テロ3 メンバーその3は苦労人
「――さてさて、次はどんな子をお求めかな?」
「……」
爆弾美少女――ロゼッタ・ストームを第二のメンバーに加えた俺たちは、食堂に向かっていた。今日は土曜日だから一応休日なのだが、この学園は全寮制のため、長期休暇中以外は毎日開いている。
しかも今日は月一の特別メニューとして、特大イチゴパフェが食べられる日なのだ。自他共に認める甘党のこの俺が、この日を逃すなど決してあり得ない。
……というわけで、今の俺はミナトと食堂を目指している。ミナトはニヤニヤと笑いながら、俺にそう聞いてきたのだが、俺の頭には特大イチゴパフェのことしかなかった。
「ちょっと、無視しないでよー。寂しいじゃんかー」
「うるせえ。お前なんか、特大イチゴパフェと比べたら、そこら辺に転がってる石ころ同然だ」
「アゲハちゃんひどい!」
ミナトは隣を歩きながら泣き真似をし始めたが、俺はそれを無視した。
そうこうしていると、大勢の生徒で溢れかえった食堂に着いた。俺は人混みをかき分けて受付にたどり着くと、受付のおばさんと向かい合った。
……はずだった。
「……」
「……」
「……あ、シーくんだ。ヤッホー」
あほミナトはほっとくとして……俺の目の前にいるこいつは何者だ。
なぜか受付には、いつものおばさんはいなかった。……代わりに、やたらとデカイ美形が立っていた。
身長は確実に百八十センチをゆうに越えている。サラサラの短めの銀髪が光に照らされてキラキラと光っているのが眩しい。瞳の色は緑色で、キリッとしていてかっこいい。やたらと無表情だが、美形はどんな表情をしていてもかっこいいからムカつく。
ただ、その美形具合を若干台無しにしているのは、格好がなんと真っ白な割烹着姿だからだ。ご丁寧にも、頭には白い三角布が付けられている。
……残念な美形だな。
「……注文は」
おお、声も程よく低くてかっこいい。
「……特大イチゴパフェ」
「俺はカルボナーラで!」
俺たちはとりあえず注文をした。するとその美形は無言で頷き、番号札を渡してきた。待っとけってことか。
「シーくん、今度はここでバイトしてるんだねー。お疲れ様」
「……ああ」
ミナトの胡散臭い労いの言葉に、シーくん? は素っ気なく応えた。
「ミナト、こいつは知り合いか?」
「うわー、アゲハちゃん、シーくんも知らないの? それでもハッカー?」
「関係ないだろそれは」
俺は確かにハッカーだが、お前みたいに情報通ではない。
「でもさー、シーくんは一般生徒の間でも有名だよ? 空軍の期待の新星! 天才パイロットのシルバー・ウォーリアくんだよ!!」
「……すまん。初耳だ」
「……気にするな」
軽く頭を下げると、シーくん……ではなくシルバーは首を横に振って応じた。
なんだよこいつ。なかなかまともそうな奴じゃないか。
「シルバー、俺は情報部のアゲハ・フェザードだ。お前の腕と人柄を見込んで頼みがある」
「……」
「俺が指揮するテロ対策クラスに転科してほしい。できる限りの好待遇を約束する。どうだ?」
「……」
シルバーは俺の言葉にしばらく無言だったが、考える素振りを見せたということは、脈ありだということだ。
俺は期待に胸を膨らませて返事を待った。
「シーくん、うちのクラスに入ったら、パイロットとしての地位はもちろんのこと、家庭への援助も弾むよ?」
「……本当か!?」
ミナトの言葉を聞いた途端、シルバーは目を輝かせて身を乗り出してきた。どうしたんだよ。
「だったら入れてくれ!! どんな危険なことでもやってやるから!!」
「……マジか?」
「マジだ!!」
よっしゃきた!! 多分今までで一番まともそうな奴ゲットだぜ!!
……ん? でも待てよ。
「……お前、家庭に何か事情を抱えているのか?」
「……ああ。実は、うちは両親を早くに亡くしててな……家にはじいさんとばあさん、そして弟と妹が二人ずついて、俺が全員を養っているんだ」
「まさかの苦労人!! かつ大黒柱!!」
何だよこいつ。可哀想すぎるだろ!!
俺は思わず同情して涙ぐんだ。そしてシルバーの肩にポンと手を置いてこう言った。
「分かった。俺が精一杯お前の家の援助をする。いっそのこと、金だけじゃなくてヘルパーも雇おう。その代わり、お前の働きに期待してるからな!!」
「本当か!? ありがとうアゲハ!! 恩に着る!!」
俺たちは固く握手を交わした。すると周りからなぜか、
「おめでとう! シルバーくん!」
「ブラッキーもなかなかいい奴なんだな!」
「テロ対策クラスで頑張ってくれよ!」
……などという歓声と大きな拍手が聴こえてきた。……そういやここ、食堂のど真ん中だったな。
ちなみに、ブラッキーとは俺のことだ。なぜそう呼ばれているのかは分からない。黒いからか?
「良かったね、お二人さん!」
「ああ、ミナトもありがとう」
シルバーは嬉しそうに礼を言って微笑んだ。
「あ、そうだ。一応聞いておきたいんだが、特技は何だ?」
「乗り物全般の操縦と軍隊格闘。操縦に関しては、一般車両からショベルカーなどの重機…… それから戦車や戦闘機、ヘリコプター、旅客機、船、潜水艦も可能だ」
「お前パーフェクトじゃねえか!!」
こんな奴を食堂の受付にしとくなんてもったいな過ぎる!!
「ただ、頭脳面にはあまり期待しないでくれ。先月の試験も、総合十位しかとれなかったからな……」
「千人中十位なら十分過ぎるだろうが!!」
やべえぞこいつ。欠点がどこにも見当たらねえ。顔も頭も性格も良くて、しかも強いだと? チートじゃねえか。
「さっすがだねえシーくん。そういえばシーくん知ってる? 総合一位はアゲハちゃんなんだよ」
「そうなのか!? すごいなアゲハ」
「いやいやいや、俺はお前ほどチートではない。努力の賜物だ」
俺は感心したような表情をしているシルバーに首を振った。大体、ミナトだって総合三位だったぞ?
「……まあ、とにかく、これからよろしく頼むぞ。シルバー」
「ああ、こちらこそ」
俺とシルバーは、拍手が響きわたる食堂で、再度握手を交わした。
空軍期待の新星にして天才パイロット、シルバー・ウォーリア獲得――。