召喚勇者様は黒髪黒目
出オチみたいな話です( ´∀`)よろしくお願いします〜!
「おお!勇者様が降臨なされた!!」
召喚の間にある魔法陣——魔王復活せし時、異世界より勇者様をお呼びできるとの伝説の——が光り輝き、一人の青年が現れた。
この世界は長く平和が続き、その伝説すらも忘れられようとしていた。しかし、ついに復活した魔王により、既に世界の半分が滅ぼされた。
よってかつての伝承を紐解き、魔王を倒し世界をお救いくださる勇者様を召喚することとなったのだ。
私は魔術師長として、その任にあたった。
もともとはそのような重責にはなかった。
子供の頃から勇者様の伝説に憧れ、国の魔術庁で召喚陣や当時の戦い、勇者様の研究をしていた。望んだ仕事だったが、人からみれば閑職であった。
しかし魔王の復活、世界の荒廃の為、権限を持たされ、あらん限りの力で召喚準備を整えたのだ。
そして今——!
召喚は成功し、勇者様が降臨なされた。
勇者様の召喚は記録上何度もあったが、全て年若い青年であり、この世界には存在しない「黒髪黒目」の「ニホンジン」だという。
召喚陣の上には、その通り、「黒髪黒目」の青年が、戸惑いがちに立っておられる。
私はかつて、子供の頃憧れた伝説そのままのお姿に、思わず目が熱くなるのを感じた。
ああ、これで救われる——お救いいただける、といった、安心感も、喜びもあった。既に滅ぼされた国には知己も多かった。
——いけない!私が涙など——…!
どこともわからぬ世界へいきなり連れてこられた勇者様はどれほどご不安か。無理を強いてお呼びして、我らをお救い下さいと、戦いをお願いするのだ。泣きたいのは勇者様なのだ。それでも、お願いせねばならぬ——!
申し訳ない気持ちを抑え込み、私は勇者様にお声を掛けさせて頂いた。
——勇者様は、伝説通りの方だった。
「あー召喚。よくある系。帰れんの?じゃーまあ…。てかなんで俺すか?黒髪黒目?ニホンジン?あー…。あるある…。あるけど…。
あーでもクズ召喚系じゃないっぽいのかな…あいやこっちの話で…。
魔王ねー。いっすよ!やりましょ!!」
みるみるうちに力を開花させ、あっという間に魔王をお討ちになられたのだ!勇者様は「マジスゲー」お方であった!
「マジスゲー」というのは勇者様の口癖でもあり、「大変偉大である」という意味である。
国王陛下も勇者様が魔王退治より帰還された折には、「マジスゲー」感謝を捧ぐと仰られた。
そして、お礼の金品——とてもその程度でお返しできるようなご恩ではないが——や、勇者様からみれば珍しいという品々をもち、勇者様は帰還なされた。
しかも口々に、涙を流しお礼を、感謝を告げる我々に対し、「いやなんかこっちこそね、なんかありがとね」とまでお気遣い下さった。
勇者様は、私が子供の頃憧れた通り、強く、優しく——人品高潔なる英雄であった——…。
我々は生涯、そして子々孫々にいたるまで、このご恩を忘れず、勇者様にお救い頂いたこの世界を守っていこうと誓ったのだった……。
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おれ日本人。大学生。ラノベとかアニメ好き。
召喚ものとかも好きでよく読むよ。まさか自分が——て、そこも含めてテンプレかよーだったけど。
あるあるのクズ国家じゃなさそうで、帰れるみたいだし、小説とか読んでると自分の世界は自分でどうにかしろよーとか思うけど、すげー必死だし、魔王退治って、戦ったこととかないんで怖いけどまあやったるか!てなった。
なんかちょっと嬉しかったのもある。
ていうのもあれ、魔術師の人も言ってた、「黒髪黒目のニホンジン」てやつ。
ラノベとかでもわりとある表現だけど、微妙じゃねって思ってた。
だって今時髪染めてるとかあるし、でなくても元から茶髪っぽい人とかいるじゃん。あとミックスね。
だからああいうののニホンジンの基準てなんなんだろなーとか思ってたの。
で、おれよ。
おれ初対面の人に日本人と思われることあんまないの。
肌が黒いから。
おれの母親が日本人で、父親がアフリカ系フランス人だったのね。なおかつ母親もその母親がブラジル人だったんで、ぶっちゃけおれ見た目すごいガイコクジン!て感じ。
でも日本うまれ日本育ちだし国籍も日本。
なんだけどね〜…。
いやもうめっちゃガイコクジン言われる。
母ちゃんもけっこー言われる。
二人とも日本うまれ日本育ち国籍日本で完全日本人なんだけどねー。
父ちゃんも今は日本人です。帰化したんで。
まあバスケうまそうも日本語うまいねも慣れたもんだしなんならネタにするけど、なんだかな〜〜みたいのはあったわけ。
そういうわけでちょっと「ニホンジンとは」てのに敏感だったんだけど———…
「おお!伝説通り…!黒髪黒目のニホンジン勇者様!」
異世界人〜〜!!!!
それでいいのか異世界人〜〜〜!!!
そりゃまあ髪も目も黒いけどね!!黒いけどね〜〜!!
なんかちょっと笑っちゃって、でも初対面で説明抜きに日本人だー!て言われるのがちょっと嬉しくて——……それこそ外国の人に英語で話しかけられるとかよくあったし。うちに母語英語の人はいません〜…なもんで、そんじゃ魔王退治頑張ってみるか!!てなりました。いい人たちだったしね。
——ちなみに、以前の勇者たちの残した記録があるって聞いて、見せてもらったんだけど———…
日本旅行中の韓国系アメリカ人とインドカレー屋さん勤務のネパール人がいた〜〜!!!!
黒髪黒目だけど!黒髪黒目だけど!!
おれ前一応二重国籍で、18んときにまあ日本だろで決めたけどなんかちょっと色々思ったりはしたのよ。なのに異世界ーーー!!!!雑すぎか〜〜!!
もう笑っちゃうよね!
あとあっちとこっちで時間の流れってがちがうっぽかった。
えっ帰る時どーなんの!?てなったけど、元の時間に戻れるそう。ほっとしたね。
ずっと前にはお侍さんとかもいたみたい。
異世界人召喚とかなにそれで困ったろうね〜。
まあそんなわけで、なんとか魔王退治して——…っても、勇者召喚された時点で「倒せる力」みたいのが付与されるのかわりとさくっと——元の世界に帰りました。
一瞬どこいたかわかんなくて、住宅街の真ん中で、あっそーだった下校中だったーてなった。
そんな苦労したわけでもないけど、やっぱ戻れた!て胸が熱くなった。こっちの時間経過はないけど体感では三ヶ月くらいたってるし。
しかしお礼にもらった金銀財宝とかのせたリヤカーと一緒に帰ってきたんでやべえどうしよとなった。桃太郎かおれは。不審すぎる。
ピコンとラインがきた。
おおースマホも久しぶり…と見ると、彼女からだった。いるのだ。
『今日はあたしがご飯つくるね!』
おれは走り出した。リヤカーをひいて。
早く帰りたい!父ちゃんと母ちゃんに会いたい!彼女にも会いたい!
彼女は幼馴染のお隣さんで、将来結婚しようねって約束してるのだ!大好きなのだ!家族ぐるみの付き合いで一緒にご飯食べたりもしてるのだ!
早く帰って彼女のアドボが食べたい!!!
え?アドボ?フィリピン料理だよ!彼女はフィリピンとのミックスなの!国籍日本です!
あっそーだ彼女も黒髪黒目だから召喚防止に髪染めたらっつっとこ!あーでもこの財宝見たらウチもいく!ていうかもなー。
おれは夕焼けの中、「日本人」として異世界を救った誇りを胸に——いやアメリカ人とネパール人もいたけど——リヤカーを引いて、家へ帰るのだった——……
お読み頂きありがとうございます!黒髪黒目ばっかでもないよなー(そこ使った誤解ものとかもあると思いますが)とか思った結果のなんかでした!(*´∀`*)