長く思いを込めた告白は直球勝負!~死ね~
”邂逅”したのだ。
それをたまたまとするか、運命とするか、
「今日からよろしくお願いします」
「こ、こ、こちらこそ。私なんかをお招きくださり感謝いたします!……〇〇様!!」
それがあなたのスキルだとしても、私は、あなたという存在が選んでくれたのだから。
まだ知らぬ恋や愛に落ちても良いでしょう。
ですから、精一杯の努力であなたのためになります。
”勇者ご一行”
かの王国の妃様が発令された、魔王討伐隊。……という名の、各国の優れた人材の発掘事業。
その第一期に選ばれた魔女は、自分が決して秀でいるわけではなかったと自覚している。
なにせ”第一期”という肩書。試行錯誤という過程である。
現在において、この第一期メンバーの生き残りは……魔女、ただ一人である。
さらに言うなら、魔王討伐直前まで生き残っていたのは、魔女とその魔女の思い人だけであった。つまり、真に優れた人材を発掘できたわけではない世代なのだ。
そーいう意味で、その次世代。
勇者と僧侶などの人材と比べれば、実のところ、1段は落ちると魔女は思っている。
勇者の存在は特に彼女にとって、そう思わせている。
ことスキルに関しては、自分よりも早く、そして、今だってギリギリに並び立っていると思うからだ。
◇ ◇
「な、なるほど……そーいうことなのですね。これが恋の始まりですか……」
お姫様が危険なスキルを持っていても、そんなの気にしないよって感じにフレンドリーにできるのは
「そうですよ!!好きになるって気持ちは、身体がくぅぅ~って、熱く締め付けられる感覚!!お姫様は今、恋を知ったのです!その気持ちをまた追いかけたくなるのが、乙女の心なのです!」
遊び人ちゃんと
「ゆ、勇者様がそーいうのなら、これからも未来が楽しくあるはずです!」
女武術家ちゃんの2人である。遊び人ちゃんは色々な男を知っているから、ノリノリにお姫様がまだ整理つかない心の様子を、ある意味的確に教えている。
「勇者様が好きならそのままでいい!でも、もっといい男がいる事もある!!あぁ……あの人よりあの人よりもっていう……強欲な、女としての上昇志向が!!自分の幸せを作るのです!!」
「もっと強い奴に会いに行く!!っと、同じなんですね!筋肉を鍛えると同じなんですね!」
「獅子のような男ならそーだね。ともかく女はもっと、良い男を欲して選ぶのが永遠の理想です!!」
「べ、べ、勉強になりますわ……これを機にお見合いをいくつか、受けようと思います……。こ、こんな感情、また出会いたい」
女性らしさというか、女性の欲望が詰められたような話で盛り上がる3人に対し
「さすがに男性への妥協もした方が良いと思いますけど……お姫様は金があるから、勇者様と不釣り合いと言えば不釣り合いな気がしますが。ねぇ……」
「村人ちゃんと同じ意見だな。私は勇者の事は気に入っているぞ。あくまで、ビジネスパートナーとしてだがな」
「そうですね。友人としてなら使える人間です。送り迎えをタダで引き受けてくれたり、おすそ分けをしてくれそうな、都合の良いカモのような男です」
女性としての冷ややかな反応でいる、村人ちゃんと商業娘ちゃん。恋愛対象という意味では、勇者の事は外れているが、……冷めた恋愛の果てを結婚とするなら、勇者の選択肢はギリ入ると言ったところ。お互いの一致で結婚するのと、お互いの足りない部分を補うのが、結婚とするか。
悩ましいところである。
そんな盛り上がりをしているところで、
勇者が唯一、感情を人に対して持っている相手。
一致すること、補うこと、……そして、自分を理解してくれる存在であるか。
ガラララララ
「!!わぁ……」
勇者 と
「……久しぶり」
魔女のお見合いが開始されるのであった。
魔女のその姿。選ばれた服は、とある国の、着物と呼ばれるモノであり、ちょっと大きいけれど、魔女の足りないところを補ってくれる華やかさ。
「可愛い、です……魔女」
「!……………」
座る前に、魔女の姿に、勇者が一言。本心なのかお世辞なのか分からないが
『こいつがそんなことを言った!!?』
魔女は自分と同じくらいの変化を知り
「勇者様がそんなことを言ったーーー!!?」
「ひ、人の容姿を見るタイプに見えんのにな……」
「ひゅーーー!!いいぞー!勇者!!」
「魔女さん、ポーカーフェイスもいい!」
あの勇者を知る面々にとっては、とんでもねぇ発言を聞けたと……。失礼ながら、ドン引き要素が込められた反応をする待機組である。
そして、魔女は天使ちゃんの言う通り、内心は驚いているけれど、ポーカーフェイスのまま。
「ふーん……見る目を養えたってところね」
「そ、そうかも……」
座って対面する両者。お互い、昔を知っている以上は話を咲かせてくれるであろう。立ち合い者である、僧侶の推薦もあって
「お互いに思い出話もあるだろう。ゆっくり話すといいし、なんなら俺は退席しようか?」
「「ちょ、ちょっと待って!僧侶!!」」
冷静さから焦りのような声と共に、息が合う形で僧侶を止める2人。確かに僧侶のスキルに偽りなく、この2人の相性は凄く良いのは確定している。こんな風に言葉が合うのは、8年という月日が経っても、根っこは変わりなく、絆は残っている。
「こ、ここはね。久々に勇者ご一行の面々なわけで……思い出話をしてからにしましょ」
「そ、そうだね。僧侶も話したいことあるんじゃない?僕達と旅をしたじゃん」
いや、お前等が凄すぎて、劣等感ばかり感じていたと……僧侶は自分自身。こいつ等について来れなくて、途中離脱した身。だが、話しのきっかけは作っておくのが責任か。
「勇者を拾った時の気持ちなんてどうなんだ?」
「ひ、拾われたんだよ。僕は」
「猫みたいに言わないでよ!……まったく」
とはいえ、僧侶の振りを理解したって事で、魔女の方から……あの時の勇者を思って。
「ホントに成長したわね。最初は弟みたいな奴って思ってたけど、今は立派な男になってると思うわ」
「魔女」
照れくさそうに、そして、早口に勇者を褒める魔女だった。
彼女から見て、勇者の印象は変わっていないという事だ。
「魔王軍の侵攻を相手に、1人で立ち向かった。とっても強い男の子がいるって噂を聞いて、向かってね。どんなに恐ろしい奴かと思ったら、お肉欲しさに魔物と戦ってる面白い奴」
魔物にも食用タイプなどもある。気に入った食料を欲しがるタイプで
「昔はありふれていた魔物達が、あなた1人で絶滅に追い込むくらいやっちゃうとはね」
「そ、それは…………美味しくて……高値で取引されてて……」
「並みの魔物狩りの人達が束になって戦う危険な魔物達よ。危ないってもんじゃないのに、その身体1つで飛び込んでいく。嬉しそうにする顔でもなく、命の危険を感じるような顔でもないし、でもどこか必死な顔。……それがね、あなたの良いところだった」
裕福な出というわけではなく、だからって弱いわけじゃなくて、……魔女と似たところは
「勧誘の声をかけた私は、あなたに好印象を持ってたよ。どうあれ真剣な奴だなって」
「!……そ、そうかな。……僕、苦手に思ってたよ。最初」
「あらそう?誰でも気にしてたのね」
当時を振り返れば……。どうして、自分がこんなことになるのか、想像もつかない。なにせ、家もなければ、飯もないし、お金もない。周りは今日を生きるために必死な人達。
「生き抜くには誰よりも強くなるか、誰かに縋るか、誰かを騙すか」
意志を自覚した時。自分がどうしてか知らぬが、魔物に怯えず、むしろ挑めていたというのを幸運とした。周りにはなかった、誰よりも強くなるを最初から持っていた。だから、残り2つをとらない選択をしていた。それは
「けど、魔女達は僕のように強かった。初めてだった。嬉しかった」
気持ちが分かりそうなこと。勇者の中で、そーいうのを知れたのは彼女達であり、
「んなわけあるか。出会った時から私達よりあなたは強かった」
「じゃあ、近いって事かな。街の人達と違って、自分達が強いから、僕のことをすぐに理解してくれたよ」
「その割に心を開くの遅かったと思うけど……でも、開いたら開いたで早かったような」
勇者の気持ちの奥深くには、疑心暗鬼となるような理由がある。自分基準でないにしろ、ある程度のラインがあり、そこに満たない者達に信頼というモノを感じ取れない。これは誰にでもある、幼少期に知る出来事からの発達。
それを突破してくれた言葉と、差し伸べた手を覚えている。
「”君の居場所を、君の手で作りに行かないか?”」
あの時を思い出すように、魔女が自分に差し向けた左手を、今度は勇者が魔女に向けて手を差し伸べた。
ちょい照れるなーって感じではあった2人。
その手を見ながら魔女は……
「ふふふ」
赤らめる表情。そうそう、自分はそんな感じな気がするって、勇者の顔。
勇者は……差し出したその手を退きながら
「自分1人だったら、精一杯な事も、仲間がいたらそうじゃないって、魔女の姿と仲間から感じ取れたんだ。だから、ついていく事にした。生まれ育った街を離れるって選択肢が生まれたのも、魔女達と出会えたからなんだ」
にっこりと勇者は、その時をまず
「ありがとう。僕は、魔女達と出会えて、とっても良かったんだ」
◇ ◇
「「「「勇者、めっちゃ自分の言葉で喋るじゃん」」」」
同棲を強制された4名が同じことを思う。
確かに喋る時は喋るのだが、かなり機械のような感情が込められたとは言えない、……自分の事しか考えてない発言ばかりであったが。こんな感じに、人間っぽい感じに話せるところを見ると、そんな驚きにもなる。
もっとも近い回答として、商業娘ちゃんは
「私達は勇者の心の回復目的だったんだろうな」
「なるほど」
…………実際、そうと言える。
絶望した人を作るのは簡単であり、より深い絶望に陥れる方法として、
希望を味合わせた後で、再び絶望を与えることにある。
辛いことを知れば、知らずに済んだ方が良い。
そーいう心になってしまえば、人付き合いという摩訶不思議アドベンチャーを聴かないで済む。とても素晴らしいモノだとしてもだ。
そんな扉を一番ぶっ壊してくれたのは
「んん?どったの」
「「「いや、別に…………」」」
「なになに!?あたし、なにかした?」
たぶん、遊び人ちゃんが一番その扉をぶっ壊してくれたんだろうなって思う、他3名であった。そして、そんな様子を女神様と魔王の娘ちゃんと一緒に見ている天使ちゃんは
「確かに勇者様、成長してますよ」
「「本気で言ってるの!?」」
魔王の娘ちゃんも女神様も、……勇者の、魔女とのやり取りには人間味があると分かるのであるが。天使ちゃんから見て、立派な成長って言葉を遣う辺り。よっぽど酷かったのかと、ドン引きしている。
ただこの2名。
強さという基準なら抜けているからこそ、
「感性がやや違うということなのね」
「あたしも地位などの格差に隔たりを感じる事はありました」
勇者が避けたがる感情には、多少の理解ができる。
相容れないモノと瞬時に判断できるが、それでも付き合うという心が必要なモノと、……そうならないくらいの理由を持っている場合。勇者にはこの世界でも、十分に1人で生き抜ける理由も強さもあった。
「ねぇ、天使。この魔女なら上手く行くのかしら?」
「僧侶が一番勇者とマッチングできる相手だって言ってますし。できるんじゃないんですか?」
「この世界を救うためにも、まずは結婚してくれればいいのだけれど……。必ず、彼が世界を救う動きをするわ。間違いなく」
女神様も改めて、この勇者を見ていて心配になるわけだが。
「魔女さんは勇者様の事をどう思ってるのかな?勇者様からの印象はなんとなく分かります」
魔王の娘ちゃんでも分かるくらいに、勇者が認めているという上から目線ではなく。対等な付き合いが可能な存在に、魔女が入っていると分かった。そして、勇者の付き合いには……当たり前だが、リスク付きの長い年月を支払う必要がある。
この条件を魔女がクリアしているのは確かであり
「この子が未だに売れ残りなのが、この世界にとっては奇跡的なことよ」
「「とても失礼ですよ、女神様」」
強さが対等だから、そんな暴言を吐けるんだろうなって天使ちゃんも魔王の娘ちゃんもツッコミをするのであった。
◇ ◇
「あなたの成長はいつ見ても楽しかった。色んなスキルを教えて、あたしにすぐに並ぶ」
「魔女の背中には追いつけなかったよ」
「あたしだって必死に勉強したの。あなたとの切磋琢磨って、楽しかった」
出会いから一緒に旅をし、途中で僧侶も恥ずかしくなるくらい。最初の出会いを話し。
魔女の方から勇者に色んなスキルや世界の常識を教えたり……その中には料理や裁縫、工作、農業などなど……。一つに纏めれば、勉強できるものを勇者に教え込んだ。
勇者にとっては、先生と言える大恩人なのが魔女なのだ。
魔女をして、勇者の方が強い。だけれど、戦いだけが全てではないと、生きるだけに必死だった勇者に。生きる喜び、仲間達との出会いなどを教えてくれたのは、魔女の存在が大きいのだ。
勇者の顔がどんどん明るくなっていく様子に、近くにいる僧侶もそうだが。
その様子を見ている、他の女性陣達も
”人の幸せを純粋に喜べる”
そんな勇者と魔女のやり取りであった。
お互いが気持ち良く話し合える。意見を言い合える。楽しくなれるって……滅多にあるもんじゃない。特に勇者にとってはだ。
「僕は、魔女の幸せになりたい」
言葉の意味が違えば、プロポーズかもしれない。そんなことを言った時。
丁度、楽しい会話は30分を超えた。止まりなく続いた楽しい思い出話。また、もう一度、魔女とは付き合える関係に戻りたくなった。
「ありがとう。……あなただって、そーいう事を言えるのね。また、教えたくなったし、今度はあなたから教えて欲しいかもね」
魔女も満面の笑みだった。
これは上手く行ったか!?……そんな感じのテンションになる人達もいるくらいだ。
そして、魔女はその笑みのまま
「こんなに話したのは私も久しぶりで……、あなたとの思い出を話せて、と~~っても、嬉しい気分だった。この恰好も可愛いなんて言ってくれるし、また色々と教わりたいなんて……ホントに嬉しいわ。ホントにね」
魔女の右手は対面する勇者へ、ゆっくり伸びていく
「い~~っぱい、話した。まだ足りないと思うから、もうちょっと話したい。さっき寝てるんじゃないわよって言いたいわ」
肘が伸び切ったところで止まった。
「とても長い私のお気持ちになるんだけれど、それでも幸せなあなたに私の気持ちを伝えてあげるからね」
「うん」
そう言った後、魔女の右手は握られ、親指は下へと向いた。
魔女の笑顔は変わらないまま、勇者に告げる、とてもとても長い、勇者への思いは
「死ね」




