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この世界の真実は~勇者と魔王の密約で迷惑です~

「武術以外も学ぶのですか?」


女武術家ちゃんは自分のスキルを伝えられてから、勇者の言葉をちゃんと聞くようになってくれた。

レベルの上げ方は色々とあるけれど、自分達に見えるのはあくまでステータスでしかない。そして、彼女が見ている視野は想像以上に狭い。

正直、苦手な人だと勇者が思ったことに、……凄く身近な人物が浮かんでしまったのだが。それを伝えずに、自分自身に言い聞かせ、


「生活を通じて学べばいいのですね」


言われたことはしっかりとやる人物だとは分かった。


「慣れてくると視野が広がるし、効率や上達も考えていくんだよ。きっと今いる世界がもっと良くなるんだ」


そんな言葉を自分がどうやって口にしているのか。分かっていないはずがない。

絶対に彼女と生活することは大変だと分かっている。


チャポン


「この身体は戦闘だけで出来上がっているんです?」

「ん~。農業もやってるからね。基礎体力はなんでも始めるところからだよ」

「なるほどー。じゃあ、明日はウチに農作業を手伝わせてください!!やったことないです!」

「構わないよ」


先に料理ではなく、先にお風呂に一緒に入ったのは汗を拭ってなんとやら。自分の分身が1人、料理を作っているところである。

まぁ、他の分身達は、一生懸命自分がぶち壊してしまった、畑や田んぼを直す作業をしているわけだ。大量の分身に複雑な指示を与え、操作するのは久々であり。自分自身はこの子を相手にするという、かなりハードである。

そんなことを言える相手でもない。


「ところで」


なんとなく、女武術家ちゃんの家族が、娘のスキルについて黙っていた事は知れたが、


「どうして、戦うことばかり求めてるんだ?」

「だって、お金がなくて、道場の立て直しが必要で……」

「お金を稼ぐことは色んな手段があると思うけど」

「ううっ…………ウチ、道場で門下生と戦うことばっかりで。昔は名門だったんですよ。魔物がいた頃は、護身術として子供達・大人達から人気だったんです」


そりゃあ君のスキルがあれば、1回の練習効率が大きいからね。


「でも、魔物が街を襲うとかがなくなって、……いつしか護身術って言ってきた事が人に危害を与える武術に変わってしまったんです。それから指導のなんので、ウチの道場は一気に廃れてしまったんです。強い子を育てる道場だったんですけど。犯罪者にウチの道場出身者がいたり……復讐とかはないんです!!間違った使い方がっ!」


バシャアァッ


彼女にも色々と思うところがあり、感情的になって、その場で立ち上がる。


「ウチ達、指導者の責任です!生まれて来た人や生まれて来た場所に、罪があったら良くない世界です!それだけはアカンです!!」


とんでもない善人な思考である。平和を願っていた自分でも、思いそうなくらいの理想だ。でも、現実は甘くないと分かっていて。それが、ぶわっと流れ込んで、このお風呂の中で勇者に抱き着いてしまう


「でも、ウチは戦うしかできんかった!!今までそうです!!いつもいつもやられるくらい負けてばっかで!泣いて逃げてもらうくらいにしか、できんかった!!」

「あ、あのっ」

「勇者様!不束者ですが、ウチを宜しくお願いしますぅぅ!」

「お、重い…………色々と感情がね……」


ブクブクブク…………


◇        ◇


「……出てらっしゃいな。いるんでしょう?」


妃様と、勇者にご紹介されるお姫様、……そして、


「あーー!!そうだ!”旧友”!!君でもいいから、儂を助けてくれーーー!!」


爆弾状態にされてしまった王様。

王妃のお部屋に忍び込んでくる事に腹を立てずに、王様と同じく、旧友としての立場。カーテンが揺れ動くと同時に姿を現してくれるのは、女神様である。


「やっぱり、あなたも世界の異変に気付いてらしたのね」

「興味があるわ」


爆弾にされてしまった王様には目もくれず、女神様は妃様の隣に座ってお話をする。


「まずは、ありがとう」

「?」

「きっと凄く、恨んでいるというのに、私達世界の為に勇者様に女性を紹介して頂けるなんで」

「世界の秘密を解くとは言っていないのですけれど」


王様は自分が爆弾になっている事をアピールし続けるも、女神様はガン無視している。一方でお姫様の方は女神様に対して、無関心とは違って、妃様に興味を持たれているのが気に喰わないというか。


「お良しなさい。あなたのスキルは、勇者様に使うためのもの。この子は私達の小さい頃からのお友達なの。真実のね」

「……分かりました」

「本当に大きくなられたわね。強いお姫様になりたいと、女神の泉まで来ていた、小さかったあなた達が懐かしい。立派なお姫様と、世界の支配を掲げた王様になったとは言い難いのだけれど」

「女神様も勇者様とご一緒で不器用な存在じゃないかしら」


スキル、”ボンバー”を扱う上で、幼少期に女神様のところを訪れて、修行をつけてもらったという恩がある。そこで姫としての勉強としてさせてもらったのだが、女神様からして、誰しも思うのだが


「あなたってお姫様より戦闘狂の方が向いていると思うんだけど?」

「愛情と暴力、狂気こそ、強さを示すには分かりやすいんですの♡」

「すいません!ここに愛する夫に対する仕打ちに、100%の回答をせんでくれんか!!妃様、為政者の方面にもステが傾いているからいいけど、それでも、ぺちゃパイ魔女の次くらいに強いからね!!総合的には上かもしれないよ!」


実際に、ガチったら見たいバトルではある。

お互いに理由がないからぶつかる事はないのだけれど


「…………………」


妃様の瞳が何を訴えているのか。信頼という言葉と、愛情という言葉を同時に示すに。

王様への爆破!


ドゴオオオォォォッ


「ぶほぉぉっ…………」

「あなただって、私に対する愛情と優しさ、反省に満ち溢れているじゃない。私、あなたに襲われたら太刀打ちできないわ~♡」

「王様のスキルが”金満”だからといって、あまり爆破するのは良くないわよ」


王様。自分自身を爆弾にされているにも関わらずに生存。なんだかんだでこの男の遺伝子。元勇者と勇者の父親であるのだから、それなりのモノもあるし。


「しかし、懐かしい。”ボンバー”に耐えられる肉体を求めた君が……年をとっても、まだ変わらずに夫婦漫才ができるだけの事をする」

「……わ、儂はもう、……コリゴリなんじゃがな……年齢に爆弾を重ねないでくれ」


自分のスキルによって、自分の身を護る事には長けていたりする。その身を利用されたりする攻撃。特に関節技関係には脆いので、無敵とは思っていないが。

妃様の相方ができるのは、なんだかんだでこの王様しかいないのは、周知の事実だったりする。爆破に耐えられると言っても、それは


「君が本気になったら、儂だって体の中からはじけ飛ぶからな。君が手加減できるまで知ってる」

「まぁ♡」

「それはそれとして、儂の体も痛いんじゃけど。早く、爆弾化を解いてくれ……」


妃様が本気に殺意を向けてきたら、殺されるのは自覚してる王様だ。

そんな三角関係を見ていれば、一番の部外者であるお姫様は


「席を外しましょうか?」

「いいのいいの。いなさいよ。女神様とお話できるなんて、人間界に遊びに来てくれるだけでも貴重な体験ですのよ」

「はぁ…………」


このままここにいると、いらない事を知りそうになると思ったが。別に良いとのこと。

興味があると、関係ないは意外と両立するのかもしれない。


「懐かしさと言っても、生物的な意味です。私にとっては一時に過ぎないかもしれません。あなた達、ちゃんと勇者様に結婚をし、その子供を授かってくれますか?」

「はいっ!!儂はそれに賛成です!!」

「……どーしましょうかねぇ~」

「まぁ、天使ちゃん達も勇者と寄り添える女性を見繕っているようですし。頼み込むとは違いますが」


女神様も、勇者がどんな女性を選んでくれるかは、問題にしていない様子だ。

協力という言葉は主に金銭面でのこと


「そこはプロである僧侶くんにほとんど任せるつもりだわ。私達はお金とその場所(お城を丸々借りる)をお貸しするだけ。3名で勇者とお見合いするのは良いプランだと思うわ」

「なんとかして、結婚させて、子供を授かるようにです」


いや、その辺は勇者に聞くなり、言えよって話になるわけで。そーいう望むべく結末を求めているわけではない、ってのが、妃様サイド。というより、勇者自身と選ばれた女性で決めるべき話だろってことだ。

どーしてそれに拘るのか。勇者が隠しているところに


「別に勇者を殺して、世界の秘密とやらを開示していいわけでしょ♡」

「勇者がいなくなったら、解除できる人がいないんですよ。勇者自身がそれをしないといけないんです。殺すのはちょっと……」

「大丈夫よ♡死にかける人間って、なんでも言う事を聞いてくれるものだから。ね♡」


妃様が100%の協力はしませんという言い方。

女神様としては、彼女達に打ち明けるには良いと思うが。それに対するちゃんとしたこと


「!」

「答えは、問いかけからじゃなくて?女神様」


妃様の仮説。

女神様の知ってること。

どれだけ当たっているかが、尋ねたくなるのは、妃様の手つきから伝わること。


「この世界の秘密と、勇者にどーしても解除して欲しい事は……」



◇         ◇



勇者の持っている本。

天使ちゃんが作ってくれた本に、メッセージが入る。

あとで勇者は確認する。


勇者様へ


可愛い人達との同棲生活は楽しんでおられますか?

こちら天使ちゃんと僧侶、王様がそれぞれ見繕った素晴らしい女性達、3名との、お見合いの日時と場所が決定しましたのでお知らせします。


今月、24日に。

王国にて、勇者様のお見合いを開催します。ぜひ、楽しみにして、ご参加ください。

そちらにはあたしと王様がお迎えに参ります。


午前10時より

1時間~90分ほどの、お見合いを行い。

14時までにはお見合いが終わり、16時に勇者様が自分の好きな女性を指名するという形式になり、ハネムーンにでも行くこととなります。


そのような流れであるため、勇者様にはあたし達が選んだ女性だけでなく、これまで同棲された4名の方を王国に来てもらうようにしてください。あなたが選んだ人達の中からで良いんです。

彼女達への追加報酬なども王様が直々に用意してくれますので、無理なエスコートだけはしないでくださいね。


参加者一覧:


メイン:

勇者様、


司会枠:

天使ちゃん、僧侶、王様。


一般参加:

村人ちゃん、遊び人ちゃん、商業娘ちゃん、女武術家ちゃん



特別参加(お見合い予定の枠):

お姫様、魔女、魔王の娘



ぜひ、楽しみにしてくださいね。


天使ちゃん、僧侶、王様より。






パラリッ


「………………」


家の屋根に昇って、この綺麗な夜空を眺める勇者。

随分と疲れてしまった。気疲れが大半。


「………………」


星の観察はいい。ちゃんと光輝いて、目に映ってくれる。

しかし、今日はどうしてか、雲ができているせいか、あまり輝いてくれない気がする。

自分だけが見えている本当の景色。

この世界のことを勇者は知っていて、……みんな、気付かないから幸せでいられると、願っている。



天使ちゃんが送って来た手紙に大きな違和感があっただろう?その事に彼女達は、まったく気付けていないのだ。



でも、それで、良いと思う。

今更、欲しいと思わない。


「この世界は」


◇          ◇


魔女と妃様、勇者はその口から語る。

世界の真実。


「「「この世界は、魔王によって自分にある、”名前”という概念を消された世界」」」


勇者と女神様は口にする。


「「”名前”が消えた世界とは」」


女神様からすれば


「みんながみんなと一緒に幸せを実感できない悲しい世界です」


勇者からすれば


「それでもみんなが生きていける、幸せな世界なんだ」



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