表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/37

勇者はついに女性を選びます!~次回で最終回!~

ドヒューーーーーーー



「まさか、俺が魔王と関わっていたとはな……」

「……そういえば、どうして僧侶は直前で抜けちゃったの?」


時間移動の最中での勇者と僧侶の会話。

自分との差を感じ取っていたとは言うけれど、これまでの僧侶の立ち回りを含めて、さすがに選抜された人材に違いない。


「死ぬわけにいかなかったんだよ」

「……………」



そう言うけれど、僧侶のスキルと性格からして、死ぬとは思えないって勇者は思う。しかし、


「まぁ、あれだ。やりてぇことができたんだよ。お前達のくだらねぇ恋愛事情を視てたらよ、それを可視化できるようになったから、結婚相談所、……やってみたくなった。そんだけさ」

「……そーかぁ。やっぱり、すごいなー僧侶は」

「あ?」

「だって、お互いに名前を認識できない。僧侶だって、久々に認識できて、どんだけ大変だったか、分かったんじゃない。それで8年もやってきたんだから、すごいよ。僕達なんかより世界の救世主だよ」

「んなわけあるか」



まだこの間なら、名前の認識はできるようだ。現在の世界に戻れば……どうなるか分からないけれど、きっと。



「「ふあっ……!!?」」



勇者と僧侶は目を覚ましたように、過去から戻って来た。現実世界に身体が置かれた状態で、魂だけ過去に飛んだ感じ。


「あれ?……魔王の娘ちゃんは……」

「確かー……お前が過去に飛ばされた時、……魔女達がここに乗り来んでな。それで俺が仕方なく、過去に跳んだわけだが」


もしかして、過去を変えちまったから、現在に変な影響が……!?そんな心配を他所に。2人の背後からの殺意。


「お目覚めかしら、2人共」

「「うおおぉっ!?妃様!?」」


出迎えがあんたかよって……表情。


「爆破されたいの?」

「いえ、結構です……」

「き、妃様……魔王の娘ちゃんは……?みんなは……」


2人が意識を失っていたのだから仕方がない。実は言うと、



「もうかなりの時間が経っているのよ?代わりに私が指揮っていて、みんな。あんたの答え待ちをしているところよ」

「!ええーーっ!?ちょっ……」


お見合いの時間はとっくに過ぎてしまった。予定でもう、勇者が結婚相手を決める段階になっていた。


「なら俺はすぐに準備しないと!!」

「ぼ、僕も早くここから脱出しないと!!もう用がないよね!!」


勇者がそうやって動こうとすれば、妃様も僧侶も物凄いスピードで捕らえる。


ガシイィッ


「あんたは逃げちゃダメでしょうが。あなたが寝てる間に何をしたか、……教えてあげようかしら?」

「ドサクサに紛れて逃げるんじゃねぇ。レベルはまだ返さねぇからな」

「じょ、冗談ですよー……その、…………決めたことはありますから!!」


しょうがないなーって感じでこの部屋で待機する勇者。妃様と一緒とは居心地が悪い。しかしながら、


「妃様。……息子さんはあなたの事を気にしてましたよ」

「そう、じゃあ過去に行って、会えたってわけね」

「どうして、何も言わなかったんです?」


僧侶にも言った言葉を返す。……というのは、違うだろう。


「それでも帰ってくると思っているから、言わなかっただけよ。それが母親や父親でしょ?結果は許し難いものであってもね」


その言葉に恨みがまったく籠っていない。親の心配、重責から解放されたような表情であった。その変化に、世界は何一つ変わっていないと分かった。

過去は変わっていない。現在は現在なのだ。


「魔女の気持ちは伝えられたの?」

「は、はい。というか、今の状況を踏まえて伝えたら、……ショック受けてました」

「当たり前でしょうが。恋愛をなんだと思ってんだ」


語る気はないが。

こいつの言葉で、自分の息子も魔王も……いくら勘が悪かろうが、自分達が未来にはいないと察したんだろう。だったら、こいつ等が過去に行かないという選択肢をとったら~……なんて思っていたら、自分は未だに引きずっていたと、妃様は思える。


…………っていうかね。


「実はあんた達が寝てる間に、1人、乱入者が現れてねー」

「はい?」

「あんたの事だから気付いてたと思うけど。どーしても、そいつに会ってもらいたくて。……紹介してあげるわ」

「??????」



その引き摺っていた原因を調べに調べた結果ねー



ガラララララ


「し、失礼します。勇者様ー」

「?????」



その乱入者の準備が整い、勇者とのお見合いが始まったのであった。



◇         ◇



パンパカパーーーーン



勇者の全てのお見合いが終わり。いよいよ、



「勇者様!!いよいよ、選択の時です!!」


天使ちゃんはハイテンションに実況風に叫ぶ中、


「ほい!さっさと選んで結婚しやがれ!!勇者!!」


僧侶は終始ブチギレ中の結果タイムである。

城の中庭に呼ばれて集まる女性陣。


「い、いいんですか!?ウェディングドレスなんかもらっちゃって!」

「女性の憧れー!コスプレとは全然違う、緊張っぱねー」

「う、ウチも緊張ですー」

「2度着れるのは、良い思い出になるな」


それは村人ちゃん、遊び人ちゃん、女武術家ちゃん、商業娘ちゃんの4名にも、ウェディングドレスという花嫁姿を披露し



「勇者様もしっかり着こなしてくれてますね」

「い、いや!私で遊ぶのはね!これでね!」

「父上、見てくれてますか?あたしも女になりました!」

「やっほーーい!あたしもついでに着ちゃうぜ!」


お姫様、魔女、魔王の娘。さらには天使ちゃんまで、この豪華衣装を着て登場している。そして、向かい合う勇者も綺麗な男前の恰好で待っていた。


「………………」


緊張はしている。

自分はここで答えを出さなければいけないのだ。


横一列に並ぶ花嫁姿の7人。向かい合う、勇者が1人。



「さぁ、誰を選ぶか!決めてくれ!!」


僧侶の言葉と共に勇者は前に歩き出した。


私か!?あたしか!?ウチ!?


いろんな一人称が心の中で現れ、……そして、勇者が彼女の前で止まったのだ。


「……あの」

「ゆ、勇者様……」


その子は、……魔王の娘ちゃん!!勇者が選んだのは


「じ、実はね。君に伝えるのを忘れちゃった事があってね」

「は、はい……こ、これからよろしくお願いします!!勇者様!!」


魔王の娘ちゃんの隣にいたら魔女は、選んだ相手が相手なだけに、かなりドン引きした表情で唖然としているが。……他の者達からは祝福の拍手と声が挙がったのである。


「「「おめでとーーーー」」」

「「「勇者様と魔王の娘ちゃん、末永くお幸せにー!!」」」」


ドギマギしている魔王の娘ちゃん。すごく赤面して顔を抑えているところ、


「あの!僕、そのつもりじゃなくて!」


悪いのだが、勇者はここで魔王の娘ちゃんと会えたから、歩み寄っただけであった。後でも良いと言えば、そうなのだが……きっと、それどころじゃなくなると思ったから


「ま、魔王と会ってきてね!コッソリ、君の父親を映しておいたんだ」

「え?」

「生前のお父さんのこと、君の脳内に送り込んであげる」

「あ!あのスキルは、あたしの力!!」



魔王の娘ちゃんはその時まだ幼くて、父親の顔もよく覚えてないのだろう。だから、過去のものだけれど、父親の姿をいっぱい脳内に転送してあげた


「…………!ち、父上………」


そこには本気で娘を大事に思っている父親の姿。それに泣いてしまうのは、



「うえぇぇーーーんんっ!!父上ーーー!!あたし、立派な魔族の王女になりますーー!!」


女性としてではなく、一つの子供として、……親の愛情を知ったからであった。

嬉しくて泣き叫ぶ魔王の娘ちゃんに微笑みながら、勇者はまた、定位置に戻ろうとする。そこに


「おい!!選べよ!!勇者!!」

「泣かしたままで終わらせないでくださいよ!!さっさと選んでください!」


僧侶と天使ちゃんの実況で、やり直しと言われてしまう。これには勇者も苦笑い。魔王の娘ちゃんを選んだ時には祝福してあげたが、違うのかと分かると、どーなんだろう。もしかして、自分達の可能性が!?という希望というか、微妙というか。


「ごほん、…………じゃ、じゃあ……僕は……」


勇者もここで覚悟を決めて


「僕が選択するのは…………」



……………………



固唾をのんで見守り……



全員が勇者の選択に対して



「この中から誰も選びません!!!」



ズコーーーーーーーっと花嫁姿でズッコケるのであった……。

まぁその



「「「そーだと思ってました!!」」」



魔女と商業娘ちゃん、村人ちゃんの3人はそーいう理解のあるツッコミであり



「まー、楽しかったからいいかー!」

「ウチはもっと強くなりたいです!」

「そうですわね。私も自分で、好きな殿方を捜してみますわ」

「ぐすぅ………いえ、勇者様にはこれ以上の感謝はないですから!!」


自分達の目的を見つけたり、捜していたりする。遊び人ちゃん、女武術家ちゃん、お姫様、魔王の娘ちゃんの4名。

全然、ショックそうにしている人はいないのだ。むしろ、一番ダメージを受けているのは


「ちっ、……マジかよ。また捜すのかー?」

「ああーっ。お見合いのために色々と準備したお金がパーに……」


ここまでやってきた僧侶と王様の時間と懐事情にダメージがある。

7人の中から選ばないということは……



「よーし!この天使ちゃんが勇者様と結婚しちゃいまーす!!」


ノリノリで勇者様に向かう天使ちゃんであったが、


「君も選ばないよ」

「え~~……もーっ……」


なんだか分かった素振りで立ち止まってしまう天使ちゃん。確かに勇者はこの中から選ばないという選択にした。それには


「コホンッ」


勇者もこの8年間。確かに幸せだったと噛みしめながら、世界にどれだけの迷惑を与えてしまったか。そして、分かっていても難しいことに進むのが……勇者だろうが、なんだろうが、……人として、生命としての在り方。

まずは選ばなかった理由がある



「僕は、……ここにいるみんなを幸せにする資格がない!だって、僕のせいで巻き込まれた人達だから」


「「「その通り!!!」」」


ほとんどの人達がすぐにツッコミを入れるから、ちょっとしょんぼりする勇者。幸せになれるなーとか、この人といるのは楽しいだろうなー……というイメージはあるけれど、長くは続けられないだろうし。そーいう関係のままの方が良いって、察するくらいの男である。


「えっと……僕だって、君達の事を好きになってるよ!だけど、そーいうのは君達にも持って欲しいんだ!自分でそれを奪い去っといてね!!……確かにそんなもんがない方が、生物的には正しいと思うんだけれど!!僕達は人間だから!」


結婚とは、好きだけでやってるわけじゃない。

でも、可能な限りは。お互いを尊重し合えるという事は必要だし、そのきっかけを奪うようなこと。


「幸せになろうって、自分だけが思っていちゃ、ダメだった!!」


幸せにも色々ある。だから、8年間の選択だって間違いじゃない。通過点だった。そして、これからもまた同じように、幸せを捜して、その捜し方が幸せを感じるんだよね。人の生き方を感じるのだ。



「みんなが名前を思い出して!!気持ちをもっと伝え合える世界に!!僕は戻す!!だから……そんな僕だから!!みんなと付き合えない!だって、この8年間で好きになれた人達だから!!」



勇者は、ついに自らの力で世界にかけられた暗示を解除する。

あの時、魔王の真意がどうであれ、これも幸せだと信じたからこそ、残していた思い出だ。魔女への告白。仕方なく勇者になった自分。命を狙われ続けて大変だった日々。広大な土地を買って、子供時代に思っていて、食べるに困らない自給自足の平穏で静かな生活。自分のような人に構ってくれる人達との出会い。楽しかった日々は、そのままにして、次へ。




「”解” 全ての名前よ!!星より落ちよ!!」



この世界の名前の数々が隠されていた場所は、空。それもはるか上空にあった。



ヒューーーーーンッ



空から降り注ぐ七色の魔力は、本来の持ち主の元へと帰っていく。”名前”という在り来たりだったものに



ドーーーンッ


「イタタタタ…………!!あっ、……あああっ!!」

「お、思い出したーーー!!」

「どうして今まで忘れてたんだ!?」



8年間も自分達の名前を忘れて過ごした日々。



「マルク!そうだ、俺の名前はマルクだ!!」

「私はキャシャーヌだったわ!!どうして今まで、役職だったり特徴で呼び合ってたのかしら!?」

「おかあさーーん!あ、イリスおかあさーん!あたしね!おかあさんとおとうさんに名付けられのは、クリスだよー!」



世界中の人々が自分の名前を思い出し、自分の名前を叫びまくり、呼び回った。それは勇者達だって同じだ。



ドーーーンッ


「あああぁぁっっ…………!!あーっ!そーだ、あたしの名前はミチヨじゃーん!なんで村人ちゃんで反応してたのー!?」

「!……君の名はミチヨかー!あたしの名前は、安楽遥だよ!遊び人ちゃんでーす!!」

「ひ、東の方の国の名前だったのか、君。……私はAS・リストロッド・ファンクル・ニスターだ。……ニスターと呼ばれていた事を今思い出したよ」

「ウチはそんな長い名前覚えられないですよ!!ちなみに、ぜんが、ウチの名前でした!!」


この世界。数多くの色んな人達が仲良く暮らしていたのだった。


「サンシアですか…………いつかは太陽の下を歩けるようにと、名付けてもらったのを思い出しましたわ」

「……………ソウ。……あなたの名前を思い出せたわ。ソウ!ごめんなさい!!8年間も思い出せなくて!」

「ルチさーん!あたしも自分の名前と父上の名前を思い出せました!!あたしはミスキー・ヒュドランド・シグラー!!父上の名は、ライオット・ヒュドランド・シグラーです!!」


全ての存在の名前が解放された。


「好きって言ってくれない?……モーリーさん?」

「ええっ………いやですのぅ。……エリーさん。これからも儂はエリーさんを愛していいですかな?」

「もちろんですよ。モーリーさん、愛してますの方が嬉しいですわ」


それは混乱こそ生むも、争いになったものは数えるほどしかおらず、……みんながみんな。自分達の名前を呼び合い、愛情や友情、仲間意識などを噛みしめた瞬間であった。

8年間も、この世界で封じられていた、その名前は全て……解放されたのであった。



「………………」

「?どうしたんです?僧侶ー」

「……………………なんだよ、天使ちゃん」


その中で珍しく、不機嫌な奴がいた。


「天使ちゃん、じゃないですよー!もう!!あたしも、自分の名前を忘れていた事を思い出したんです!!そう呼んでくださいよー!」

「エスウィル…………いいよなー、お前等は」

「そうですそうです!!エスウィルがあたしの名前でーす!!女神様も勇者様の名前も聞いてみましょうよー!っていうか、僧侶の本当の名前はなんだったんです!?」

「…………………俺も完璧に思い出したわ」



おぎゃーおぎゃー


悠人はるとにしましょうよ!』

『いーや、拓斗たくとです!』

裕也ゆうやがいいわよ』

『寺院の子じゃぞ!それらしく、春雨はるさめとかな』


おぎゃーおぎゃー


『この子の才能を全面に出すべきです!才友さいゆうで!』

『いやいや!風龍と書いて、”ソニック”と呼ぼうよ』

『そんな変な名前をつけるな、千にも及ぶ家を束ねる事になる子だ、西の国の言葉にサウザントという名にしましょう』

『なんでやねん!!そんな熊吉くまきちでえーやん!』



思い出したくねぇー。

俺の名前って


『意見纏まらないのなら、全て繋げて、一つの名前にするというのはどうだ!!?』

『!!なるほど、それならすべての宗家の意見を取り入れていると、言えますね!!』

『そうねそうね!そうしましょ!!』


いや、俺の意見が入ってないと思うんですよ。



「どーして、僧侶は自分の名前を教えてくれないんです?」

「いや……………俺は、僧侶って呼ばれてた方が良いわ。慣れてるわ」

「はい?」



1000もある寺院の宗家の後取りとして、俺は生まれて。


悠人はると拓斗たくと裕也ゆうや春雨はるさめ才友さいゆう風龍ソニックサウザント熊吉くまきち………………なんちゃらって感じに、1000にも及ぶ名前を繋げて、俺は呼ばれていたんだわ。



『悠人ーー!!』

『どうして、そう呼ぶんだ!あの方は春雨はるさめと決めたであろう!』

『いーや、熊吉くまきちじゃーーー』


自分の名前のせいで、寺院達同士で喧嘩が絶えなくて……俺は家出して、記憶を封印した。


僧侶という役職で異国で暮らしてたところに、ソウとルチ達に勧誘されたんだ。自分の名前を聞かないという条件で……



『ねー、ねー、僧侶さんの本当の名前って何だと思う?』

『魔王城の近くでそれを詮索するのかい?』

『それは勧誘の条件に違反するよ』

『でも、僧侶さんならいいじゃん。それに僧侶って呼ぶ方が可哀想じゃない?』

『ぜってー、名門だよ。きっと、どっかの王子様だったとか?』

『どうかな~?もしかすると、変な名前をつけられたんじゃない』


そうだよ、あの時!こいつ等、俺の本当の名前を調べようとしやがったんだ!!あんなクソみてぇに長い名前がバレたら嫌だから、俺はパーティーから離脱を決意したんだーー!あれは建前だったーーー!!


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ