君がいなくちゃ世界は終わる~妃様とお姫様も愛を知りたかった~
スキル、”ボンバー”はただただ爆発させるだけでしかないが、その性能を研ぎ澄ませつつ、卑劣極まりない発想をすることで、
人の身近を脅かせる便利なもの。
その恐怖・危険的な事についてを人々に報せることは、経済的においても特許同然の独占にも繋がり、莫大な利益を生み出せる。
「それはダメ!!」
「はて?私、何かおかしなことを仰いましたか?」
妃様が人に救われても、そのブレーキをするような王女様ではなかった。
「君はそこまでの悪魔になっちゃいけない!!俺がやるから!!俺も協力するから!!もう少し、自分を考えよう!考えるようにちょっと、一呼吸おいて!」
「ん~…………はて~~~?」
やべっ。その発言は後で取り消せば良かった。これ、自分が人間爆弾にされて、敵陣に突っ込まされる前にされたお話だもん。
そして、これは本当の幸せを得るために思うのならば、王様が唯一、未来ある国民全員にやった善良な説得かつ功績であった。
「これは禁忌もいいところだ!これだけは絶対に封印してくれ!!お願いだ!!使うのなら、俺がその時は……!!」
◇ ◇
お茶をテーブルに置く手の震えに、……恐怖とは言えないものを感じさせる。
コトンッ
「…………………」
やばいぞ、僧侶くん。この爆弾。君もまだ生まれて来てないだろうから、儂の独白にさせてもらうが。これ、妃様が自ら封じた禁じ手の爆弾の可能性が高い。
「そ、それにしても、遅いですなー。楽しんでるような、ははははは」
「うふふふ♡そうよね、あなた♡私達との出会いと同じかも♡」
心臓爆弾。
相手の心臓に気付かれずに、心臓に爆弾を埋め込むというもの。これの何が恐ろしいって、……若き日の妃様は、未来ある新生児達の全てにこの爆弾をセットしようと、儂に相談を持ち掛けた。それもこの王国で生まれる者達の秘密裏にだ。……何考えてんの?
やり方は簡単だ。妃様の魔力が微量に込められた薬を新生児にぶち込む。
【将来、犯罪者になった大人をすぐに爆殺できるわ。手短ですし、微量な威力でも心臓を破壊できれば、外側は綺麗な死体になって、周囲に被害はでませんわ♡】
違うから!!そーいう問題じゃないから!!
【それに私が意識して調整すれば、1人で建物を破壊できるくらいの爆発にできます。悪い大人がそーいう子供を食い物にしようとしたら、……その子供を基点にドカンとやりましょう。悪い大人に靡く子供は、悪い大人になってしまいます。未来を護るためにこれは必要です】
それもう妃様が、正気でないと……イカレてて正気を保っていないとできないやり方じゃないか!!
【武力と知識を持たずに生まれた子供が、爆弾を持つことで悪い者達から守ることができます】
その理屈は分かるよ!多くの犯罪者が、元気無邪気に遊んでいる、子供達を襲うケースは嫉妬も含めて、絶対に武器を持った自分は大丈夫だと言い聞かせ、誰でも良かったと嘘を口にしながら襲い掛かっているさ!子供が爆発するなら、そりゃ襲わないよ!でも、それは違うよ!
妃様、どんだけ自分へのヘイトを受け入れるつもりなんだよ!犠牲はあって良いモノではないけど、それを直すのが
政治の仕事なんだよ!!
「…………って、言いたい、昔の自分」
「?」
儂には無理じゃ。儂にはそんな国民のためじゃなくて、金のためにしか働かない。未来のためだぁ?儂が死んだら、儂の世界は終わりじゃ!!その先など、太陽が膨張し続け、宇宙を飲み込んだ先くらいにどーでもいいわい!!
儂の人生は、儂が決めてなにが悪いんじゃい!!
「いや、いくらなんでも、あいつに限って時間を守らないのはおかしい」
王様の葛藤など知らず、僧侶はこの場の中立な存在。そして、妃様に爆弾を仕込まれたとあっては
「2人の邪魔をする気はねぇが、俺だけは命の保障が欲しいもんだ」
「あら?僧侶、あなたにしては随分と好戦的ね」
「解除してくれりゃあいい」
「私は、それ以外は構わないけれど」
一瞬、僧侶と妃様が一戦をおっ始めようかという雰囲気。
「よせよせよせ!!爆弾!!心臓に爆弾を仕掛けられてるの!!どー考えても、妃様と一緒に!言う通りにするのが、儂達が生きられる唯一の方法!!」
「そんなことは分かってるけど、俺は勇者の元ご一行だぜ。命捨てる覚悟もあった。これ以上の言いなりなんて御免だよ」
王様が必死に止めようとするも、僧侶もここは心理戦を仕掛ける。勇者に限って、死ぬわけがねぇと分かってはいるが。相手が妃様だ。十分な勝算があって、仕掛けてくる相手と分かってる。
「座っていなさいよ。男女の仲を邪魔したくないのは、あなたも同じじゃない?」
勇者のレベルを借りているようですが、誤差程度。よーいドンなら、私が100%、僧侶に勝てますわ。……ただ、お姫様がスキルを発動中だとちょっと厄介。私ですら、かすり傷1つで致命傷になってしまう。おまけに僧侶はその辺の防御系に強いスキル。こいつだけはどうしても止めておかないと、勇者が助かってしまう可能性がある。
能力の正体を掴ませるのは、絶対にダメ。
「ここには勇者とお姫様が戻ってくるはずよ。暴れるのは良くないんじゃない?」
「妃様に言われたくねぇな」
ぜってー、なにか隠してやがるな。勇者の言動からすれば、王様の言っていることは間違えねぇ。だが、ここで俺が動けないのはマズイぜ。
「の、のう、妃様」
「なにかしら?」
そんな時、王様がちょっとだけ、あの時を思い出して勇気を振り絞って、提案をした
「わ、儂と一緒に、勇者とお姫様の様子を見に行きませんか……?ほら、男女の仲。それを見るのも、微笑ましいというか、……儂と妃様の仲は幼馴染であろう、そ、そんな気分でのぅ」
「………………」
「い、い、色々と語り合うには、僧侶くんもいない方が良いと、……そーだ、逆でもいいかものぅ」
そりゃあ、まずいか。ど、どの辺がライン……?
「はて~~~?」
妃様は考え込む。それはとても非常にワザとらしく、王様には
「い、今しかできない話でもあります!!お見合いが終わってからじゃ、言えないこともある!!」
これは妃様の時間稼ぎ!!
「考えながらいつも時間を稼ぐマネは止してくだされ!!どーせいつも決めてることでしょうが!」
「!」
あっ、心の声をつい、口に出してしまった~……。
「あら?そう見えるのかしら?だとしたら」
本心を見透かされたら、ぜってー生きて返してくれないよ。
「お二人共、目が曇ってらっしゃるかと……!!」
その時、3名が同時に扉を蹴破った。それはある場所での異変を察知し、事態が急変したからである。
◇ ◇
「きゃあああああああああああ」
お姫様は絶叫する。その絶叫の合図は勇者が突然死してしまった時の合図だと、妃様と取り決めていた。
勇者は今、庭園で激しく流血させながら、倒れ込んでいた。
この異世界ではまだこの奇病を治す手段がなく、それは勇者であっても同じであった。
お姫様の表情は、いつもと違う絶望的な表情ではなく、感情的な表情になっていた。
「ふふっ」
な、なにが……自分は死なないだ。私といた奴はみんな死ぬんだ。
「……ふぅー……」
「!」
「ふぅー…………血液に命を吹き込むか……病気か……」
どっちなのか、それとも両方なのか。
勇者はゆっくりと立ち上がりながら、緑色に変色した血を噴き出しながら、傷口が修復されている様子を見せた。その姿にはお姫様も、絶句を交えた表情となり、唖然の声
「なっ…………え……」
「細菌としての問題なら……血の凝固作用に大きく影響を与えると見た。そこで侵入してきた細菌の1つ1つの精度を高める事にした。細菌というのは、同じ条件であればお互いに協力を取り合うそうだが、その条件に齟齬が発生すると細菌同士で殺し合いを始めるそうだ。蟲毒という状態が近い」
顔色が悪くなっていた勇者の顔が、皮膚通して、やや緑色のようになっていた。
「非常に強い猛毒となり、僕も久々に死にかけたよ。だけど、この状態になると弱点がある。あまりに強すぎるため、細菌が自分の毒性で自滅に陥るんだ。とはいえ、そこに至るまで、僕の血液の9割は持っていかれたけれど。不足した血液分についてだが、庭園の植物を補食しながら、君からの細菌が死んで流血してしまった血を少しばかり戻した。ちゃんと無事に使える血だけね(少なすぎ)」
「あっ……………」
勇者からすれば、奇跡過ぎる生還。一方で、お姫様からすれば、絶望顔な自分の中から現れて来る、今までに感じたことない、熱く込み上げて来る感情。この胸をキュゥっと抱きしめたくなるような気持ち。頬の明るみ。
「顔色が悪くなったけど、ほら、僕は死なない」
勇者が、強がっていると、分かるくらいには右腕が震えている。それでも、ベンチに座って、自分の血がついていないお姫様に対して向ける手に、お姫様はまったくの恐怖ではない感情に見舞われ
「はうぅぅっ♡♡」
自分が初めて罹った病気に苦しんでしまうのであった。
自分の力を乗り越えて来た人がいる。自分にはこーいうモノがないと思っていただけに、それを叶えられる存在がいるとは……。
勇者が出す言葉よりも、どーしたいかよりも
「な、なんですかね……♡この気持ち……♡ちょっと、……お待ちください♡」
お姫様は自分でどーすればいいか分からず、ベンチに座ったまま、赤らめる頬を両手で抑え続ける、……じーーーっと、ここにいる事が、今の幸せだと思っていた。それに苛立ちもなく、自分の状態が今なおをヤバイと分かっていても、待ってくれる勇者。
何分でも良いんじゃないかなって、思っている。
そんな勇者の背後から迫ってくるのは、
「やっぱり」
妃様が一番乗りでこの庭園に着き、お姫様と勇者の距離を確認した。それは万が一……
「あなたは優しいよ」
ドゴオオオォォーーーーーンンッ
勇者がお姫様を人質にとるようなマネ。ようするに、抱き着いた状態だった場合、彼女を巻き込む恐れがあったからだ。全力で心臓を爆破しなければ、こいつは死なない。例え、お姫様のスキルで弱り切ったとしても、妃様に油断はなく、ここまでの台本を書き上げていた。
身体から多くの血液を抜かれ、身体的にかなりの弱体化をし、心臓という生命の急所を爆破する。
「一撃目が”効き”すぎていた事に、疑問をもつべきだったかしら?」
平静している妃様に諦めのない顔。その後ろから、彼女の右肩を掴んで動きを止めている僧侶。一方で、身体の内側から大爆発を浴びせられた勇者は煙も出しながら
「……ああ、……………」
今度は腰から崩れて、地面にお尻をついた。なおも生きている。ないはずの右腕を上げながら
「あなたの爆弾を”視えて”いたら、……喰らった振りもお手の物です」
勇者が直接に手を下すとしたら、妃様達など相手にならない。今日というこの日は、自分の罪を償うためにあるとしている。妃様が全部を出し切っていただければ、それでいい。彼女はひとまず、今日は諦めるくらいの人ではある。
ここまで手を込んだ作戦、殺人計画を、勇者の圧倒的なレベル差の前で潰してみせた。生き残ってみせたという意味で
「続けますか」
勇者の心臓近くを爆破させたが、一撃では沈まない。それも分かっていた。生物学的に死んでもらう以外、妃様の計画に間違いはない。突然変異としか言えない、種族人間の怪物を相手に……これでも死んでくれないか。
「そこまでだ、妃様」
「僧侶。あなたが私を止める?」
「俺は妃様とだけは戦いたくねぇよ」
「なら、この手をどけなさいな」
妃様の自暴自棄。
「もうどーなっていいのなら、……せめてね。死ねってくらい」
その言葉を自分に向けていて、そう仕向ける用に勇者に近づこうとする妃様。殺すまで殺しに行ってやるというその気持ちは、勇者がどんなに受けては耐えても、変わらない事だった。終わらないのなら、やっぱり……違う形で決着をつける必要があった。
「うおおおぉぉぉっ!!」
そんな状況は絶対に阻止するべく、妃様の後ろから飛びついて来た、不倫しちゃった男。
「ごめんっ!!妃様!!もう儂が悪かったから!!儂には、……今の王国には、……今の儂には妃様が必要なんじゃああぁぁっ!!死なんでくれぇぇっ!!」
妃様が動こうとしても離す気がなかった僧侶も、王様の気色悪い飛びつきには手を離してしまい、体まで退いてしまう。されている当人の妃様は、熱くもフリーズ状態のままであるが。
「国のみんなはいつも、儂なんかよりも妃様を望んでおった!!とても厳しくも、国民達に優しくできたのは、他でもない妃様しかおらん!!儂が政治なんかやったら、欲ばかりで国がおかしくなってしまう!!非情な暴力を正しい心で受け止められる、妃様がおらんかったら!!……儂と君の世界は終わってしまうんじゃーー!」
……王国が今現在もまだ、存続されているのは
「国民が皆!!この国を思って、妃様の帰りを待っておる!!儂も覚悟を決めた!!妃様の下僕になってでも、儂は妃様と一生を過ごす!!どんなに裕福に欲に飢えようと!!妃様がおらんと何も満たされんかった!!儂だっていつもいて欲しいのは、妃様のような美しくて天然な良識人なんじゃーーー!!」
………………
「……お前等の愛を確認する場じゃねぇーぞ……」
フリーズしてしまったこの空間に、僧侶のツッコミが時を動かした。
熱くなっている身体はお互い様であり、どうして欲しいのか分かるという問いかけが、2人の中で分かっていたようだ
「……”イタイ”のですけれど?」
一般的に抱き着くんじゃねぇ。そんなニュアンスに対し、王様は……少し緩めるくらいにして、妃様を決して離さなかった。
「嫌じゃ!!儂は妃様が萌えて赤くなってる顔に一目惚れしたんじゃ!!」
「………………」
初めての出会いの時を、……30年ぶりに2人同時に振り返る。こうして出会えた事で、上手く行っていた王国がある。
「分かっておるんじゃろ!!妃様が生きているからこそ、今でも王国があるんじゃ!!勇者がいるからではない!!妃様が可愛い顔から繰り出される悪魔的な考えを提案し、儂が握る金と悪い権力、腐った利権で実行してこその、この王国なんじゃ!!妃様の無茶苦茶に儂が四苦八苦して、馬鹿な国民共が喜び、君が幸せと微笑む!それが良いと失って気付いたんじゃーーー!!」
ボーーーーンッ
「…………」
爆破する能力を持つ者が、……誰にも捉えられない小さな爆発をして、……ゆっくりと萎んだ。
ようやく、冷え切ってように口を開いて出た言葉は
「はて~~~?」
抱き着いてきた王様の身体を手で払いのける妃様。……言わんでも分かってるわよ、って表情のポーカーフェイスで
「決めつけない事よ。勇者を許せない。私達の”子”を見殺しにした奴よ」
お互いに死んだところで、気が済んだという、復讐者としての爽快感。……それだけで済む、一般の方々とは違っている。
「今日は”まだ”忘れない。明日にでも思い出すかも……」
地につく勇者の横を通り過ぎる妃様であり、ベンチで困惑中のお姫様を介抱しようとしたのだが、王様がそこからさらに詰め寄って、
「ととっ……!?」
「今日”で”忘れなさい!!……明日、思い出さなくても、儂が隣にいる……」
お姫様は勇者のもので、妃様は儂のもの。
そう周りに伝えているように、王様が妃様の手をとって共に歩き出す。お姫様はまだそのままにして、……自分達は前へ
「今日くらい儂の我儘に付き合ってくれ」
「…………はて。あなたにだけ、見せてあげるのだからね」
王様だけが見ていた妃様の顔は…………爆発したように真っ赤に照れた表情だったのだ。




