警戒中
買い物をするために近所のスーパーに行った。久々にお買い得商品を大量に購入することができて、心が躍っていた。いつもと何も変わらない日常である。
家のそばまで来た時に、不意に路地から小学1、2年生くらいの男の子が出てきた。学校帰りだろうか。重いランドセルを背負って、手にはバレーシューズや絵の具入れ、たくさんの荷物を持って、一人で歩いている。『ガタガタ』『カランカラン』。住宅街の人通りのない道なので、男の子の荷物の音が響く。
「最近の小学生は集団では帰宅しないのかなぁ」そんなことを思いながら、前を歩く小学生を見つめていた。それ以外のことは何も考えず、小学生の後頭部あたりをぼーっと眺めていたのである。本当に何も考えていなかったと思う。数分が経過した後、ふと、男の子が振り返った。友達の声でもしたのだろうか…。また前をむく。交差点に差し掛かったあたりでまた、男の子が振り返った。今度は先ほどよりもずっと長い時間振り返った。私と目もあった。思わず私がほほ笑むと、「ぷい」っとしたのである。
「何か悪いことでもしたのかなぁ」と思ったが…。私には心当たりがないので、そのまま家路を急いだ。
すると今度は男の子が急ぎ足で歩き出したではないか。ここでなんだかおかしいと気づいた。
私は70すぎたおばあさん。自慢じゃないがいつも実年齢よりも若く見られる。ファッションもおばあちゃんながら流行を意識しているので、見た目は小綺麗にしているので問題ない。また、ご近所ではいつも笑顔を心掛けて、『愛想のよいおばあちゃん』で通しているつもりだ。この日は買い物袋やショルダーバック以外、何も警戒するものをもっているわけでもなかったが、持病の花粉症がひどいのでマスクをしていた。
男の子が駆け足で走りながら路地を曲がる直前、また振り返った。凄い顔をしていた。恐怖のあまり、目は半泣きで、汚い話ではあるが大量の鼻水が垂れている。
「私は不審者ではないわよ。大丈夫よ。」そう言いたかったが…男の子は逃げて行った。
後日、嫁いだ姪に電話をした。姪には小学生の子供がいる。早速この話をしたのである。
姪は「最近は治安が悪いから男女問わず知らない人を見かけたら、距離を取りながら警戒し、ずっと自分の後を追ってくる場合は、一目散に逃げなさいって学校から指導されてるのよ」というのである。
まさに私が出くわした状況ではないか ...と驚愕したのである。
私が小学生で育った昭和時代は、近所の人には必ず挨拶し、名前も憶えてもらえる関係だった。『不審者』という言葉も日常的に使われていなかった気がする。
日本も外国並みに治安が悪化したということなのだろうか。
自分がまさか『不審者』扱いされるとも夢にも思っていなかったので、いろいろ衝撃を受けた日であった。




