秘密のバニーガール
高校生の私がとある店で見たのは、クラスメイトの「彼女」がアルバイトしている姿だった。しかも、そのアルバイト中の「彼女」の姿は、意外な姿で……?
「その格好……寒くないの?」
私は目を見開いた。私が見た彼女は、ふわふわの耳と尻尾が生えていたのだ。彼女は私と同じ人間なのに。
「……うん」
彼女は銀色の盆を片手に持ったままうなずいたが、すぐに罪悪感に駆られたようにその目を伏せる。
「いや、うん、じゃなくて」
私はお店の中を見回して、彼女の手をつかむ。銀の盆はテーブルに置かれ、注文されたオレンジジュースの氷が涼しげに鳴った。私たちが出ていくと、真鍮で作られた小ぶりなベルが鳴る。
私が彼女を見かけたお店は、サービス業が中心の店舗だが、酒類の販売や接客を行う制服の観点から高校生は働いてはいけないのだ。
背後から私を呼び止める彼女の声が聞こえるが、私はわざと無視した。彼女は胸までの、烏の濡れ羽色の髪をなびかせる。彼女の耳は上下に動き、大きな編み目のタイツを履く太ももや丸い尻尾は、通行人を誘惑させる。
私は、みんな暇なんだなと、ため息をつく。
「なんで、あの店にいたの? あそこ——」
私は唇を引き締めた。
「うちの高校、バイト禁止だよ」
私は、バニーガールの格好をする彼女の手をひいている。
「ねえ、このこと、みんなには内緒にしてくれない?」
人差し指を唇に当てて、笑った顔で頼む。
「それに連れ出したんでしょ? バイト中の私を。ま、あそこ、二十歳からだけど」
私は口角を上げてうなずく。
「あとで、店長さんに謝らないとね」
彼女はくすくす笑い、片手を少し丸めて口元に当てる。私は楽しそうな彼女と少し逃避行した。それが始まり。
私と彼女は、秘密のバニーガールから友だちになった。
後日。彼女は店長から諭されたらしく、私も一緒に店長に謝った。
「そうか。かわいいから人気者だったけど、辞めるのは寂しいよ。けど君ら、いつの間に仲よくなったの?」
尋ねられた私は彼女と目を合わせて笑うと、店長も困りながら笑った。
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