動物園
22話です。
いつもの駅で待ち合わせをし、電車で動物園へと向かった。
通勤ラッシュを避けるため、遅めの集合にしたおかげか、電車は空いていた。
横並びで席に着く。
「動物園って懐かしいな。昔に俺と桜で行ったことあったよな」
「あったね。トラブルだらけで全然楽しめなかったけどね」
「トラブルって何があったの?」
「ペンギンが脱走したり、うさぎが脱走したりした」
「可愛いのばっかやな」
「お前なめんなよ。俺なんかペンギンに囲まれてボコボコにされたからな」
「流石に面白すぎるだろ」
「その後はどうしたの?」
「桜に助けてもらった」
「それはどう……」
そこで到着の合図のアナウンスが流れた。
「ついたか」
動物園に到着すると、翼は目を輝かせた。
「テンションあがってきた。よっしゃ早く行こうぜ」
「ちょっと翼!」
翼が走り出し、その背中を桜が追いかける。
2人を眺め、微笑んでいると、横にいた美羽が言った。
「よかったね。良い友達が出来て」
美羽は笑顔なのに、不安になるような違和感があった。
近いはずなのに、美羽の存在が遠く感じる。
「私たちもいこうか」
「う、うん」
聞けないまま、僕らも2人を追いかけた。
「キリンって転んだらどうするんだろうな」
「それは……うまいことやるんじゃない?」
「俺中に入って転ばしてくるわ」
「蹴り殺されるぞ」
翼と笑っていると、後ろから桜に話しかけられた。
「ここってパンダっていないんだっけ?」
翼が答える。
「いないよ。まあ別によくね。パンダって普通のクマに色塗っただけだしな」
「お前怒られるぞ」
桜がため息を吐く。
「翼は空気が読めないなー」
「うっせ。てかあれ見に行こうぜ」
再び、翼は走り出した。
その姿を見て、美羽が笑いながら言った。
「何か、翼君って自由だね」
「でしょ?だからいつも困ってる」
そういう桜の顔は楽しそうだった。
ある程度動物を見て回った後、昼休憩のためフードコートに入った。
「こういうところの飯ってなんかうまいんだよな」
「そうなのか」
「そうなんだよ。遊園地とかもそうだけど……今度、遊園地も行くか」
食事をしているとアナウンスが流れた。
「お知らせです。ペンギンが園内をお散歩中です。園内で見かけても触らず、近づかないでください。スタッフが安全に誘導しますので、見かけた場合はスタッフまでお知らせください」
「よっしゃ。ペンギン捕まえに行こうぜ」
「やめとけ、アホ」
「俺らも手伝ったほうがいいよ。それに一匹ぐらい持ち帰ってもバレねえよ」
「バレるだろ」
「桜たちはどうする?一緒に行くか?」
「私と美羽はここで待ってるよ」
「おけ、優太行こうぜ」
「分かったよ」
フードコートを出るなり、翼は迷いなく走って行く。
「ペンギンがどこにいるか分からないのに、そんな走って大丈夫か?」
「まあまあ、俺に任せなって」
翼についていくと、確かにペンギンがいた。
「よくわかったなお前」
「なんか昔から分かるんだよな」
「分かる?」
「何て言うんだろ。未来が見えるとは違うんだけど、なんか分かるんだよな」
翼はペンギンと目を合わせると、満足したように頷いた。
「じゃあ俺は他のペンギンを捕まえてくるわ」
そう言って翼は走り出した。
置いてかれたペンギンをの顔を見ると、随分と間抜けな顔をしていた。
ていうか結構生臭いな。
近くのスタッフにペンギンを任せ、翼を探していると、何かが集まっているのが見えた。
「ん?ペンギンか?」
たくさんのペンギンが何かに群がっている。
近づいてみると、中にいたのは翼だった。
「助けてくれ!」
翼はペンギン達に足蹴りされていた。
「何してんだお前」
「見てないで助けてくれ!」
職員を呼び、翼を救出する。
「ひどい目に合った」
翼の服には無数のペンギンの足跡が付いていた。
「めっちゃ生臭いから着替えてきたほうがいいよ」
「マジか。着替えてくるわ」
翼が着替えた後は、美羽たちと合流した。
翼がペンギンにボコボコにされてたことを話すと、美羽と桜は笑っていた。
「写真とっておけばよかったな」
その後も僕たちは動物を見て回った。
動物を見るのを飽きた後、ギフトショップに移動し、それぞれが自由に買い物をした。
キーホルダー売り場を見ていると、良さげなものを見つけた。
うさぎのキーホルダーか。
これいいな。
美羽に買っておこう。
そのストラップを買って外に出ると、美羽が先に外で待っていた。
「美羽はなんか買った?」
「いや、私はいいかなって思って」
「そっか。なら丁度良かった」
さっき買ったキーホルダーを美羽に渡す。
驚いた表情をしながら、美羽はそれを受け取り、中身を見ると突然泣き出した。
「え!ごめん。いやだった?」
「いや!違う、違うの。そうじゃなくて」
美羽は涙をぬぐって、笑顔で言った。
「ありがとう、優太」
それは純粋な笑顔と感謝だった。
その笑顔に、再び心臓が揺れた。
「あ、うん。どういたし……」
その時、翼が大声を出して、ショップからでてきた。
「見ろよこれ!」
いい雰囲気だったのに……。
そう思いながら翼を見る。
「これかっこよくね?」
翼が手に持っている袋から取り出したのはお土産屋によくある、ドラゴンの剣だった。
本当に買うやつがいるのか、と驚いてると、その剣を僕に渡してきた。
「それお前の」
驚いていると、袋から剣をもう一つ取り出して、美羽に渡した。
「ほら。優太と同じにしておいた」
「え?あ、ありがとう」
美羽も困惑していた。
「もしかしてまた、変なの買ったの?」
桜の声だ。
「変なのじゃないぞ。ドラゴンの剣だよ」
「そんなの買ったの……?」
桜は驚きを追い越して、呆れていた。
「分かってるよ。桜の分も買ってあるから」
また袋からドラゴンの剣を取り出した。
「……」
桜は受け取ると、笑い出した。
「本当に馬鹿だなあ」
つられて、僕と美羽も笑い出す。
こんな日が続けばいいのに。
('Д')




