第93話 ブルーノの買い物
クルトはブルーノを心配して話しかける。
「食事はどのような恰好で行きますか。」「俺はいつもこの格好だぞ。」
「そうでは無くて、コリンナさんとの食事です。」「う~ん、この格好じゃダメか。」
「他に服は持っていないんですか。」「作業着がある。休みに近所の手伝いをしているからな。」
「給料は何に使っているんですか。服ぐらい買えるでしょ。」「使い道が無くてな。弟分たちにおごるくらいだ。」
「昼からでも服を買ってきてください。」「どんな服が良いのかわからないな。」
「それならコリンナさんを買い物に誘ってはどうですか。彼女に服を選んでもらうんです。」「そうだな、それが確実だ。」
黙って聞いていたコリンナが抗議する。
「私のいる前で、そんな話をしないでください。」
ブルーノは抗議を無視して、真面目な顔でコリンナに言う。
「コリンナ、昼から一緒に買い物に付き合ってくれないか。」「仕方ありませんね。お付き合いします。」
ブルーノとコリンナは午後から休みを取り街へ行く。彼は彼女を助手席に乗せて運転する。初ドライブであるが車が真紅の装甲車なのは仕方がない。
街に着くとブルーノはコリンナの選んだ店で服を試着して選んでいく。付き合わされているコリンナはまんざらでもない、形はどうあれ立つデートなのだ。
買い物が終わると彼らかカフェに入る。コリンナは胸にたまっていることを吐き出すように言う。
「香港のこと怒っていませんか。」「怒ってはいないけど、気分は良くないね。」
「失言でした。すみません。」「えっと、何のこと。」
「ある方々の依頼を受けるべきだと言ったことです。」「俺は気にしていないよ。役目を果たしただけだろ。」
「はい、そうです。」「なら当然の発言だよ。」
「何に憤っているのですか。」「あの場で何が起きるかわかっていて、何もできなかったことだよ。」
「誰にも止められませんわ。」そうだが、アウレールたちには悪いことをした。」
「これからもある方々は難しい仕事を回してくるかのしれません。」「団を危険に陥れる仕事は断ろうと思っているよ。」
「分かりました。私がある方々と話します。」「済まない。苦労を掛ける。」
「これも私の仕事ですから。」「よろしく頼むよ。」
2人の関係はこれまで事務的だあったが少し打ち解けたのである。