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話しを聞いてくれよ、魔女~勇者が師と仰ぐ奴が普通なわけがない~

勇者と遊び人ちゃんの楽しい夜……


王様は元妻にして、妃様に呼び出しをくらって、渋々と向かい……


天使ちゃんはようやく相手との連絡が着いたらしく、向かっているそうだ(一体誰だ?)


「そして、俺は何をしている……」


僧侶は死を覚悟し、旅に出ている。レベル100000の勇者に匹敵する異性に心当たりがあるというのは、嘘にはなるが……あれはあれ、これはこれ。釣り合いがとれていて、かつお互いに世話を焼いていた女性がいる。

なにより、勇者はあれで、先生みたいな年上のような女性が好みというか。慣れているというか、誰かに甘えたいという性分が裏にはある。


色々となんでもこなそうとするのは、たぶん、そいつの影響であり。


唯一、今でも生存している、本当の勇者ご一行の初期メンバーの1人である。


「そ、僧侶殿~……止めましょうよ!ここ、猛吹雪ですよ!」

「少し前まで砂漠にいたのに……どうして逆方向に進むんですかぁ~」


この危険な旅路故、王国から優れた兵士達を傭兵として同行させたが……。魔女のヤバさを知っていない奴等には荷が重すぎるか。気候変動で体がおかしくなる。

自分自身、どうしてまたこんな危険な事をするのか、分からなくもなるが。自分の後ろには傭兵達よりも大事なモノがあるからだ。


「進むしかない!魔女は瞬間移動テレポートしまくる!!そんでもって、俺達の行動は筒抜けだ!!近づいたらまた、瞬間移動テレポートするだろう!」

「えええ~~~!?」

「そ、そんな方とどうやって話すっていうんですか!?」

「続けるしかねぇーんだよ!!暑いところ行ったり、寒いところ行ったり!!海だって渡ってやる気持ちを持て!!いいか!!」


勇者の武力に勝てる奴は誰一人いないが、……圧倒的な2位というのもいる。


「勇者と魔王を除けば、魔女が一番やべぇ奴だ!!」


聞かれてるだろうから、ここは挑発する。


「なんたって!あいつはまだ独身のはずで!子供も作ってねぇ!!もうすぐ、年齢制限の30歳に到達するんだよ!!あいつも結婚なんかするタイプじゃねぇのは、仲間だった俺がよく分かってる!!今しかねぇぞ、機会チャンスはな!!お前はもう、選ぶ立場でもねぇし!!そんな御飯事は捨てて!結婚しろよ!!」


僧侶の叫びに反応するかのように、さらに吹雪が強くなり……雪山が揺れ始める。


「こっから先は性格も身体も悪くなるだけだ!お前が”あいつ”をどう思っているか知ってるけれど!!お前は、女だろうが!!男なんてもん忘れちまえよ!!婚活から逃げまくる生活が、勇者ご一行の末路なのかよ!!」

「そ、僧侶ーーー!!目の前に雪崩が発生してますよーーー!!」

「ぎゃあああ!!死ぬーーーー!!」


魔女の怒りに襲われている、僧侶達であった。



◇         ◇



「……とまぁ、魔女についてはこーいう感じでね」


遊び人ちゃんには信じられないと思うから、勇者は……自分の気にしていた女性の話を少ししていた。

自分に魔法系・概念系のスキルを教えてくれたことや、家事や工作の類なども、彼女から教わったという。


「ほーほー」

「僕の趣味の多くは、彼女に教わった事なんだ……でも、彼女はこーいう趣味はないよ。あくまで知ってたんだ。知識人な方で僕はホントに教わったんだ」

「ふ~ん……勇者って初めからそうじゃなくて、誰かの教えがあってできるんだね。人間やっぱ努力と出会いが大事なんだ」

「う、うん……でも、魔王討伐以降。……いや、王国で別れてからソレっきり……なんだよね。お礼は言いたいんだけど」


ぶっちゃけ、遊び人ちゃんは聞いてないと思う。ただ、勇者にそーいうことがあるって分かっただけで収穫であり


「ふふ~ん」

「?」

「でも、あたしだって勇者に教えられる事があります!……その前に、勇者さんって年上好き?」

「ん~……慣れてるからかな?魔女がいつも構ってくれてたから」

「はっは~んっ。そーいうの、ありますよね~!」


目線は違うし、指摘されるというのと、教えるというのラインが難しい人物。

遊び人ちゃんはその胸を張りながら


「さて、勇者様。あたしに何を教えられると思います?」

「う~ん…………」

「嬉しい正解は、〇ッチなことで~~す!!エッ〇なら私の方が詳しいよ~!!」

「そー思ったけどね……」



……言っていないけれど。

今、勇者と遊び人ちゃんはお風呂から上がって、一緒に着替えている最中という状態である。勇者はなんかもう慣れてきたという感じで、遊び人ちゃんの身体を見ていた。

勇者のそれとは違うけれど、彼女もまた、自分とは違う感じの痕があり、聞かないことが正しいと思っていた。それは正しいのだけれど


「ちゃんとした正解は……」


勇者の顔の前に指を当てて


「好意のある女性の前で、別の女性の話を楽しくしないこと…………です」


……言われて、納得するわけじゃないが。分かりましたという返事もないし、できなかったけれど。後からしっくりくるな~って、気持ちになる。分からないなぞなぞを難しく考え過ぎたとか、そんな状態で



「とにかく、勇者が知らない事をすれば、あたしもすげーってことじゃん!!」

「あ、あのね……」

「着替え終わったらベットだからな!今の内にドキドキしといてよ!あたしも色んな経験したけど、未経験の年上をリードするのは初だったりするし!!」


元気に着替えを終えて、どこかに行ってしまう遊び人ちゃん。お互いにお互いを思ってからベットに入った方が良いって明るい顔で言っていた。何をするかは、ホントに言葉通りの子なのだろう。

期待とか云々なんか勇者にはないのだが、遊び人ちゃんの言葉を思うのなら……勇者として思った事もある。


ゴクゴクゴク


「ぷはぁ~~~っ!!……なにこれ、すっげー美味しい!!ミルクがこんなに旨いとは!!」


着替えたとはいえ、あれな恰好でうろつく遊び人ちゃん。昼間よりも元気になって来ているのは、彼女なりの生態なのだろうか。

勇者としてはあと数時間で眠りにつくのだが、……遊び人ちゃんはここから半日以上もハッスルするんだろう。いちお、あれとか、これとかも……見つけて来たらしく、ベットの中での活動はもう準備万端。

色々非難があるとはいえ、天使ちゃんや僧侶からすれば手段なんか選んでられねぇ状況だ。ビッチな遊び人ちゃんならきっと勇者の……


「…………………」


こーいう時に使うべきだよね、魔女。


スキル、”言論”



「よーし!勇者~!」


1時間後、遊び人ちゃんはすっげ~色っぽい OR スケスケな衣類を大量に持ち込んで、勇者と一緒に寝るベットのところにやってきた。もちろん、あれのための道具も色々とだ。


「寝る前に~~!!いっぱいゲームしようぜ!!」

「そ、そーだね。気が乗らないけど……」

「ぜってードハマりすっから!!んじゃーー!古典的なエロの定番、野球……!!」


ブンッ ブンッ ブンッ


「勇者って、こーいう剣で魔物倒してるんだーー!!剣の素振り!40回だーーー!!」

「あ、危ないよ……こんな場所で剣を振り回しちゃったら」

「でも、ホラ!回転してる私も可愛いってもんじゃん!!……って……いやいや!!」


遊び人ちゃんはどこからか現れた剣を投げ捨てる。こーいう事をしたいんじゃないんだよって表情になりながら、頭の中で思い描いた


「じゃあ、ポッキーゲーム!!ボキボキポッキーゲーム!!おらぁーーー!その棒をどこまで伸ばしてやろうかなぁ!!」


パリパリパリ


「中までチョコたっぷり~!!……ってこれは、トッ〇でしょうが!!これでもできるけど!!つーか、してぇのはちげぇよ!!」

「けど、美味しかったでしょ?」

「はい!!……よーし、なら!!乳絞りと行こうじゃないか!も~~っ!勇者!何をしたか知らないが、この私の両胸を存分に………」


ゴクゴクゴク


「寝る前だけど、冷えた牛乳はいいねぇ。お腹に良くないんだけど……って、牛乳を飲むことじゃないからなーー!!乳絞りは乳絞りでしょーが!!牛乳飲むことじゃねぇからな!!」

「そ、そうだね。でも、僕も何が起こるかは分かってないからさ」

「な、なにかしたなー!なんのスキルを使ったのー!」


禁止されているスキルであることを言っても、遊び人ちゃんには分かってくれないだろうから。分かりやすいように


「言論統制するスキルを展開しただけだよ。君がそーいうことをしようとしたら、別の行動をとるルールを組み込んだ。君と離れた10分くらいの時間を使って、展開しちゃったよ。ごめんね」

「よ、よーするに18禁もとい、エッ〇を禁止する空間を使ったのかよー!!私達の楽しみを奪うなんてー!!勇者様がそれでいいのかー!」

「君の楽しみでしょ…………僕は寝るよ」


ベットの中に入って眠ろうとする勇者と、……ベットの近くで半裸状態で騒ぎ立てる遊び人ちゃん。これで少しは大人しくなってくれるかなって思っているが。当然ながら遊び人ちゃんは納得が行かない様子。だけれど、自分のやりたい事が悉く上手くいかないとなれば、


ス~~っと、ベットの中に入るだけである


「つまんねぇ」

「…………………」

「お前、つまんねぇーよ」

「…………それでいいよ」


その言葉を出したあとでも、勇者の方から背を向けつつも手を差し伸べる。それに躊躇しないで握ってあげる遊び人ちゃんである。これくらいなら良いのかって、これくらいしかできないのかって、……遊び人ちゃんは言葉通りの表情をしつつ。もうちょっと勇者に身体を近づけながら、聞いて欲しい声を出していた。


「……あたしってさ。何ができると思う?」

「…………?」

「甘えたり、お願いしたり、泣いたりして、来たんだぜ。こーやって愛嬌出してさ」


誰でもいいさ。誰かやってくれよって、事を続けて来れたのも……こーいった事して、動いてくれてたんだけど。ある時どっかで、……自分よりもいずれ現れる、その子にとって代われる。

誰か見つけねぇと独りぼっちだ。誰からも助けてくれねぇ、独りぼっちで。いくらお金が必要かも分からず、ひたすらにかき集めて、自分をずっとずーっと可愛いく思ってねぇとやってらんねぇの。


「勇者には分かんねぇよ。この怖さがさ。お前はなんでもできるから、頼まねぇんだろ?私はこれで……こーして生きてきたんだ。ちょっとはあたしのことを好きになってくれよ」


あたしを見てくれよ。

こんな場所じゃ、誰も蔑めばあたしの事を見るんだ?あたしは生きられないぞ、こんなところでさ。


「僕は、分かってると思うけど、君を好きになることはない。それはたぶん、君も同じだと思うんだけどさ……」

「それでもいいよ。だけどよ」

「君の好きは…………僕よりかは人らしくあるはずだよ。羨ましいよ」

「皮肉かよ」


自分の思い通りになってくれる好きと、そうじゃない好きってのがあるからね。


ぐすん…………ぐすん……


「!」

「そんなこと言われたくないよ。何番が好きだっていいじゃないか……好きに密度なんか考えるなよ……勇者、上手く行かなかったら、あたしを選んでくれよ……」

「……そうならない事を思うよ」

「泣いてる奴にそんな態度かよ」

「君はそーいう事に躊躇いがないだろう?」


この場だからそう思えて、言ってしまえる事だ。遊び人ちゃんを否定する気はないけれど、勇者からすれば本心の見えない・偽っている者を傍には置けないのだ。人とそう長い時間を過ごしてはいないが、そーいう警戒心は誰よりもしている。

だけれど


「いつまで経っても、お前は…………結婚とかよりも、仲間なんていないんじゃないのか?仲間を美化し過ぎじゃないか?」

「………………」

「いいじゃないか。その場の勢いとか笑顔とか……〇EXだって、結婚だって!……バーカ!!本能ばっかが動いてんだよ、人間は!!」



ぐすん……って、……すすり泣いている遊び人ちゃんは、それっきり……。口にしなかった……寝息のようなモノをすぐにたてた。きっかけがあれば、すぐに寝る子なんだと思う。

勇者は勇者で……少し考えが膨らんでいて、寝付けなかった。

自分でも言っているけれど、遊び人ちゃんの方がとても人らしくて羨ましいのだ。


勇者のご一行の中にいたけれど、本当は…………って思える。


自分は本当に、そこにいただけなのだ。


だからこそ、自分は望まないし、望めない。


◇        ◇



チュンチュン


「にひひひひ」

「……何を笑っているんだい」


勇者と一緒に遊び人ちゃんも起きたのは……色々とあったものだが、勇者からすれば意外であるし、なんかこう、変な辱めを受けた


「いやぁ~。てっきり、堅物で無機質な奴~って思ったけど。男だねぇ~。あたしが夢の中にでも出て来たかな~」

「君、ホントに苦手……」

「あはははは!エッ〇ができなくても、生理現象はあるもんだねぇ~」


村人ちゃんは爆睡していたけれど、遊び人ちゃんは軽い睡眠で済んでしまうようだ。こーいう外での経験値というか、慣れというのがあった。

遊び人ちゃんが早く起きたからといって、別に朝食の準備を手伝うとかはない。テーブルの椅子に座って、ニコニコした笑顔で勇者が朝食を作っている様を眺めているだけだ。

いつもより早く起きれば良かったと思ったのは久々である。


「そんなに早く起きて大丈夫なの?」

「んん~?いちゃマズイ?」

「そーいうことは聞いてないよ。もぅ」

「あたしはそーいうことをやってたから。勇者は無害だけれど、危ないおじさんと一緒に夜を過ごしていた時も豊富だからぁ~。警戒心だけは強いのよ。あたしのスキルだって、防犯用にもなるし。訴える時の証拠になるしね」

「なんだかね~……君が言うと、嵌められた風に感じるのだけれどね。昨日の涙は違うの?」

「涙は女の嘘だってね!」


やっぱり、この子は苦手だ。ある意味で目を離しちゃいけない人だ。


「ふぅ~、気が休まらない」

「あたしは楽しくて楽しくてしょうがない!同棲って、こーじゃなきゃねっ!!」

「僕が思っているのと違うよ」


もしも嫌な奴だとしたら、自分の分しか用意しないだろうに。勇者はしっかりと2人分を用意していた。


「朝からこんなに食べるのかよ~。あたし、朝は小食だぞ~?」

「構わないよ」

「勇者様のお料理はオードブルとか、食べ放題コースって感じだな!ホントに色んな料理を作るね!おかず系ばっか……!やや、〇ッチな事を言ったかな?」

「言ってないでしょ。色々なモノを食べる方が身体に良いし、レパートリーを簡単に増やせるからね」



ご飯にお味噌汁、冷奴ひややっこ、焼き魚、卵焼き、胡瓜と大根の浅漬け、ほうれん草の胡麻和え、オクラと鰹節の和え物、お団子、抹茶プリン……。


「あたし好みではないね」

「お昼に作ってあげる。パン派だよね?」

「うん!!楽しみにしてる!」


朝は小食というだけあって、箸の進みは遅いが……この村の静けさに合う、和食系の料理。


「うんめぇ~!!どうしてこんな美味しいの作れるの!?」


褒めてくれるのは嬉しいが、それにちょっとばっかし勇者が他人っぽく、指摘をする。


「自分で作ろうよ。そうやって、任せたいんじゃないか?」

「!!………」

「お昼は、君が1品作ろう。焼きそばパンはどうだい?」


え~~っ、メンドくせぇし。そーいうのは性に合わないって普段なら思うけれど……。勇者から誘ってきてくれたことは、悪くないし、むしろ


「あたしに作れるのか?包丁とか、火とか、全然だぞ」

「それでいいんだよ、誰だって最初はそう。野菜の皮むきなんて……」

「男の子の皮はいくらでも」

「あのね…………」

「じょーだん、じょーだん!いいよいいよ!料理とかやってみるってさ!」




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