した次の瞬間、わたしの唇が塞がれた。

 一瞬触れ合うだけのキスだ。

 男性はハッとしたように目元を赤くして「す、すすすす、すみません!」と可哀相なくらいに慌てて顔を逸らした。


……え?

 あ、あれ?

 今更だけど、幻覚って触れたり触れられたりが可能だっけ?


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