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結婚生活には束縛を~お互い囚人じゃないんだよ!~

”囚人の使い道”


「なんだこれは?」


頭の悪い人間達に理解させるには、それほど強い衝撃が必要である。


妃様がこの王国にやって来た時、治安という側面においては国民の安全と意識を高めるために重要だと説いていた。そのやり方が、”囚人の使い道”というやり方であった。

そして、自分のスキルを最大限に活かしたこと。

ある意味の恐怖政治と同義である。


「この人に挨拶をするだけで100万+出所!?」

「ここに行くだけで、200万!?」


国民を犠牲にするやり方を非難する者がいよう。それに本当の愛情があるかを確かめているかのような、文字通りの命懸けの訴えを人に体現させる。


スキル、”ボンバー”


スキルそのものに殺戮能力があり、スキルの効果を最大限に活かせるのは、妃様だからというものである。並みの人間ではその使い方に至らない。そして、悪人もまたそんな使い方をしない。バグのような存在が妃様なのである。

倫理観を取っ払った時にできてしまった、凶悪な使い方によって



ドゴオオオォォォォッッ



「ば、爆発事故だーーー!!」

「なにかの抗争かーー!?」

「仲間割れ!?」


不審な爆発事件がいくつも発生し、それに巻き込まれた者達の多くが、何らかの罪状を抱えている者達であった。

悪い事をすれば、罪を償わなければいけないよ。そーいう決まりを的確に実行できるやり方。罪状となったモノをしっかりと精査してから実行することで、多くの犯罪者とその予備軍が消し去り、心を入れ替えるには十分過ぎていて、国民が王国への信頼もまた増すというぶっ飛んだ改革の成功例の1つである。

善良な一般市民となって過ごす事においては、これほど優れた制度はない。


治安の良い国だからこそ、自国民もノビノビと暮らす事ができ、外からやってくる人間達も優秀な者達が多くなる。そこに善悪をしっかり分けられるという画期的なやり方だ。



「妃様。かの詐欺グループが、壊滅したそうです」

「そう。やっぱりね。ゴキブリの習性と同じね。餌を巣に持ち帰る」


妃様のスキルは対象を爆破する事ができ、その設定を空気中に行えるという代物だ。


「ふーーーっ……」


妃様の吐息を札束に吹きかければ、札束は爆破能力と位置発信機能、起爆能力を備える。位置発信機能と起爆能力の方に重点を置くことで、対象物や対象者のみに絞り込み、周囲にいるであろう国民の被害を徹底的に抑える。

罰する者は完全に犯罪者のみに絞る。そして、そのスキルが広まるとあれば、妃様に近づかなければ爆破されないと思うであろう。だが、違う。


「お主も悪よのぅ」

「いやいや、税金を横領するのは我々の特権ですよ」


本人達も、手に入れたお金にも、爆破能力を有してなくても


「みなさん、お酒をお持ちしました」

「おおーーっ」

「待っていた、待っていた!」

「では、ここに注ぎますね」


ドゴオオオォォォッッ


人間が生きる上で何かを必要とするものだ。お金だって、何かに代えるために扱うのだ。それが爆弾に変わっているかどうか、疑うようなら国なんかいられないし、自覚している悪事なんかをしようモノなら、命を投げ捨てているに等しいものだ。

妃様は平然と人の命を奪う扱いはしない。単純に、悪や危険を、自分がどの口で言うのか、分かったものではないが。国民のために死ぬべき人間というのを決めて、爆殺していったのである。


「罪人を擁護するのは無駄よ。治安が悪くなれば、その分だけ年費用が掛かる。コストカットよ、コストカット」


罪を軽減するということを爆弾にする事で解決する。

詐欺グループのように共犯者達を道連れにする事も容易く。このような行為をするとあっては、自分達の近くに爆弾化した人間や物体がやってくるのかもしれない。それは悪意のない者達。妃様風に言うのなら、


「8割の正しい国民のため、2割の正しくない国民には、死んでもらいましょう♡」


アウト過ぎる発言ではあるが、この政策によって、犯罪の数は大きく激減し、王国に巣食っていた悪い政治家達も大人しくならざるおえない。悪い事をしたいのなら、まずこの王国は選ばない。そして、治安を悪くする人間が他所の国に行くのなら


「より良い人材がここに来る。集いましょう、善良なる勇者ご一行を」


……妃様を擁護するとして、彼女は差別主義者ではない。区別主義者である。理想とする王国には、理想となる国民を求める。そのハードルは犯罪者以外においては決して高くはない。

誰でもやってしまうようなミスに対して、爆殺したことは一度もない。明らかにおかしいとされる行為には、やっただけのこと。そして、彼女の理想とする8割の国民にとってもまた、2割の国民が犠牲となることは悲しいことではない。逆に喜ばれることもある。

あんな悪い人間がいなくなれば、


「安心して過ごせる。その分だけのお金が回る、その分だけの食事が回る、その分の幸せも手に入れられる」


ただ、人間にある倫理観を持っていたらできない事を、彼女ができるのだから。スキルの凄さよりも彼女のやり口がそれだけすごい事には、誰もが納得している。



◇         ◇


「は、早く解除してくれーーー!!儂を爆殺するつもりか~~!?」

「一緒に死ぬだけですわ♡」

「ぜ、絶対それは嫌だぁぁ~~!!か、解除!!解除して!!」


つまり、王様も体に爆弾を仕込まれて、人質状態になっていた。勇者がもう1度、やって来た時は王様を起爆させて勇者を殺そうとするのだが


「とはいえ、あれがそれで死ぬとは思ってないわ。だけど、今度は絶対殺す…………作戦は考えてある」

「ざ、罪人達を爆弾に変えまくって、勇者を爆撃して失敗したのに!?儂1人を目の前で爆破させても意味ないよ!!」

「だから、やり方を変えるだけ♡あなたは私のことだけを心配してね♡」

「儂の心配をしろーーーー!!」


勇者が人の中に入れない。入りたくないのは、妃様のやり口をやられたからだ。罪人からすれば、魔王を倒した勇者を妬む者もいるだろう。勇者一行によって、悪事を潰された者達もいる。そんな彼等を爆弾にした事を教えずに解放する。

復讐心だろうが、仕事としてだろうが、素では勝てないだろう勇者に近づいたところを起爆させる。自爆持ちの処理というのは、勇者だって面倒だと分かっている。罪人を減らせること、勇者を殺せること、罪人になってしまうとどうなるかを、国民に強く印象に残らせるには十分過ぎる効果であり、妃様の恐怖政治とはいえ平和と安心を築けるのなら、彼女を慕うには十分過ぎた。


「儂達が危険じゃないかーーーー!!国民が慕うって!!恐怖に服従してるだけじゃないかーーー!!」


人はそれでも平和と幸せを感じ取れるのならいいのである。

誰だって悪い奴が不幸であることを悲しく思ったりしないだろう?


◇        ◇


「ぐすん」


あとは自分でやりますと、勇者は商業娘ちゃんに伝え、女武術家ちゃんを連れて”村”へと運んであげた。これから色々と話すことがあるというのに、女武術家ちゃんはずっと泣きじゃくっていた。

当然ながら、


「ぐぅぇぇ、父上ぇっ。申し訳ないですぅぅっ、ウチには、ウチは……弱いんですぅぅっ」


あんな大勢の男達に襲撃され、今は勇者にどっかへ連れて行かれる。自分がどーなるか分かってすらいない状況で、……勇者と同棲してくださいというのは、完全に勇者が悪者の中にいるようだ。


「ぼ、僕の村で落ち着いてね」

「ええぇぇんっ」


彼女を背負ってあげる勇者。自分と比べたら、そりゃあ、……ってのがあるけれど。


「僕でもあんな状態じゃ、助けに行けなかった(もし爆弾にされてたら、君も死んでるから)」

「弱いっ……弱いからぁっ」


弱さについてひたすらに泣き叫ぶ。普通の男達では歯が立たないくらいには強いというのは、勇者も実際に目にしていた。だとすれば、個人としての武は十分過ぎることであり、レベルで言うなら……


30後半はある


これは王国兵の10人分くらいはある強さ。弱い魔物と対峙しても十分に撃退できる。


「それって1人としては十分な気が……」


あくまでレベルという概念でしかない。女武術家ちゃんの強さは確かに研鑽あってできたものであるが、それだけという感じ。

レベル差が大きく離れている勇者をして、妃様を恐れているのは、本人の性格あってのこと。


「ぐすぅぅ、くすんっ」


今は滅茶苦茶泣くだけである。

”村”についてからもず~~っと、泣き続けていて話ができない。きっと真面目で良い子なのかなって思う。あくまでそう感じた……そして、君も父親もよく似ているのだ。


◇        ◇


身にあるスキルをまだ制御できない時。彼女の危険性はまた別の意味で高く、それが幼き頃なら本人も望まない。


「爆弾女が近づいてくる!」

「爆弾に変えられるーー!」


幼き姫様という立場であっても、爆弾にしてしまうスキルは周囲の者達から不吉な子として扱われていた。そんな彼女ができたことは、誰よりも強い姫様になることを求めたのは確か。そして、それでもこのスキルから逃れられない。

この命を恨んだ。この力を恨んだ。自分はその時の、言うなら、差別を知っていた。


私が1人でいれば、周りも自分も傷つかない。


だから、それを取り除いてくれた人を好きになる、理由があった。



ドゴオオオォォォッ



近づいたら爆発しますよ。


そう言った自分に対し、


「…………痛いぜ。君に焼かれた俺の身体よりも」


彼は物理的に近づくだけでなく、心から近づいて来た


「君の心がこんなにも傷ついていることにな!!」


そんな男こそ、王様の若かりし頃。若気の至り。お互いに一目惚れしてしまう。そして、お互いの解釈違いではあるが、国と個人を考えていた。


「俺の好きな事ができる王国には、俺が好きな女がいる!!つまり、今日から君が俺の姫になってくれ!!」


王様からすれば完全に自己中心的な中に、妃様がいて欲しいと思ってのこと。

妃様からすれば自分のために国をよくしようとするため、王様がいて欲しいと思ってのこと。


「俺には君が幸せに過ごせる王国を持つ、権力がある!!君が差別されるなんてことは、この俺が支配する王国にはない!!」


王様からすれば、彼女がどんなに酷いことを受けても、それを忘れることができるくらいの政治ができる。

妃様からすれば、王国がどんな手段であろうと変わっていけて、その中心に自分と王様がいてくれること。

お互いに思っているのは、王国のためではある。その権力と手段を自分のために使いまくる王様、その権力と手段を用いて王国を良くする妃様。

どこかですれ違うのは分かり切っていたのだが、それでも気付いた時には可愛い子供が産まれていたのであった。



「勇者のご一行を募りましょう。この国をより良い者達が住み、ここから世界を始める一大プロジェクトを開始します!」


自分とあなたの子が、本当の勇者だった。

そのはずだったのだ……。



どうして、最後にそのことを、止めてしまったのですか。

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