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仲間と家庭を持つことが成長に繋がる~でも、大変なんだけど~

スキル鑑定士なる者がいる。

というか、資格というのがあり、魔女はそれを持っている。

公式には認められていないが、勇者にもその資格を持つだけの知識はある。僧侶の結婚相談所のように、会社として成り立っている。


「公民達のためにな」


自分が産まれた時に、そのステータスやらスキルやら……鑑定しないと、両親が危ないのは確かだ。スキルによっては、絶望することもあるだろう。それでも改善するようなスキル変更師などもいる。

それでもあまりに強すぎたり、本人の要望、危険な事例、かなりの高額。最悪はスキルの喪失といった面からも、一般的ではない。


「娘のスキルはそーいうのなんですか!」


聞いちまったら、教えてはいけないスキルだったりする。

妃様の”ボンバー”と違い、危険な事例でもないし。魔女の”スタンバイ”のような、本人次第が過ぎるという事例でもない。

使いやすさを求めたがる国民達からすれば、ハズレもいいところだが。争いごとを好む者達にとってはアタリと言える。


女武術家ちゃんのスキルは


「”ヴェルー”」


もう亡くなってしまった父親は、この真実を告げられなかった。かといって、スキルを消すなどという高額な金もなく、そーしていいスキルでもない。

知らずに育てるのも、一つの愛情だと思っていた。いつか自分自身が気付いてしまった時、父親である自分が傍にいなかったら大変だからこそ。そのスキルとは真逆の武術に突き進んで欲しいと願っている。



◇        ◇



「!……う、う~~ん」


スキル鑑定は、血液型検査の類に近い。勇者がそれに関する資料と道具を持っていたことで、


「”ヴェルー”のスキルって珍しいなぁ」

「そ、そーなんです?」

「うん。君は貴重な部類で……言いにくいけど、まぁ、その……超危険」

「ええええーーっ!?どこがですか!?」

「ごめん。スキルよりも君の方が危険だった」


言われたことで、すぐに拳を冗談感覚で繰り出す女武術家ちゃんだった。でも、実際そうだと思う。こりゃあ、家族が伝えないし。王国が知っていたとすれば、絶対に消去なんてしたくないスキルだ。


お互いにテーブルの椅子に座って向かい合って、話してあげる。


「スキルの詳細としては、生物を強くする。簡単に言えば、レベルアップがしやすくなるんだ」

「へ~~~、ウチがいるとみんなが強くなるって事です?」

「君のはたぶん、……君以外が強くなるんだ」

「え?それって、ウチにとってハズレもいいところじゃないですか!!」


スキル、”ヴェルー”

成長の促進をさせるスキルである。

女武術家ちゃんの場合、戦闘による経験値を増加してくれる、と考えて欲しい。


「本人以外はね」

「えええっ!?」


な~んかおかしいなぁって思っていた。このスキルは、対象者をまったく決められず、経験値という幅もおそらくブレブレである。

最初に見かけた時も、敵が一気に増えたりすることも踏まえる、運命的な部分に至ってしまう。格闘向きでもあるし、魔法向きなスキルでもある。

成長の頂点にいる勇者にとっては、もう影響のないものではあるが。


「とはいえ、一つ間違えれば、……歴史上に数度、国1つの単位で滅ぼし、戦争にも繋がった、危険性のあるスキルだよ」

「それ聞くとウチって凄いんですか!?」

「いや、危険過ぎる意味で、ヤバイが正しいね」


当たり前だが。

何においても数の強さが恐ろしい。その数の強さに、質を強化できる、こーいうスキルはこの王国のみならず、国際的にも危険性が認知されている。もし万が一、気付いてしまったら……自分の身を護れるようにと、家族は勧めつつ、スキルの事を伝えなかったんだろう。

むしろ、勇者からすれば


「僕はとんでもないことをしてしまった」


勇者が言うと説得力はないんだけれど……。

でも、気付きが遅い分、スキルに対する修練がなければ、ほとんど無害で終わるかもしれない。自分に対する気付きも成長だって、魔女も言っていたわけだ。

忘れればいいと言うけど、気付かせてしまったのが自分な以上、責任はあるよなーって、心の中で思う。でも、気を抜いたら、勝負を挑んでくるような人をこの”村”におくわけにもいかないなぁ。


「ウチのスキルがみんなを強くするのは分かりました!!なら、ウチも強くなるだけです!」


理解していないのかな?

君が強くなる分、敵も……複数形で強くなっていくんだよ。

強さやレベルが全て、勝敗に関わるわけではないけれど。その戦いはとても大変だよって、僕にも分かる事なんだ。君の武術ではその限界に来ている。

できる事なら穏やかに、この事実を知らず、それでいて護れるような人と巡り合えればいいんだけどね。


そんな適任がいればいいんだけれどね(僕以外で)


「………………」


◇        ◇



「結婚しろだぁ~~?……あいつと?」


改めて、僧侶は。今度こそ、直接。


「天使ちゃんと魔王の娘には悪いが。お前以外に勇者と付き合える奴はいないし!あいつが唯一、心を許すのはお前だけだ!……大好きな奴が、魔王に敗れて、死んだのは……残念だが。それを覆すことはしてないんだろ!?」

「そりゃあ、倫理を無視するような事はしてないわ。でも、したのはあいつからよ」


勇者と結婚するように伝えるのであるが、ここに魔王の娘を呼んだことに理由があった。

誰もまだ”それ”に気付いていないのだ。それだけ根深いものであり


「あの時、あいつは待ちやがったの!魔王の計画を止めるための勇者ご一行だったのに……計画を止めなかった!!」


唇を噛みしめて、血が流れるくらいに、魔女は怒っていた。

誰よりも近くにいたからこそだ。


「あたしが魔王に、あっさりと勝ててれば良かった」

「…………話さないと分かんねぇ」

「そ、そうです!父はあなた達に何をしたんです!?」

「元勇者もその戦いで亡くなられているんですよね!」


結果は分かっている。

誰が死んで、誰が生き残ったのか。ある程度の事情までしか、僧侶は知らない。魔王を倒したのは当然だと思っていたが、魔王としての矜持があり、その計画を阻止できなかった。


「おかしいと思わないのね。根深いことね、僧侶」

「ん?」

「ふふふっ……ふふふ」


すぐに話せないよってくらい。その表情は、……怒っているわけでもなく、絶望したわけでもなく。ただただ焦燥としていて、魔女の強さからは考えられない、表情だった。

僧侶が違和感を持つには十分だった。

その胸が落ち着くようにと、魔女が手で抑えながら、順々にまず語っていく



「私の、お、……思い人は。……そう、単身で魔王の城に乗り込んでしまったの。……ただでさえ、強い奴が、……とんでもないレベルになってね。レベル1000くらいのところに、100倍がつけばね」

「うっ……それはこの天使ちゃんが悪いです」

「いいのよね。それはそれで。許せなかったのは、……いえ、私は気付けなかった。浮かれてたわよ。絶対に、あいつがいれば魔王に勝てる。倒せるってね。実際に倒せたんだから」


私は希望だと思った。だけど、彼にとって、あいつは絶望でしかなかった。

そりゃあさ。自分がその中心にいる人物なのに、全然関係ない奴が一番強いって、気の狂う話なのかもしれない。私だって彼のために、こんなスキルを頑張って、どうにかして、……自分自身とも向き合って、勇者ご一行の最後まで歩いてみせた。


「強い弱いじゃなくて、あなたがいる事が大好きなだけでよかったのよ!!私は!!」


彼のスキルなら色んな人と出会える。難しい人間関係を潤滑にできるように、色んな知識や経験を積んだ。ホントに頼れる仲間なら優しく接した。あなたがいるから、この勇者ご一行が始まって、終わる事もできる。

巡り合わせてくれる。


「僧侶も分かってるなら、あいつだって分かってる!!分かってるんでしょうが!!」


思い出しただけで周囲の地形を変化させてしまうぐらい、感情が揺れ動いてしまう。

こんな人間がいるのかと、その実力に驚く天使ちゃん。それと比肩できた父親に驚きつつ、魔女と似たような表情を見せる魔王の娘。


「私があいつに色々を教えなければ、そのままあいつが……剣で斬るなり、拳で分からせるなり、……私の魔法で消し飛ばした!!!なのにっ!!!」

「……禁断のスキルを、あたしの父親が使ったことに、間違いはないんですね」

「!!」


魔王の娘を呼んだ理由だった。それは魔王の娘も、勇者を求めている理由に繋がる。

そして、その言葉に魔女の笑みが、笑ってはいないのに出ていた。


「ふふふ、そこに気付けるとは。魔王も家族を理解していなかったようね……お似合いね」

「あたしは詳しく分からない。だから、勇者ご一行に尋ねたかった。父親の事も含めて!」

「今は無駄よ。ただ、それを解けるのは現状あいつだけよ」

「!じゃあ、女神様が言っていることは、勇者様にその禁断のスキルとやらを解除してもらう事だったんですか!!」

「十中八九そうね。そっちも世界がヤバイとか言ってんでしょ?もう大分手遅れなんだけど」

「……だったら、どうしてお前も動かない。勇者もなんで動かないんだ?勇者はもっと知ってるって事だろ?その事については」


勇者が作っている”村”の異常性。

王様や妃様達の回答に対しては、100%正しいのであるが。その回答に至るまでの過程については、やはり勇者本人しか分からない。分かって欲しくない。

ただ、魔女はもう、分かっているのだ。


「あいつなりに、私を悲しませないためとか……魔王にとっても、……我が子を悲しませないためよ」

「父親が、あたしのために……?」

「ここで魔女がヒロイン気取りですか!?」


よくよく見たら、魔女の瞳から涙がこぼれ始めていた。相当に辛いことなのだろう。

こんな顔は勇者ご一行に居た時は、見た事がなかった。

僧侶は


「勇者が魔王の計画を阻止しなかった理由を言え。できなかったわけじゃないのは、分かった」



魔王との戦いが終わっていなかった、事は分かった。


「ふふふ、言っても理解できないわよ。婚活アドバイザーなんて職業に就いている、あんたが理解できてないんだからね」

「理解できなくてもいい」

「そうね。じゃあ、魔王の娘も望んでいることだし、言ってあげるわ」


この世界は……


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