起床
第26話です。
遊園地から家に帰ると、玄関の前は電気がついていた。
扉の向こうから滲み出る、嫌な気配。
鍵を差し込もうとした瞬間、ガチャリと音が鳴って勝手に扉が開いた。
――父が立っていた。
何故家にいるのか。
そんな疑問が浮かぶ前に、父が口を開いた。
「どこに行っていた?」
その声には抑えきれない怒りが籠っている。
「え?えと……」
「嘘をつくのか?」
呼吸が喉の奥で止まった。
何で……。
喉に蓋をされたみたいに声が出せない。
「とりあえず入れ」
その背中は今にも何かが零れそうなくらい張りつめていた。
リビングに入り、いつも通りの席に座る。
浅い呼吸をして、目の前に座る父を見上げた。
「どこに行っていた?」
葛藤する。
ここで本当のことを言わなければ怒られる。
でも本当のことを言ったら遊べなくなるんじゃないか。
思考は空回りする。
黙っていると、父はため息を吐き、机にある物を出した。
それは動物園に行ったときに翼からもらったドラゴンの剣だった。
「これはなんだ?」
「あっ……」
手が湿り、足元から冷えるような感覚があった。
「学校の友達か?まあいい。お前、塾辞めろ」
「え?」
水中にいるみたいに、音が籠って聞こえる。
「学校終わったらそのまま帰ってこい。土日は家で勉強しろ。学校以外の外出は認めない」
「それは……」
「携帯を出せ」
「携帯……?」
「いいから出せ!」
怒号に急かされ、携帯を机に出す。
父はそれを掴み、床に叩きつけた。
硬い破裂音が、部屋に響く。
「分かるか?これがお前の罪だ。分かったなら大人しく勉強していろ」
リビングから父が出ていき、その足音が耳奥で響いた。
地面に叩きつけられた携帯を手に取る。
画面は蜘蛛の巣のようにヒビ割れている。
電源ボタンを押すと、一瞬だけ白く光り、動かなくなってしまった。
雫が零れて、携帯にぽたりと落ちる。
「何で……」
上手くいっていると思っていた。
それなのに、一瞬で崩れた。
8畳間のリビングが俯瞰視してるように、やけに広く感じた。
('ω')




