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10 メルト・ロジック VS 『不死戒将』ブラッデッド・コスモ

 飛ばされたのは、西の平原だった。遮蔽物がないということは、俺の強みが完全に封殺されることを意味する。...まぁ、実際遮蔽があっても無意味だったが。

「成程...ゾルダートが持たせていたか...効果範囲無制限なところを見るに...零式..か..」


俺は正々堂々戦うことを決心する。最適解を出したんだ。なのに確率を悉く打ち破られた。

俺のアイデンティティはもう無いに等しいんだよ!

積年の愛刀、《不死の刀(アンデッドソード)》を正眼に構える。

「...おい、ブラッデッド・コスモ。」

コスモがこちらに目を向ける。

「...なんだ、若造。命乞いなら...聞かぬぞ...」

「しねーよジジイ。悪いけど、俺はそう簡単にはやられねーよって話」

コスモが再び大剣を構える。あの刀身を見るたび、背筋にうすら寒いモノが走る。

でも、ここで退いたらダメってことくらいわかる。今からペコペコ土下座したって、きっとコスモの考えは変わらないのだろう。確率が視えないので分からんが。


そして、俺の最も尊敬するアイツは、絶対にそんなことしない。

逃げたりしない。


前世ではあんな死に方(自殺)したけど、今世くらいは立派に立ち向かって死にたい。

「征くぞ、孤独な戦士よ」

ラストバトルだ。


「あああっ!があっ!」 もう剣技なんて考えない。ただ滅茶苦茶に《不死の刀》を振るう。

「むんっ!」気合一閃、コスモから放たれるぶっとい斬撃を剣の腹で受け流す...が、流し切れずにそのまま吹っ飛ぶ。隠れる場所がないな!致命傷ではない。最後のロップスクロールは、とっておきたい。

一応残機はまだ6つあるんだ。撃退するという目的は果たしたんだ。

今はただ、俺が殺されないことを願うだけだ。


受けきれず、俺の両足が斬り刻まれる。たまらず体勢を崩したところを斬撃が襲い、左腕も刻まれる。

出血多量で死亡することを前提に、《再鼓動の恩寵》を発動。

全快、よって再び全開。

「うらあああああっ!」 俺の気合にも応じず、コスモの大剣は俺を下から真っ二つにする。

《再鼓動の恩寵》発動、傷は癒え、再び剣を振るう。

「はぁっ、はぁっ…」


コスモが、いい加減飽きた様子で問いかける。

「なぜ諦めん?なぜ這いつくばり負けを認めない?貴様は、天地がひっくり返っても俺に勝つことはできんぞ」 多分不敵な笑みを浮かべる。

「お前は、俺を殺したら、転移魔法やらなんやらで結局南端に戻ってくるんだろ...?」

「ああ。それが俺の使命。俺の役割だからだ。」

「だから、死ねねぇのよ。大切な人いっからよ...死んでも死ねないわけ」

「あの女か」俺は答えず、震える腕を叱咤して剣を構える。


みっともないって自分でも分かる。情けない。でもきっと、アイツ(シーララさん)はそんな俺を嗤わない。絶対に、俺を嘲笑しないだろう。


「ならば、条件を出してやろう」

条件...だと?

「これより、俺に一撃を与えることができたのなら、今後一切ゾルダート・アンドルド邸への侵攻を行わないことを約束してやろう。もちろん、あの女にも指一本触れん。」

願ってもない好条件。ゾルダート邸なんて興味ない。

でも、シーララさんが安全になるなら、なんだって差し出そう。

「本当...か?」 確率が視れないのがもどかしい!

「《帝戒位》と、『不死戒将』の名に懸けて誓おう」

確率なんて視えなくても分かる。これが最適解だ。


「分かった。それで頼む。」言うや否や、俺の上半身は綺麗さっぱり消し飛んだ。

《再鼓動の恩寵》により一命をとりとめる。

「ならば征くぞ、勇敢なる戦士、メルト・ロジックよ。」

そういうと、コスモはその大剣を正眼に構えた。 俺との今までの戦いなんて、ヤツにとっては遊びにも過ぎなかったんだ。そう感じた瞬間だった。


「ゲゴッ...はぁ、はぁ...」 あれから10分ほどが経過した。

すでに恩寵は底をついた。あるのは超高度回復魔法のロップスクロール、一枚のみ。

「ったく...ぶっ壊れ性能が過ぎるだろ..」 当たらない。剣を振るっても、大剣の連撃でいつの間にか恩寵を使わなくちゃいけない事態になってんだ。

「最後は...我が九つの技のうち一つで終わらせよう...」

ココノツノウチヒトツ?

ええい、ままよ。これが正真正銘、最後のチャンス。当てたら勝ち、当てられたら死。簡単なルールでいいねぇ。


大剣を斬り下ろしの体勢にとる。

「九撃殺、一番...」 周囲の空気が黒く染まっているような気がする。空気もろとも死にゆくような、恐ろしい錯覚。

俺も前傾姿勢になる。あの技が当たる前に、一撃、何としても食らわせる。欠損程度なら、一発なんとかなるから。


俺は足に全身全霊の力を込め、強く踏み出した。

「『死突龍』」コスモの周り一帯の地面が、ガバァと大きく口を開ける。

斬り下ろしの構え、だって? 範囲攻撃じゃねぇか。

ズドドドドドドド、と衝撃波が大剣を起点に地面を砕いて襲い掛かってくる。俺はもう何も考えずに突撃する。ギリギリまでロップスクロールは使わない。それだけを念頭に。


足が割け、顔にピピッと血が飛ぶ。しかし走りを止めてはならない。

俺は必死にコスモの懐に滑り込んだ。

そして俺は、読んでいた。コスモはそれを読んでいたことに。

ロップスクロール発動、傷はふさがる。そこをコスモが見逃すはずもなく。

唐突な斬り上げに身体に傷が走る。そのまま突っ込んだら即死、ぐっと堪える。

胸が割け、血があふれる。ロップスクロールも、もう無い。

コスモはきっと、俺を殺すつもりでやった。

そして間違いなく、俺は死ぬところだった。しかし死ななかった。 それは何故か?

()()()()()()()()()()()

俺が、最適解を引いたからだ。

「俺の、勝ち、だ」そう言い、弱々しくコスモの肉体に剣でかすり傷を付ける。


俺は、ブラッデッド・コスモに勝利した。


「約束は...約束...か」

コスモは大剣を担ぎ直し、その場から去る動きを見せた。

「ゾルダート邸と、あの女には手を出さん、そう約束した。しかし、貴様とは再び戦うことが、あるやもしれん。」

俺はその場に突っ立ったまま、初級回復魔法で止血をしているところだった。

「励むがいい。さらばだ。」

そう言い放ち、彼は消えた。



身体が動かん。止血はできたが、あまりにも出血で失った血液が多すぎる。疲労困憊、気分は最悪。

勝利の余韻なんて欠片もない。

そもそもあれは勝利じゃあない。

意識が朦朧とし、先ほどの激戦で荒れ果てた平野に膝をつく。

幻聴か、背後から焦った様子の男の声が聞こえてくる。こんな西端の地に、人なんて来るのか。


「おい、おい、大丈夫か...」腋に手が差し込まれる。

そのまま立たせられるが、そこまで体力は残っていない。

意識を失う直前、俺が最後に見たもの。

紫色の長髪、紫色の瞳。どこかで見た。そうだ、思い出した。

フェイン・ルルシアン。 《帝戒位》序列九位だ。

「どうしてこ」 どうしてここにいるのか聞く前に、俺は意識を失った。

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― 新着の感想 ―
シーララさん、面倒見がいいですね。 いつの間にか情が移ったのかな。 主人公のスキルが使い勝手いいのか悪いのか。異世界初心者には使いづらそうに感じたので、主人公は頑張ってるんだろうな。 10話目の冒…
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