可愛い儂には罪はないぞ~王様、テメェのせいだよ!!~
「頼むよぉぉぉ!!僧侶く~~~ん!!勇者を結婚させて、子供作らないと!!”旧友”から世界ヤバイって言われてるんだよ~~~!!」
営業時間を過ぎて店を閉めてから、人間界の王様直々に涙ながらに訴えられた、元勇者パーティーの1人、僧侶。
「国民の全員が今、お前の顔を一番見たくないんだよ……」
「辛辣な事言わないでよ!!君にだって、報酬出してたじゃないか!!この会社だって、元は言えば儂の金だろう!?」
「そんな事言ったら、世界のみんなからもらった、金で運営してる。テメェはその金を一番持ってるだけだろうが。勇者いなかったらここで殺すぞ?」
勇者も好きじゃないんだが、もっと好きじゃないってか。ぶっちぎりでお前が嫌いって言えるのが、この王様である。端的に言えば、
「増税し過ぎなんだよ!!テメェ等!どんだけ税金で国民を苦しめてやがる!!ちったぁ国のために使え!!俺のところに沢山の婚活者が来てるけど!ここ以外の婚活会社は軒並み潰れてるし!!来る客来る客、ほとんど経済力を求める相方を捜してんだよ!!お前等が政治周りテキトーにやってるからだろうが!!」
人間界は今。
ビックリするほど不景気なのであった。確かに8年前も……良い世界ではなかった。おかしくなった時期を察すれば、8年前なのは確かだと、僧侶も分かっている。
原因となる、勇者を一瞥しながら
「魔物がいなくなったせいで、魔物で生計を立ててた連中は沢山嘆いた。魔術・武術・技術においても、ウチは進歩する事がなくなった」
魔物に襲われるからこそ、戦う術をみんなが求めていた。しかし、戦うことがなくなったから、その術を他に振り分けるようになった。
「魔物を倒して得られる報酬よりも、人間を倒して得られる報酬がデカイと気付いたように”錯覚”し出したのは、治安問題になってる。ある程度の術が、人間達同士に向けられていること。多くの職業で不景気を感じている状況だ」
人間達の変化を、婚活という立場ながら感じるのだ。
昔は男の1人稼ぎで女と子供を支えていたが、今は男と女の稼ぎで生活をし、子供なんか作れる状況じゃない。単純にそりゃあ少子化する。そして、高齢化社会においてもさっきの話と同じになるが
「色んな術を持つせいで、既存の術を古臭いというか、……金にならないのなら、要らないと思う連中は大勢いるよ。そんで引き継がれないまま、高齢者になるしかない。死ぬまで続けるしかない情勢だ。正直、俺だって自分の命が終わってから世界のなんちゃらなんか考えてねぇよ」
「うむむむ、」
「で…………」
グギギギギギギ
「テメェはなんで増税しながら、自分達とその側近達の給与をアップしてんだ~~?国民様の税金をなんだと思ってるんだ~~?」
「痛い痛い僧侶くん!痛いよぉ、苦しいぃぃっ~~」
「この前の、国民情報網からテメェ等が高級料亭で贅沢してんの流してたぞ~~?こっちは明日の飯が心配なのによ~」
「ぐはぁっ!!わ、儂だってたまには、100万のご飯を食べたいし、仲間達に食わせたいのだ!こ、高級料亭だって、儂等いなかったら困るし、可愛いくて若くて胸がボインボインな女性達の黄色声を聞いて、柔肌に触れねば、活力が出ずに仕事が~~」
バギバギバギ
「増税する事しか仕事してないのに~?へぇ~~、こっちもこっちで増税に対応して、料金値上げで、体力のない会社は潰れてるんですよ~~?さっき言ったけど、お前と同じかそれ以上の高齢者が会社がやってると、儲けなかったら続ける理由って少ないですからね~。お前も、引退したら?人生の」
「痛い痛い痛い!!腰止めて!!腰痛がぁ!!かぁっ、こぉぉっ!」
「つーか、テメェ等。仕事中よく居眠りしてるよな?お前等ってそんなに数がいる?ロクに対策とれず、寝ているだけで、給与アップって情報出てるけど。ホラ今、監視社会だから監視用のスキルと、情報拡散スキルが重宝されてるから、お前が今ここで言っても」
「せ、せ、政治関連で、……こ、こ、これ以上、国民が口出しするのは、き、危険!監視用のスキルと情報拡散スキルには、増税を検討する!!ガセ情報ばかりで、けしからん!!」
ゴキゴキゴキ
「そうですね。私達、国民の多くは、こーいうのをガセ情報だと思いたいのですよ~。ガセだと思わないくらい、王国の信頼がないのを自覚なさらないので?」
「ぎょ、ぎょえええぇぇっ!!あ、あ、足の裏はやめて!!」
「それから聞いた話ですけど、子供支援とかで増税してたそうですけど。そもそも子供の数が少ないのに、その予算が目ん玉飛び出るくらいの金額で、子供の数を増やすことではなく、子供のいじめを無くすとかメンタルケアの相談だとかほざいているそうですが……」
「痛い痛い痛い!そこ痛い!!税金で払うから!離して!!」
「そうそう、しっかり相談じゃなくて、お金を出すようにしてくださいよ。相談で解決するレベルを超えてるし、子供を武器にする親に教師達も困ってるんですよ。こーいうのって相談じゃなくてお金くれない?お金がないと余裕がない事は、政治やってるお前がよく分かるだろ」
「わ、わかわかぁ」
「それ以外にもよく分かんねぇ事にとんでもねぇ金使って、魔物と触れ合うだの、男女同士のなんちゃら、魔術と運動の講座だの、異国文化の交流だの……そんなこと言って、お仲間達に税金渡してんだろ?」
「こ、国民!国民にも金配ってるじゃないか!!少しは褒めなさい」
「おう、その中身の金額言ってみろ。10000だろ?お前達のこの前の高級料亭は、100万だよな?100倍も差があんのかよ。しかもよぉ、その10000を全員に配ってるんじゃないんだろ。働けない層とかに配って、税金納めてる奴等に配ってねぇんだろ。そんなんで仕事した気になってんじゃねぇ。中で抜いてんだろぉ、この野郎がぁ。つーか、10万配るって言っておいて、1万にしたろ?有言不実行&掌返しはいけねぇな」
ベギベギベギベギ
「うぎゃああああ!!、わ、わ、わ、儂はそんな!鬼畜非道な王様じゃないから!!そんな王様がいたら、国が滅んでいるからね!!滅んでないって事は!!儂は優秀な王様だから!!別の王様よりも優秀だからね!!9兆とか10億とか、そこまでの金のインフレはしてないからぁぁぁ!!」
「うんこの匂いがするうんこと、カレーの匂いがするうんこの違いぐらいの差しかねぇ。うんこはうんこだ」
ドガアアァァンッ
「はぁ~~~……こんだけ王様を痛めつけてもスッキリしねぇな。お前と同じ気分になれたかもな、勇者」
……とりあえず、無能な王様のせいで、世界が大混乱という状況が分かっていただけたかな?
いざって時は勇者が動いて止めるから王様が死んでないのは確かである。王様が悪いという事実に、勇者も分かっている。
「………………」
「お前、ホントに喋らないな。変わってねぇ~」
「……別に。僧侶が怒ってるのは、分かってた」