魔王だって娘の結婚にはショックを受ける~名前がない世界は戻るのか!?~
強さとしては、1抜け。
しかし、追従するのが3名。
魔王城への侵攻の、その2か月前の話になる。そして、それは天使ちゃんが勇者のレベルを100000へと引き上げてからすぐの事である。
おかしいと思わなかったのだろうか?どうして、こんな長い旅路を終わらせなかったのだろうか?勇者も魔女もその辺、気付いていたはずだ。だが、しなかったのには理由がある。
「白旗だ。どうか、見逃してくれ……」
「…………僕は勇者じゃない」
「いや、勇者である必要はないだろう」
なにより、未来から来た勇者が、魔王に対して、そんなに悪い印象を持たないのには、それなりの理由があったのだ。
「これ以上の戦争は、魔界の終焉だ。……我々は降伏だ」
「…………………それはその」
「君にお願いをしに来た!強さとは、数値にあらず!!立場にあるず!!その存在が持つ者だ!」
勇者ご一行が魔王城に着くよりも先に、未来から来た勇者は、魔王と出会っていたのだ。本当だったら、すぐに旅を終わらせようと思っての行動だ。しかし、魔王の予想外な対応に、話しを聞くという選択肢をとれた。もちろん、暗示スキルも警戒しながら魔王の話しという交渉を聞けたのだ。
なにより、大事だったのは
「娘がいる。戦争が終われば、娘への迫害は避けられないだろう」
「………………」
「我儘な魔王だ。部下達を多く犠牲にしておいて、自分の娘を助けようと……愚かな魔王だ」
「いえ、……立派な父親ですよ」
自分の娘を戦火に巻き込まず、その後のケアを含めてのこと。
魔王の話は、倒して終わりだろうとする、勇者の心に刺さった。戦争は終わらせられても、生きることは死ぬまで終わらないのだ。しかし、その交渉にレベルだけの自分の意見で決めるのは……?
「仲間に相談をしたい」
「いや、それはダメだ!止めてくれ!!」
魔王は、それが決裂すると分かっていた。勇者も口下手なため、相談が上手くいくとは思えなかったのもある。よって
「このような世界構築のプランになるんだが」
「ふむふむ」
白旗を上げておいて、なんだが……。魔王が提案してきた世界。よーするに、”名前”を失った世界について、勇者は聞かされたのであった。
「この強力な暗示の実情を知る者は、いないといけない。だが、私は死ぬ必要があるだろう。なら、君にしか頼めない!その世界は今の君にとっても、悪いことではないはずだ!……君を抑える上で、君の事を調べたよ。当然、勇者ご一行のこともね」
「……………その世界、僕にとっては平穏で良いだろうね」
本当だったら、誰も犠牲にならないで終わったはずだった。しかし、勇者の乱心を含めた、勇者ご一行でのトラブルなど……。
世界は思ったようには動かなかったのである。
◇ ◇
ドカーーーーーンッ
「ここが魔王城か…………」
もう1人の”未来人”が、魔王城の内部で起こるゴタゴタぶりを外から観戦する。しかしながら、どうして俺が行くねん?っていう表情のまま、目的のために魔王城へと乗り込む他なかった。
そして、未来から来た勇者は、かつて魔王と世界について密約した場所に辿り着いた。
「……来たか」
「魔王」
「……………ふふっ、レベル100000の…………」
魔王が未来から来た勇者と対峙するや否や、
「……え?大丈夫?瀕死になりそうな顔してるぞ……」
「ちょ、ちょっと無理してる」
ラスボス手前で回復イベントを用意させてあげたいくらい、心配になる魔王。魔界が降伏する理由となる、レベル100000を持つ者。それが瀕死の状態で現れ、様子もすこぶるおかしい事に察知できないわけもない。
そして、そいつはあろうことか、戦意が極めて薄いのだ。
「ぼ、僕はね、その」
勇者に流れている時間・状況と、魔王に流れている時間・状況が異なる。
そして、なにより。理解するよりも先に、魔族達にとっては、千載一遇の勝機とも言える展開だったのだ。それを高速で考え、身体を動かせるに至るのは、魔王たる所以。
弱り切った未来から来た勇者を前に、魔王は、自分が約束したことも破るに値すること
ズバアアァァッ
それがあまりに簡単だったことを含め。
このレベル100000の勇者があまりにも弱り切っていたのは事実。次の言葉にも嘘はないのだ。
「ふん!娘を護れぬ者になったのなら、お前など要らん!!」
「…………っ……」
「事情は分からんが、一番強いお前はここで死ぬ。そして、仲間を連れずにやって来た愚かな勇者もここで死ぬ!強大な戦力が、その個性を殺して2人もやって来るとは!!人間とは愚かなり!!」
話しあえる相手だと思っていただけに。魔王の思考があまりに早く、それで的確だったことにもぐうの音も出ない。
「魔族の時代は再び来る!!名前のない世界!!それは全てのエゴを無くせる世界!!」
「っ…………そ、そうだね」
「貧困を過ごしてきたお前には、それがどれだけ望んでいた事か。分かっていただろう!なにも疑わず、ただ今日を生きていく、凡庸な幸せな日々!!だが、」
そして、それは確かに人間達はそうなっていった。魔族側からすれば
「エゴなき世界になれば、……人間は己の価値を理解できなくなり、滅びゆく!!魔族達のように本能と欲望に飢える持つ者が、生き残る世界になるのだ!!その頃には、私もお前も死んでいるであろうがな!魔族としての誇りを持つ私が勝つ!!」
「!!………………」
長期的に見れば、人間達を大きく弱体化させられる手段。数多く魔族が失われると思ってはいるが、怨念となって、魔界に残るであろう。逆に人間達は統制がとれなくなり、内部から崩されていくだろう。たった一人の、変わった奴の幸せの為に
「しかし、そんな世界にならずとも、お前を殺せるのなら娘も助かり、人間共を根絶やしにできる!!それこそ、魔族の平和なのだ!!死ねぇぇっ!」
魔王が持つ槍が、未来からやってきた倒れる勇者に向けられる。未来人が、過去の存在に殺されるなんてこと。よくある事かもしれない。過去の行動が果たして善だったのか、それとも悪だったのか。立場になってみないと分からない。
ともあれ、言えることは。この世界の勇者は、瀕死になっているこいつじゃないのは事実だ。
バキイイィッッ
「勇者はこいつじゃない!!俺だ!!」
「!!っ」
「!ば、バカな!!」
この状況で乗り込んで来たのは、ここの勇者であった!魔王の槍を止め、戦闘に入った!その出来事は未来を知っている、勇者からすれば、不可解ではあった。当然、魔王からしてもだ。
「なぜ横槍を入れた!?お前は、この男に強い恨みがあるだろう!!死んでからでも良かったじゃないか!!」
「あるさ!!強い恨みがある!!こんな奴がいるから!!……俺は、……俺はホントにあいつと一緒に、過ごしていいのか、分かんねぇ!!だがな、本当の仲間を見捨てるような奴が!あいつと一緒にいて良いわけがねぇ!!」
バキイィィッッ
ここの勇者と魔王の戦いは、ほぼほぼ拮抗。少しの間だけであるが、しかし。
「事情は知らないが!こいつは未来からやってきた!!……仲間を見捨て、1人で魔王を討ち取って、俺は……こいつを超えてやろうとしたのに!!時間を超えてまで、ここに来たんだろ!!」
乱心こそすれど、その理由を前向きに考えられる勇者。
「!!未来から来ただと!!……ならば、今。世界は変わる瞬間か!魔王と勇者の激突には相応しい!!」
そして、未来から来たという事を知り、魔王だって想像を超えている状況だと分かった。
この2人の決着 = 未来が変わる瞬間に違いないのだ!
瀕死となっている未来の勇者が見守る中
「「うおおおおぉぉぉぉっっ!!!」」
両者は
パシィッ
「悪いけど、あいつはお見合いをやってる最中なんで。あいつの元彼さんと、お父様にはご静聴して頂かないと困るんですがね?」
「「…………え?」」
突如、割り込んで来た者によって、……右手で勇者を、左手で魔王を止めてしまう。
「そ、僧侶…………」
未来の勇者だってビックリしている。だって、自分と同じ、未来からやってきた僧侶が。この場に割り込んで来たのだから
◇ ◇
「8年前の魔王城!?」
勇者が過去に跳んだわけで、みんなから時間と場所を尋ねられるのは当然だった。
「はい、父上が生きておられて、謁見できる時はそこかと」
「か、簡単にやってのけないでよ」
魔女からすれば、思った通りというところもある。勇者がこんな瀕死な状態で、魔王城に飛ばされたとあっては、無事で済むとは思っていない。彼女なりに心配しているし、僧侶の言われた事を気にしている節がある。とはいえ、魔王城か…………
「僧侶!!あんたも過去に行ってきなさい!!」
「は?なんでだよ……」
魔女の言葉に当然のように、嫌な顔をする僧侶
「あんた、このお見合いの立会人でしょうが!!」
魔女が行ければ、自分が後悔している全ての事を解決できると思ってはいたが。それをするというには、今では時間が足りな過ぎる。だったらなんで勇者の命をここで獲らないのか、そーいうのお話。それに
「私は魔王城に向かってる。過去の私と出会ったら、どうなるか分かったもんじゃないわ!」
「理由捜すのはうめぇな。ホントに独身女だぜ。そーいうとこ」
ドゴオオォォッッ
魔女なのに、暴力を振るってきたよ。この人。確かに僧侶の言葉が悪いけれども……。とはいえ、それくらい言ってやんないと、せっかくの機会を潰しやがった、僧侶の面子も持たないか。
「はい、行ってくるように……」
「いで~~……いや、俺はそんなことする気ねぇーっつーの!」
「いや、僧侶さんしかこの場で行ける人はいないぞ!魔王城近辺に行くわけだろう!」
「強い魔物がうろつく場所に、女の子を飛ばす気ですか!!」
「そうです!勇者様が世界改変したら、……私達、お金をもらえない可能性があるという事です!!」
「勇者ご一行のお一人なんでしょう!!」
僧侶は乗る気がなかったのだが、魔女を始めとする、勇者と交流した女性達からのお願いに
「それからあんた、魔王城直前でパーティーから離脱したんだから、……過去の自分に会う心配はないでしょ?」
「……ちっ……………分かったよ。ただし、俺はあくまで行くだけで!お前の……」
「ついでに言ってきて。私が、今でも待ってるってね。……ただ、……もう引き摺ってないってね?」
…………なーんか、要求多くねぇ?サラッと言いやがったよ。
僧侶はため息をついてから、彼として、
「お前等が規格外だから、パーティーから抜けたんだぞ。今更、俺の良さに気付いて頼るんじゃねぇよ。テメェ等。世界を自由に変えてやっからな」
「…………ふふ」
こうして、僧侶も魔王の娘の力を使って、過去へと向かったのであった。終始荒い言動があったこの場において
「妃様は宜しかったので?ご子息にお伝えしたいことはないのですか?」
「私は、我が子を勇者にすると決めた時点で、今生の別れは済ませているようなものよ」
「さ、さすが……儂なら絶対生還してくれって、懇願してます」
妃様は終始冷静であった。どんなやり取りをしようが、過去が変わってしまえば、これまでの事は忘れてしまうということ。
「今は魔女と同じく、気分が乗らないわ。せっかくだけどね」
過去を変えられるといっても、自分の身体が若返るとかではない。良い側からすれば、過去改変などやるべきではない。そして、それを止めなかったのは、結果を受け入れられるつもりだからだ。
「ちょっとー、また、大きな魔力の波動を感じたんだけれど?」
「あら、五月蠅いのが来たわね」
「ご説明くださる?」
僧侶が過去に飛ばされたタイミングで、やって来たのは女神様と……
「天使ちゃん、大丈夫!?タンコブだらけだよ!」
「う~~っ……痛い……」
女神様に鉄拳制裁を喰らった天使ちゃんであった。
「僧侶も一緒に過去に跳んだわ。8年前の魔王城へ。私達はただ待ちましょう」
「いや、止めなさいよ!!あなた!過去改変がどーなるか、分かってるでしょ!!」
「そうだけれど、私はそーいう気分じゃないの。……勇者を殺さないだけ、ここにいるのはマシじゃない?……それともなにかしら?言いたいことがあった?」
「当然じゃない!!8年前の魔王城って言えば……!!あーーーーっ、名前を取り戻す前の世界じゃない!私が行くべきだったわ!!天使ーー!あなたを叱責してたから、できなかったじゃない!!」
「あたしのせいですか!?過去改変がダメって言いながら、自分がする気満々なんですか!?」
天使ちゃんにツッコミを入れられるくらい、女神様も焦っている。魔王への伝言なんかに、そんなスキルを使わないでくれって言いたいくらいだ。
「そもそもあの”スキル”はね……」
それが女神様の運命なのかもしれない。とても焦っていたのは事実であり
「どーいう目的だったのかしら?その”スキル”」
妃様の興味が勇者ではなく、この女神様の……もとい、彼女が元に戻したかった理由に向いていたのは言うまでもない。
「その”スキル”の真の目的は…………」
◇ ◇
「え~~~っ、特にお二人共。……この場では、大人しくしてくださいよ~~。俺がこの場で、一番強ぇからなぁ」
8年前、なにが起こったのか。その詳細をまさか自分がやるとは、思ってもいねぇよ。
勇者がやった事だと思っていたのに、……実は俺でした!
レベル100000の半分の力を使ってしまえば、疲弊した3人を無力化する事なんて容易い。
勇者達と魔王の3名を正座させてのこと。
「俺とこいつは、未来からここにやって来たのは、……こいつのお見合いをセッティングして、成婚まで導く、俺のお仕事のためなんですよ。魔王の討伐とか、勇者を助けに来たとか、そーいう目的じゃねぇーんだよ」
「「「「は、はい………」」」
……なんか、結婚できない弱者男性の理由を言われているような、そんな気分である。
事情を良く知っている、未来の勇者からすれば
「き、来てくれてありがとう……心配かけたんだね」
「俺は、来たくて来たわけじゃねぇーんだよ!なんで、お前のために、こんなことまでしなきゃいけねぇーんだよ!!お前、現在の時間軸に帰ったら、絶対に女を選べよ!!結婚しねぇと許されねぇからな!!」
僧侶が心配という言葉を使うわけもない。
現在に戻りたくないなーって顔になってしまう。
「ま、まさかパーティーから外れた僧侶も、未来人としてやってくるなんて……というか、なぜ、俺の知り合いばかり……?さらにショックなんだが……しかも、俺達よりもはるかに強くなってるなんて……」
そして、この世界の勇者。言ってしまうが
「8年後の世界はどーなっているんだ?」
しっかり言うと、気になってしまう言葉を使ってしまう。未来の情報を届けるというのは、それだけ禁忌な事であるにも関わらず。僧侶はもう知ったこっちゃねぇと
「テメェは元彼になってるぞ。今、こいつとお見合いをし終えた後だ」
「ぶーっ!ちょっ!事実だけど!お見合いをしたのは事実だけど!」
上手くいかなかったよって、2人共言えばいいのに、そこのところは黙っている辺り、すげー嫌な2人である。とはいえ、魔女からの伝言は言ってあげる。僧侶の言葉になってしまうが
「今でもお前のことを思ってるが、もう引き摺ってねぇから婚活するってよ」
「えーっ…………」
詳しく語らないが、それはつまり。魔女と彼は結ばれなかった事を伝えているに等しいモノだった。どんな理由かなんて、この状況では分かるわけない。しかし、すぐにハッとし
「そうだ!父上や母上は俺になんと言っている!?結婚について!!」
「僕には結婚しろって……」
「二人共、お前にはなんも言ってねぇーぞ。言うことなかったのかもな」
ガーーーーーンッ
8年という歳月がどれくらいのものか分からないが。
「なんだよそれー……俺は、一体、どーなったんだよ」
正式にお付き合いしていた魔女とは、上手く行かず、挙句の果てに魔女は別の男を捜しているし。両親は興味なし、みたいな反応……。
いちお、妃様はかなり悲しんでいたけれど。それ言うと、完全にお前がここで死ぬのが分かってしまい、未来が思わぬ方向に変わるからな。さすがに言うわけにはいかねぇよな。
俺は助ける気ねぇーからな。
「ふ、ふふふふ。人間達なんて、所詮はエゴが原動力だ……それはそれとして、……私の娘は未来でどーなっているのだ?」
次に魔王が未来の様子を尋ねたわけだが
「お前の娘ならそいつとお見合いしているぞ」
「お付き合いを前提にって…………」
ビリリイィィッッ
「娘に男だとーーーーーっっ!認めんぞ、お父さんは!!!母を早くに亡くし、1人で育てた父親になんの相談もなくーーー!!」
「いや……(お前もここで死ぬから、実質、あの子はお前の部下に育てられてたけど)」
「その……(言わない方が良いよね。あなた、父親ってだけで、あんまり子育てに関わってないよって)」
大混乱して、頭を打ちつけて記憶が無くなれと願う魔王。そこで本当の未来人が現れた時の台詞のように
「っていうか、こいつと!!?嘘をつくな!!だったら、言葉じゃなくて、8年後の娘の様子を見せて見ろやー!!できるわけねぇだろうがな!!」
未来の姿を見せろという。それにはさすがに勇者といえど
「できるけど、……僕とお見合いしてる姿だよ。”メルピグ”で脳内に情報を送りましょうか?」
「えええーーーっ!?できんのかよ!!」
「ちょっと待て!だったら、あいつの8年後の姿も俺に見せろ!!」
こんなところで、遊び人ちゃんのスキルが活きるとは。未来から来た証明には良いスキルであった。
そして、その姿が2人に渡され
「うひゃあああぁぁっ!!私の娘、超可愛くなってるーー!サキュパスっぽいのが怪しからん恰好ですけど!!」
「可愛いなー、あいつ!これで8年間も俺の事を思ってくれてるのかーー!!絶対に帰還するからな!!結婚しよう!!」
喜んでいる2人であったが、……すぐに現実に帰ってきたかのように魔王は叫ぶ。
「つーか、この未来はどーいうこと!?娘の事を護れと交渉はしたが、結婚しろだなんて、一言も言ってないんですけどーーー!!なんでこんな格好でお前とお見合いなの!?……はっ!!」
そりゃあ父親としても、頭がバグるだろうし。魔王としての威厳もバグるだろう
「というか、魔王の娘が勇者に〇かされるだとーー!?魔王と父にどんな尊厳破壊をさせるんじゃ!!」
「お見合いだって言ってるだろうが!なんで行為にまで解釈してんだ!」
「そ、そ、そーいう………ことに、なってないよ。僕……」
お見合いという名の
「命のやり取りばっかりで……」
「「命のやり取り!!?」」
勇者と魔王のダブルパンチが、未来の勇者に直撃する。
「あ、あいつを未来で”NTR”したのか!?」
「クソガキァ!!娘にどんな迫り方したんだーー!」
勘違いしてもしょうがないが、それは殺される方の命のやり取りである。決して、命を作るような、やり取りではないのである。
「はいっ!!大人しくしろ!!」
僧侶の一喝で、勇者と魔王の激怒は止んだ。それと、僧侶は
「そもそも俺とこいつが、未来からやってきたのはな。お前の娘のせいだ」
「わ、私の娘が!?……そ、そうか!あの時、天界に忍び込んで得た、禁断のスキルのいくつか。その中に”過去改変”なるスキルがあったような……」
魔王が強力なスキルを作り上げたのは事実であるが、それを元にしたのは、天界……つまり、女神様や天使ちゃんなどが住んでいる世界にあった技術を、参考にしていたのだ。
それは名前を失うことに至る、スキルも含めてだ。
「娘さんから父に、……元気ですって、伝えて欲しいと」
「それは交際を認めろっていう意味でか!?」
「いや、全然違いますから!!個人的に!娘さんは、8年後も生きてるって事です!!」
お見合いやらの話しをした後で、娘が父親に対して、元気にやってるなんて言ったら……絶対に別の意味と勘違いするに決まってるだろう。
ともあれ、これで……
「そ、そうだ!魔王、勇者……せっかくだから」
「む?」
「そういえば、どうして2人は名前で呼ばないんだ?さっきから……」
みんなが伝えて欲しい事は伝えた。これからは勇者が過去に伝えたい事だった。
「名前のない世界は、確かに僕の幸せな一時だったよ」
「そ、そうか…………であれば、その世界に導いたのだな」
「その時に、魔女と喧嘩もしたけど、仲直りもできた」
「むっ……でも、俺は許さないからな……”NTR”なんて」
8年間。ずっと知っていた上で、その世界の中で生きて来た、者。
「僕が休むことも大事だけど、やっぱりいつかは前に進まなきゃね!僕が幸せでも、みんなが幸せになる世界に向かって、歩いてみるよ!!」
勇者と僧侶に対し、白い光が差し込んだ。そして、身体がゆっくりとフェードアウトするようにこの場から消えていくのである。
自分達の役割を終えて…………!




