歴史を変えて世界を救え!?~勇者の魔王城突撃の真相!~
ドヒュ~~~~~~
禁術に入るスキル。
それらは規制なり、忘却なり、……様々な手段で、世界は禁じたのだ。なにせ世界が壊れてしまうからだ。ルールなんてあったもんじゃない。
「そもそも、ルールは知識を持つ生命体が決めた事だよね。法律とか」
過去に飛ばされている最中に、勇者も考える。
人の事は言えないけれど、
「魔王も何やってんだか」
娘がこんなスキルを持っているのなら、ある程度の対策をとるべきだろう。勇者は魔王が娘を護りたかったという気持ちを汲んでやっても、このスキルはどー考えてもヤバ過ぎる。
精神状態だけが過去に飛ばされる、とすれば精神操作の上位種のスキルに値するが。勇者自身、肉体と精神がそのまま、過去に向かって飛んでいるのを理解している。
……となれば、今の肉体はどうなっているんだろうか?
「指定された過去につかないと何もできないね(時空の中で下手に動くと、何が起こるか分からないって魔女も言ってたし)」
◇ ◇
「勇者様。……父上に、あたしのことを伝えてくれ」
魔王の娘ちゃんにとっては、その思いしかない。しかし、
「「「過去改変をそれだけのために使うなーーーー!!」」」
魔女達がブチギレて、お見合いの部屋に乗り込んでいくのが分かるくらいには、魔王の娘ちゃんはぶっ壊れスキルの持ち主である。
「勇者様、白目向いてますよーー!!」
「意識ないってば!!死んでるの、もしかして!?」
「しっかりしてくださーーい!」
村人ちゃんや遊び人ちゃん、女武術家ちゃんが勇者の身体をゆすりながら、呼びかけるのだが、反応なし。というか、心臓すら動いていないような……?
「今なら爆殺できるかしら?」
「妃様!!それはいけない!過去改変中の対象者を殺してしまうと、時空が対象者を除外し、歴史改変は予測不能になり、私達もいなくなる可能性が高い!!」
「魔女さん!もっと分かりやすく!!」
「この世界から勇者は生まれてない事になる!……それでも、ま、いっか!!」
口だけの冗談にすませる魔女ではあるが……。
過去改変中に、さらなる介入は危険だと示すには、十分過ぎる説得ができる人。それすらも因果関係の決まりだろうか。
「……よーは、勇者は時期に意識を取り戻すんだろ?魔王の娘ちゃんのお願い。自分の状態を父親に伝える。そのおつかいを済ませたら、勇者の意識は戻るんだろ?」
立ち合い者だけあって、僧侶は冷静である。もちろん、勇者が帰還した際に。なんらかの成果やミスによって
「俺達の存在はどっちにしろ、なんらかの変化を受けるって事。それが大袈裟じゃなきゃいいよ」
「僧侶!!あんた、過去改変がヤバイの分かるでしょーが!!落ち着くな!!自分がいきなり意志や立場を180度変えたりするのよ!!全員、……世界全体が変わってもおかしくない!!」
その目が良い方向に転がることだってある。
ここにいる大半の者達は、良い側ではあるが……。悪い側にとっては、何も知らずに奇跡の大逆転もあり得る。嫌な世界が変わることも十分にある。
そんだけ嫌がるって事は
「お前等もそれなりに受け入れてるって事だろう。現状」
「「「そーいう解釈にはならんでしょ!!」」」
……過去改変なんてやり方があるなら、やっぱりピンポイントに使いたいものだ。
「しかし、僧侶さんの言う通り。皆、落ち着いて、覚悟を決めた方がいい」
「そうですわね。勇者様がそれで無くならないと、皆分かっているはずです」
商業娘ちゃんとお姫様の2名は、勇者を気に掛けつつも俯瞰的な対応ができる事には、決して長い付き合いでなくても得られた信頼があった。
◇ ◇
「ねぇ、天使……」
「なんでしょうか?」
一方、魔女達が一気に駆け込んだかに思えたが、……天使ちゃんと女神様は二人きりで待機室にいた。彼女だって今知ったのだ。
「魔王の娘ちゃんが、過去改変のスキル持ちだって……知ってたのかしら?」
「え?知ってましたけど?」
「……どうして、禁止に値するスキルを、私に報告しなかったのかしら?」
「別に報告する必要はないと思ったから」
世界を気にしているからこそ、そんなヤバいスキルが発見されたら
「すぐに報告しなさいよーーー!!一生懸命、お見合いしてるのが、バカみたいじゃない!!」
「まぁまぁ、落ち着いてください。魔女さん達と意味合いが違う感じに聞こえるし」
人間達よりも長生きという点から見ても、そんなのを恐れる天使ちゃんではない。それに
「魔王の娘ちゃんの歴史改変は、そんなに強い効果じゃないですよ。あたしも体験したけど、ホント微々たるものです」
「どのくらいよ」
「ジャンケンの勝敗を書き換えたり、くじ引きで絶対に当たりをひけるとか。歴史を大きく変えるなんてこと、天使ちゃんくらいじゃ何もできませんよ!」
実際のところ、並の人間に使えば、ホントに微々たる歴史改変しか起きないそうだ。日にちを指定する、未来を思いのまま変えられる。そーいった類は、一般人では不可能なのだ。
対象を必ず選ぶ必要があり、魔王の娘ちゃん自身は、思いのまま過去を変えられないという欠点があって、トントンのスキルと言える。
だったら、なおさらで
「勇者様が過去に行ってしまったけれど、問題がないわけ?」
「あ~~、8年前の魔王に会ってくるだけですしね。普通の人をメッセンジャーとして、行かせたこともあるらしいけど、結局意味なかったとか。魔王と渡り合えなきゃ、謁見すら難しいですからね」
「その謁見が容易な人が、過去に行ったんだけど?」
「あはははは、じゃあ、魔王の娘ちゃんのお願いはすぐに叶いますね」
「いや!それって、過去が変わる可能性が高いじゃない!!」
ドゴオオォォッ
女神様は天使ちゃんをボコボコにするのであった。
◇ ◇
シュタッ
「……………!ここは魔王城か……ホントに過去に跳んで来ちゃったよ……」
時空を跳び超えてやってきた勇者。降り立った場所は、自分もこの場所にやってきたことのある場所。まだ綺麗な状態の魔王城である事で、ここが本当に8年前だと理解した。
そして、
「っとっ…………」
お見合いという名の死闘の連続。体調が万全でない状況のまま、過去にやってきたという現状。ここらへんも改善してくれよって、表情を作りながら
ガサアァァッ
「まいったなぁー……今の僕は、過去の僕と会っていないんだけど」
すぐに魔王城の近くの森林に入って隠れる勇者。彼の言葉の通り、未来の自分に会った事はない。つまり、それは未来を変えてしまう大きな出来事であると同時に、お互いの死もあり得る事は分かっている。
未来に生きる者達は、自分の存在を知ってはいけない。その辺のルールを知った上で、魔王の娘ちゃんがお願いした事。なんとなく気持ちは汲み取るが、
「僕、戦闘以外はちょっと…………」
勇者にはあまりに不向きな依頼だ。
未来で、娘さんは元気にしてますよ。……そう伝えればいいんだろうけど、魔王を知ってるだけにちょっと危うい気もするし。何より未来からやってきたなんて事、普通に信じられないだろ?
しかし、それをやらないと現在には戻れないだろうし、ここに留まるなんて選択はまずない。条件をクリアできなかった時。それは死よりも恐ろしいとも分かっている。
時空を彷徨う亡霊みたいな感じに……
「それはちょっと良いかも……」
勇者の性格からして、その方が穏やかに過ごせるのかもしれない。確かに死んだらどーでも良くなる。
ともかく、やる事は魔王に会って、娘さんが8年後も元気でいて、自分とお見合いをしていると伝えること。戦闘になったら止む無しだが、これで条件はクリアされ、現在に戻れると思っている勇者。
条件を設けての過去改変と、魔王の娘ちゃんのスキルを分析した。
「お、おい………」
「して、困ったねー」
「お、お前は……そ、そんな……まさか……」
「どうやって、魔王に会えば………!!」
状況が状況だけに、自分のみにしか意識が行かなかったからこそ。こんな近くに、同じ存在がいるとは思っていなかった。
振り返ってその顔を見た瞬間。彼の顔が想像以上に引き攣っていて、やり場のない怒りを持っていると分かるくらいには、震えが現れていた。そして、まだ何も言っていない勇者に対して、その言葉を的確に言える存在であり、そして言ってのける。
「お前が『未来から来た、勇者』だな」
「!!!!」
お互いに自分の事を知っている。
「……やっぱり、お前だったんだ!!お前が……」
「ゆ、勇者……いや」
〇〇…………
「!」
まだ、この世界は名前を失っていない。だから、名を呼ぶことができた。そして、認識もできていた。しかし、そんな未来を知らない相手の勇者からすれば、……そう。自分が、この苦しい思いをしている相手が、自分のスキルの最高峰の到達で出会えてしまう存在だったなんて、余計に自分の存在は………
「いつもいつも、お前は……俺の…………俺のことを……」
「ちょっ!!待って!!」
ドゴオオオォォォッッ
…………それは確かに、そのスキルの最高峰だ。
彼は言う。
「”邂逅”の頂き。それは、”未来人との遭遇”。歴史を変える偉人にのみが許される出会いを作る」
「っ……………」
「それがどうして、またお前なんだよ!!俺の人生を苦しめたお前が、……未来人として、ここにいるんだよ!!認めてたまるかぁっ!!」
「勇者……おかしい事を言うけどね」
ここの勇者の蹴りは、未来から来た勇者の身体を吹っ飛ばし、状況を把握していないこととコンディションが整っていない事も相まって、その勢いのまま、森林からラスボスが控える魔王城の外壁までぶっ飛んだのだ。
自分がレベル100000だって言っても、向かい合う勇者も魔女と並んでいた存在。
「やばっ」
ここで誰よりも冷静になる事が大事であり、自分の知っている状況を鑑みて、未来から来た勇者がとった行動は……この状態で魔王城に潜入するということ。未来から来ているため、この魔王城の作りも知っている。しかし、
「侵入者です!!魔王様!!」
「勇者一行がここまでやって来た模様!!」
魔王城に警報が鳴り響く。そして、勇者はここで気付くのだ。
現状の、本当の元凶を
「そ、そっか~……僕が未来から来たから、ここの勇者が魔王城に1人で乗り込んだのか……感情のままに……」
1人で魔王城に向かったのは、本人の意志なのは確かだ。しかしながら、魔王城へ無謀な突撃をしに行った。その理由については、自分は憶測でしか思えなかった。
いやまさか、未来から来た自分が、その引き金になっているとは……思ってもいなかった。
「魔王も!!お前も……ここで!!決別してやる!!」
「ちょっ!!あなたと戦うつもりはないんだ!!僕は魔王に用があるだけ!!……って、それはあなたも同じか!!」
ど、どうする!?どうするべきなんだ!?
今ならあなたを救える可能性がある。だけど、魔王に逢って説明しないと僕は現在の世界には戻って来れない。この乱戦の状況で、僕や魔女達があとから魔王城にやってくるんだ。制限時間もそれなりにある!ヤバイ!!世界の全てが変わってしまうぞ!
バリイイィィッッ
魔王城の内部を荒しつつ、そこに住まう魔物達と乱戦しながらの状況。
「どこに行った!?」
魔王城の内部を知らない事と、魔物達との苦戦からして。未来の勇者を見失った、ここの勇者。すでに魔物に囲まれている状況となり、一方で未来から来た勇者は、戦うことよりも逃げることを重視しつつ、魔王の居所を探った。
「早く条件をクリアして、元に戻ろう!」
しかし、それは即ち、魔女達を悲しませる結果へと繋がるのである。その判断は果たして、本当に良いのだろうか?
◇ ◇
「ついに来たか、勇者ご一行」
侵入者の報を聞き、魔王は
「お前だけはなんとしても、……命を護らねばならないな」
我が娘を抱きかかえていた。その温かさは、もう、味わえないだろう。それが分かっていたのは、先の報告からも分かっていた。
あまりに、レベル100000のあいつが、強すぎるのだ。魔王軍、総出でも勝てないと分かっていた。
「パパー……………行かないでー……」
「心配するな。パパはお前を必ず護ってみせる」
それはお互いに忘れてしまってもだ。それが真の親というべきだろう。
「実はな…………」
ここで魔王から意外な事実を聞かされる、魔王の娘。父親からの言葉を知って、そのことを未来から変えようとしていたのだった。




