遊園地①
24話です。
駅から降り、目の前に広がる大きなゲートを見上げる。
事前に何度か調べていたため、その姿は知っていたが、こうして目にすると思わずあっけに取られてしまう。
入り口を抜け、2人して数秒呆然としたあと、美羽が先に口を開いた。
「なにから行く?」
目をキラキラと輝かせ、全身から元気が溢れている。
翼たちは来られるか分からなかったため、先に美羽と2人で来ることになった。
「どれからいくか……」
入り口でもらったパンフレットを広げると、美羽が寄ってきた。
「ちょ、ちょっと!美羽!」
「結構たくさんあるね……」
僕のことを気にする様子もなく、美羽は食い入るようにパンフレットを眺める。
そのとき、突然あたりが暗くなり、地響きのような轟音とともに風が巻き起こった。
見上げると、ジェットコースターが凄まじい速度で頭上を駆け抜けていった。
「早っ!」
誰かの絶叫が風に乗って遠ざかっていく。
「それじゃあ何から行こうか?」
「じゃあ、今見たやつ乗ろうよ!」
彼女に手を引かれ、走り出す。
そのとき、いつしか聞いていた言葉を思い出した。
青春。
諦めかけていたものがここにある。
これから始まる1日に、期待が高まっていく。
どうやら、さっきのジェットコースターがこの遊園地の目玉らしく、既に長い行列ができていた。
待ち時間は30分。
遊園地では短い方なんだろうが、初めての自分には長く感じる。
並んでいる間、再び美羽とパンフレットを眺めた。
「昼飯はどこにする?」
「レストランも美味しそうだけど、私は外で買って食べるのがいいかな」
どうやらレストラン以外にも売店があり、そこで軽食が売られているようだ。
どこで買おうか迷っていると、前のカップルが人目も気にせずイチャイチャし始めた。
目のやり場に困って視線を迷子にしていると、美羽が耳元でささやいた。
「羨ましい?」
吐息が耳にかかり、微弱な電流が走る。
「ちょっ!」
「あはは。照れちゃって」
美羽はしたり顔で微笑むと、そのまま僕の腕に抱き着いてきた。
やわらかい感触が腕に伝わる。
「その……当たってる」
美羽は平気なのか、と顔をみてみると、美羽の顔も赤くなっていた。
「何か、熱いね」
「うん……」
体が燃えるように熱い。
そろそろ心臓がもたないというところで、風が吹いた。
ジェットコースターが戻ってきたようだ。
目の前の2組が誘導され、僕たちも乗り込んでいく。
――緊張してきた。
脂汗が額を伝う。
安全バーが下げられ、ガッチリと体が固定される。
不自由に縛り付けられる感覚が緊張を煽る。
高い声のアナウンスが、出発の合図を告げた。
「それでは、いってらっしゃいませ!」
ガタン、と大きく乗り物が揺れ、わずかに落下する。
乗り物がゆっくりと動き始め、加速した。
想像していたよりスピードは遅い。
最初の山へ向かって、徐々にスピードが下がっていく。
頂点につき、速度は0になった。
「うわっ!」
視界が一気に開け、頂上から遊園地が一望できた。
絶好の景色。
感動して――急落下した。
「あばばばばばばばば!」
体が浮き、突風どころではない、凄まじい風圧が顔に叩きつけられる。
地面近くまで落下すると、再び急上昇した。
スピードは保ったまま、上下の移動を繰り返していく。
おそらく乗っていた時間は10分もなかっただろう。
「きっつ!」
降りるなり、近くのベンチに倒れるように横になった。
乗る前に熱くなっていた体もすっかり冷めてしまっていた。
……僕って高所恐怖症だったのか。
「優太、大丈夫?」
上から美羽が顔をのぞかせてきた。
恥ずかしくなって体を起こす。
「うん。大丈夫。次はどうしようか」
「そうだね……」
美羽はパンフレットを眺めてから言った。
「歩きながら考えようか」
こうして歩き回ってみると、改めてその広さに驚かされる。
しばらく歩いていると、売店を見つけた。
「飲み物買ってもいい?」
「いいよー。私も何か買おうかな」
「何飲む?」
「ホットココアで」
「分かった。じゃあ買ってくる」
飲み物を注文して待っていると、ポケットのスマホが震えた。
桜からの連絡で、やっぱり2人は来られないようだった。
飲み物を受け取り、美羽のもとに戻る。
「翼たち来れないって」
「うん。私にも連絡きたよ。今日は2人で楽しもっか」
(・´з`・)




