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変色①

六話。

(・ω・)ノ

朝の目覚めはバス酔いのような吐き気がした。


「頭痛え……」


湿った布団から体を起こし、洗面所へと向かう。


歩くたびに体がふらつき、寝不足なのが分かる。


「そりゃそうだよな……」


昨日は、あんなことがあったんだ。


むしろ少し寝れただけでも十分だろう。


鏡に映る自分の姿を覗くと、それはとてもひどいものだった。


目の下にはクマが出来、ピクピクと痙攣を起こしている。


表情は引きつり、その彩度は低い。


歯を磨きながら、昨日のことを思い出す。


塾の帰りに彼女と会って……。


それで。


僕は、人を殺したのか。


呆然と考えていると、歯ブラシを歯茎にひっかけてしまった。


「いてっ!」


鉄の味がしてすぐに唾を吐く。


洗面台に薄赤い液体が流れ、同時に昨日の記憶が蘇ってきた。


「うっ!うおえええええ!」


突然、猛烈な吐き気が襲う。


脳裏に浮かぶ、朱色の肉。


普段自分が食べてる物と違う、肉。


男の絶叫と、右手に残る感覚。


人を殺してしまった恐怖と、それがバレてしまうかもしれないという恐怖。


そこから数分が経ち、少し冷静を取り戻してきた。


朝食を食べる気分にはなれず、いつもより数分早く家を出た。





冬の朝は天気が良く、あたりに日陰は見え泣かった。



顔を上げながら、ちょうどこっちにやってくるサラリーマンと目が合った。


互いに視線をずらし、すれ違う。


歩いていればよくあること。


たまたま目線があっただけだよな?


顔を下に向け歩いていると、再び視線を感じた。


前から歩いてくる人間が自分を見ているような。


そんなはずはないのに、怖くて顔を上げることが出来ない。


もしかして昨日の血の匂いが残っている?


もしかして誰かに見られてた?


考えれば考えるほど、さっきよりも視線が増えているような気がする。


それは前だけではなく、後ろからも視線が感じる。


ゾワッと鳥肌が立ち、その場から駆け出した。



******




学校の近くまでやってくると、人気が減ってきた。


下駄箱に靴をしまい、教室へ向かう。


時間が早すぎたのか、教室に人の姿は見えなかった。


心臓が激しく鼓動するのを抑えながら、自分を落ち着かせる。


――ばれるはずがない。


それは理解しているのに、視線が気になってしまう。


あのサラリーマンも、あの学生もこちらを見ている。


その視線が怖くて、顔を上げることが出来ない。


机にうつ伏せになり、ゆっくりと目を閉じる。


大丈夫だ。


僕には美羽がいる。


寝不足のせいか、そのまま眠ってしまった。




周りが騒がしくなり、ゆっくりと目を覚ますと、ほとんどのクラスメイトが登校していた。


その中に雄太に視線を向けるものはなく、安全地帯にいるのだと、ホッとする。


そのまま学校は始まり、放課後になるころにはすっかり人の視線も気にならなくなっていた。

('ω')ノ

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