第82話 暴動のトリガー
パリ軍基地の門の前には住民が集まり、徴税に対して抗議の声を上げている。今のところ、声をあげるだけで物を投げるなどの行為はない。
メレンチー司令官は忌々し気に言う。
「暴動が起きれば制圧してやるのにうるさい連中だ。いいかこちらからは手を出すなよ。各方面軍にも徹底しておけ。」「はっ。」
住民の抗議は、第1方面軍、第2方面軍、第3方面軍、第4方面軍の拠点でも行われている。
香港市長は住民に落ち着くように訴えているが効果は無い。軍は住民の抗議に対して沈黙している。
そんな中、第3方面軍の兵が抗議に来た住民に対して中指を立てる。この行為に住民が激怒する。
「出てこい、殺してやる。」「策の中に隠れているんじゃねえ。」
住民の怒号が続く中、兵は大声で言う。
「入って来れるなら来てみろ。外で叫ぶしかできないだろ。」
「言ったな。そこで待っていろ。」
住民は拠点の門につかまり揺らし始める。頑丈なはずの門扉が大きく揺れる。他の兵が叫ぶ。
「落ち着け。門から離れてくれ。」
別の兵が、住民を煽った兵に言う。
「何をしている。住民を刺激するな。」「あいつら、うるさいんですよ。」
「お前は姿を隠せ。」「分かりました。」
その兵は再び中指を立て、中に移動しようとする。
その時、門が壊れ住民が拠点の中になだれ込む。住民たちは中指を立てた兵を捕まえると拠点からさらってしまう。
他の兵たちは止めることが出来ない。住民の数が多く兵に近づくことさえできない。彼らは、住民に殴られボロボロになった兵が連れ去られるのを見ているしかない。
応援が駆け付けた時には住民は引き揚げていくところで拠点内にはいない。
翌朝、警戒をしていた第3方面軍の装甲車が、拠点に隣接するエリア31の入り口にさらわれた兵の死体を発見する。
第3方面軍の指揮官ヴィクトル・セロフ大尉は本隊に激高した住民が拠点の門を破壊して侵入し、兵1人を攫ったことを一報で香港基地に報告する。
そして、翌日さらわれた兵が死体で発見されたことを報告する。
彼の報告はメレンチー司令官を激怒させる。そして、ヴィクトルに犯人を逮捕するように指示を出す。
ヴィクトル大尉は、どうやって犯人を特定するか悩む。すでに状況は住民を敵に回している。ここで住民を逮捕すれば暴動が起きるだろう。