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MAX HEART武!  作者: ユウ
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大会登録完了です

 ――七月十二日。夜の事。

 タケルの元へ、一本の電話がくる。

「もしもし……?」

「あぁ、タケルか? 俺だよ、ゴウだ」

「ゴウ、どうしたの?」

「どうしたのって……まさかお前、気づいてないのか!?」

 のんびりと話すタケルに、驚き呆れるような調子のゴウ。タケルは何の事かさっぱりといった様子で、一人で家の天井を見上げ考える。

「ふぅ……やれやれ。念の為に連絡しておいて良かったぜ」

 ゴウは一つ溜息をついて、ゆっくりと話し始める。

「明日はリトルウォーズ登録の最終日だぞ。明日を逃したら優勝に向けて戦う処の話じゃない」

「えぇっ、そうだったっけ!?」

「そうだよ、去年もこんな感じだったの……覚えてないのか?」

「ごめん……忘れてた。てっきり開催日に行けば良いものかと……」

 電話越しに、ゴウの更に大きな溜息が漏れる。

「俺も明日、一緒に行ってやるから、早起きして会場に向かうぞ。ユウラには連絡するなよ、あいつの事だから誰かしらに喧嘩ふっかけて、面倒な事になるからな」

「あははは、ユウラならあるかもしれないね」

「あるかもしれない、じゃなくて、実際にある事だ。……ま、とりあえず明日な」

「うん、ありがとう……ゴウ!」

 電話を切って、静寂が訪れる中で、タケルは一人ナデシコの事を想う。

(ナデシコ……今こうしてる時でも、ナデシコは苦しんでいるんだ。優勝できるかはわからないけど……僕は僕なりに精一杯やってみせるよ)

 タケルはゴウに言われた通り、早めに布団につく。リトルウォーズに参加する、と決めた事は予想以上に、タケルの精神を疲れさせていたのか、目を瞑ると一瞬で意識は無くなっていく。意識が無くなる瞬間、タケルはナデシコの顔が一瞬よぎった気がする。


 ――七月十三日。早朝。リトルウォーズ登録最終日。

「ごめん、ゴウ。昨日はありがとう」

「気にするな、俺もやると決めたからには限界に挑戦してみたい」

 最寄りの駅で待ち合わせして、登録会場そしてベスト4と優勝決定戦の舞台である両国国技場りょうごくこくぎじょうを目指す。会場が近くになるに連れて、ゴウみたいに体格の良い人が増えてくる。恐らくはリトルウォーズ参加者である。

「ふむ……」

 体つきの良い選手を見る度に、ゴウは深く頷いている。ゴウが見ている方を、タケルも見てみると、ゴウとは比べ物にならない身長に体格を誇る集団がいる。

「ゴウ……あれは……」

「あぁ、凄ぇな……」

「あんな人に勝たないといけないのか……今年のリトルウォーズは……」

「勝つ? それは無理だろう。あれはみんなプロレスラーだぞ?」

 ゴウに言われて、タケルももう一度その集団を見る。確かにゴウに教えられた選手もいる。タケルはふと思い返す。ゴウは無類の格闘技マニアであり、格闘技の種類を問わずどんなものでも見る。

 ――なんだかんだと言いつつ会場に到着する。登録最終日にも関わらず、会場は凄い人の数でごった返している。そして会場に着くなり、一つの噂話を耳にする。

「ねぇ、今日この会場にFエンゼルのリーダーの三崎さんが来てるみたいよ!」

「えっ、三崎さんが? キャー、どうしよう、握手してもらえるかな!」

 明らかに参加者ではない少女二人が、甲高い声を上げて走り回っている。

「ふむ……ちょい前のリトルウォーズでは、あんな連中はいなかったんだがな……」

「まぁ、良い事じゃない? それだけリトルウォーズってジャンルが脚光を浴びてるって事で」

 明らかに不満そうなゴウの表情を見る。しかしゴウの考えは最もで、去年以上にこの会場とは毛並みの違う人種がちらほらと見かける。少なからず去年はもう少し硬派なイメージで、雰囲気が恐ろしかった事をタケルは思い出す。

「しかし、さっきの女達の会話を聞いたか?」

「うん。あのFエンゼルの天才、三崎清純さんが会場に来てるって」

「三崎清純、トーキョーモンって点が少々気にくわない所ではあるが、実力は本物だ。事実、近年で怪物王者である松原要に対抗できるのは、Fエンゼルの三崎か、去年突然に上位に上がったライジングスの二之宮小次郎(にのみやこじろう)ぐらいだと言われてるぐらいだからな……恐らくは今年の大会も、この三強が独占する事だろう」

 ゴウの言っている事は間違ってはいない。事実去年の大会も、ベスト4に進出し、圧倒的な力を見せたのはこの三チーム。他のチームとは雲泥の差があったのだ。

「ま、そんなに堅くなる必要は無いさ。その三チームにいきなり当たる事なんて、確率的にも低い」

「堅くなるなって……ゴウがそんなにビビらせるからー……」

「ハハハ、すまんすまん。とりあえず登録をさっさと済ませて帰ろうぜ、あんまり遅いとユウラに怪しまれるからな」

「うん、そうだね」

 タケルはゴウと共に受け付けを探す。あまりの人の群れに、登録場所を探すのも一苦労する。中心であろう場所へ、勘だけで歩いてみると、なんとか受け付け会場を探し当てる事ができる。これだけの人数だからか、去年に比べ受け付けの黒子の数は非常に多い。恐らく去年の倍はいるのではないだろうか。

「お願いします」

「はいはい……ではチーム名と参加人数をどうぞ」

「えと、チーム名はピース。参加人数は三人です」

「ピース……と、あぁ、去年の大会にも参加していただいてますね。ありがとうございます。簡単なルール説明はどうします?」

「いや、いらない。それは開会式で言う説明だけで十分だ。それよりも聞きたい事があるんだが……」

 黒子の問いに答えたのはゴウだ。逆にゴウは黒子に問いかける。

「今年はもうT,O,テイカー。Fエンゼル。ライジングスの面々はエントリーしてるんですか?」

「ちょっとお待ちを……えぇ、T,O,テイカーは登録受け付け初日で、Fエンゼルは先程、ライジングスはまだですね」

「そうですか、ありがとうございます」

 タケルとゴウは受け付けを済ませ、帰宅しようと来た道を戻る。

「ゴウ……?」

「いや、ちょっとな。今年の大会は面白くなりそうだ。王者松原も天才三崎も、今年は三年生で事実上、王者と天使の最後の対決だ。過去の戦績は二年間の間、王者が時代を席巻した。天使が最後の年に優秀の美を飾るのか。あるいは王者が時代を守り抜くのか。これは本当に見物だぜ」

「うん……なんか聞いてるだけで鳥肌が……。でも、ゴウさ、僕たちも一応は優勝目指すんだって事を忘れないでくれよ?」

 一人盛り上がっているゴウに、念の為に釘を刺しておく。確かにこれでユウラが来ていたら、暴走は止められなかったであろう。ある意味ではゴウの選択は正しかった。

 そしていよいよ、ピースは再びこの舞台で戦う為に帰ってきた。登録を済ませ、あとは七月十七日の開会式を待つだけである。

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