表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/23

そもそもなんで勇者がレベル100000なの?~最初からそうじゃなかった~

「僧侶~!聞いてもいいですか?」

「なんだよ、天使ちゃん。お前はお前で、勇者の相手を探せって言ったろ」

「そんなこと言っても、あたしは人間世界に来たばかりです!」


お前、応援しかできねぇのか……。


僧侶は嫌々な顔をしつつも、疑問を持っている天使と


「なんだよ」

「勇者様と王様って、ホントに親子なんです?超違うんじゃないんですか?」

「ほっほっほっ。天使ちゃんは分かっているねぇ。儂が凄い王様だということ」

「いえ、それはないです。凄く無能だと分かりましたから」


王様に聞けばいいじゃんって思うが……。王様がこんな調子なのだ。

勇者が確かな理由ワケ有りな事は僧侶も知っていた。

勇者の理想な相方を探す上で、勇者の昔を知る必要はあるし。なにより天使もその農村という、勇者の部屋を訪れたからこそだ


「どうなんです」

「…………おい!こんな子に、生々しい話をしていいのか?俺は隠さず言うぞ!」

「!!ちょちょ!!僧侶く~ん!そこは天使ちゃんなんだぞ!生々しい事を言ったら、儂を見る目が違ってくるであろう!」

「「それは変わらない」」


凹む王様…………だが。なるべく、ラインを超えない程度で、伝えて良いとサインをした。

色々と複雑であり。これについては、天使も被害者と言えることである。前置きとして


「勇者をレベル100000にした、天使ちゃんに罪はねぇ」

「!ちょ…………なんか、ヤバイんですか?」

「かなりヤバイ。勇者と王様が間違いなく親子なのは、俺のスキルでも確証してる……が、経緯がなぁ」


天使ちゃんの見た目がホントに子供だから。言葉を選びたいけれど、難しいと思う。

まず天使ちゃんに分かって欲しい事は


「俺がそもそも、始めから勇者ご一行の中には居なかったのは教えたよな?中途採用枠だ」

「勇者さんから誘われたそうですね?」

「あの勇者も、実は俺と同じく、仲間に誘われた側だ」

「…………へ?」

「悪い悪い。もっと言えば、あいつとは別に。世間の始まりから言う勇者は、……あいつじゃねぇ。あいつの腹違いの兄貴だ」


魔王に対抗するため、勇者達はその旅に出た。しかし、その初期メンバーには僧侶も、現勇者もいなかった。……2代目という言い方もおかしいか。中途採用という言葉を使った僧侶をして。



「その旅時において、勇者達も戦力を増強するための人材収集が必要になった」



”相性”のスキルを持つ、僧侶が採用されたのも、仲間達を護りつつ、魔王の戦力を知る上で非常に優秀だったことに違いないだろう。

そして、まだ勇者と呼ばれていなかった彼も、



「単純なレベルだけで、奴は勇者一行の目に留まったそうだ。仲間達を護る上で、強い人間に本当の勇者は声をかけたんだ」

「……………」

「それが自分の知らない、腹違いの弟だったと知らずにな。元勇者のスキルは、”邂逅”。良い存在達と自然に出会えるスキルだった。それに従ったのは当然だった」



僧侶と勇者が初めて出会った時から、……こいつは化け物だった。

元勇者とその仲間達のレベルが80なら、あいつはその倍以上、レベルが200。魔王の幹部すらタイマンで戦えていた奴だ。

卑怯と思われるかもしれないが、元勇者達は集団で魔王の幹部と戦った。それだけの実力差が人間達と魔物達にあり、だからこそ人間達は明確に連携がとれていた。強大な敵にも仲間と一緒に立ち向かえた。


「それが国民達が思ってる勇者ご一行なんだろうな。俺もそれに一噛みしてるし……だが、あいつは違う。相手の事を知らずとも、真正面から戦い続けた。そうやって戦っていた。結果、レベルの上がり方も速かった。経験値の独り占めって奴?」



勇者の血筋を持ち、勇者ご一行の中で最もレベルが高かった。

だから、天使ちゃんが間違えて、勇者のレベルを急激に上げてしまったのは……彼女一人のミスではないのは明らかである。そのことを今知った天使は、かなり沈黙してしまった。


自分のミスじゃないって、幼い気持ちもあれば

勇者がイカレているのは、自分のせいじゃないって、……これまた幼い気持ちもあるし

女神様はどうして自分に言ってくれないの!?って、……気持ちに

守ってくれたんですねって、……女神の慈悲に感謝もするし

二人の勇者があまりにも人間や天使の過程から外れていて、……唖然とするし



「……その、元、勇者様は……」

「死んだよ。もうすぐ、みんなで魔王討伐って時に。単身で行ったそうだ」

「そ、それは………そ、それって」

「天使ちゃんが勇者を、レベル100000にしてからだ。……あんだけ強くなっても、護れなかった仲間があいつにいた。……いや、俺も詳しく聞けなかったが(途中離脱したし)。十中八九、元勇者は自暴自棄になったんだろう。普段なら仲間達と一緒に違いない」


ここまでの勇者ご一行の事業を、勇者死亡で終わらせるわけにもいかないし。なにより、魔王だって討伐できたのだ。結果はどうあれ事業としては成功であり、人間達の勝利に違いない。

だが、勇者という存在が生きてもらう必要がある。だからこそ、残った勇者ご一行と王様、王国の一部の関係者達は、途中で勇者を入れ替える選択をした。

本当に魔王を倒した存在を勇者にした。


レベル100000の勇者が魔王を討伐し、世界に平和が訪れましたとさ……。



「だから、天使ちゃんが自分の罪を気にする必要はない」

「でも、勇者様の気持ちは」

「影響があるのは確かだろうけど。結果が全てだ。……魔王がどれだけ強かったか知らないが、勇者ならレベル100000じゃなくても、勝ててたんじゃねぇか?天使ちゃんも分かるだろ、その辺」


どっちみち、魔王が勇者に倒されていたという評価に変わりはなく。


「ああ~~。そうなんだよぉぉっ!!勇者が腹違いの子と、元妃(元妻)にバレた時は、もうそれは、カンカンでさ~~!!っていうか、離婚にまでいった!!妃の地位を捨てるって言いだして!壮大な慰謝料を請求されてっ!!」

「当たり前だろ!!お前は馬鹿だ!!自分の本当の勇者が死んで、どこの女で作ったか知らねぇ奴を、自分の子として受け入れろって!!妃様が納得できるわけねぇだろ!!そもそも、あんな勇者が生まれるきっかけ作ったのテメェじゃねぇか!!テメェの隠し子ってか、不倫のせいだろ!!とんでもねぇ不倫のせいだろ!!」



全然、本人は反省していないどころか。その勇者を盾に暴れる始末だ。

この王様が全てにおいて悪い。天使ちゃんのは単なる事故に過ぎないのだ。


ちょっと落ち込んでいた天使ちゃんだったが、……王様のこの態度とこの重税に、この不始末には……僧侶達にも同情するし、勇者様が婚活活動を少しでもやってくれることには、嬉しい気持ちにもなる。


魔王を討伐したとはいえ


「……勇者様は多くを失ったのですね」


誰もが知れるものではないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ