第67話 新しい戦力
パリのエリア79で自警団の勝利に浮かれている中、空中戦闘艦と空中輸送艦が1隻づつやって来る。
自警団員が集まってくる。空中戦闘艦からトニーが降りてくる。彼はブリュノ団長を見つけると挨拶する。
「今回は、自警団に空中戦闘艦ラングドックと人型兵器クリス4機を持ってきました。」「トニーさんはこの前、軍用車両を自警団に供給したばかりですよね。」
「はい、ブリュノ団長の活躍を見て、追加の供給が決まったのです。」「何が目的ですか。」
「私は、ある方々から武器の輸送を任されているだけです。」「武器商人でもしているのですか。」
「いいえ、ある方々は軍が力を持っている現状を憂いているのです。」「そうですか、我々にパリ軍に勝ってもらいたいのですね。」
「ええ、期待していますよ。」「ならば、一つお願いがあります。」
「何でしょう。私にかなえられるならよろしいのですが。」「ハンティング・ウルブズを雇ってください。」
「えっ、ハンティング・ウルブズをですか?」「はい、パリ軍本隊と戦うには彼らと共闘する必要があります。」
「いま、すぐには返答しかねます。ある方々には話を通しておきます。」「空中戦闘艦に比べれば安いものです。私の依頼は通ると思ってますよ。」
トニーはブリュノの情報収集力を甘く見ていたと判断する。彼は、ある方々についてもブリュノは感づいているのではないかと思う。
空中戦闘艦と空中輸送艦の乗員が自警団員を集めてクリス4機のパイロット候補を8人選び出す。クリスには魔力回路が備わっているため、魔力の弱い者はパイロットに向いていない。
8人は、2週間のシミュレーション訓練の後、適正からエリク・ジャックミノー、ルイーズ・イベール、リリアーヌ・ミストラル、エドガール・モリエールの4人がパイロットに選ばれ、残りの4人は予備のパイロットになる。
残りの団員も空中戦闘艦ラングドッグに担当を与えられ操作を教えられる。
現在、北部方面軍がエリア79を攻めるための峠の道が崩落しており、方面軍は攻められずにいる。ブリュノはエリアに近い場所での戦闘を避けるため北部方面軍の拠点から軍を誘い出してクリスで奇襲することにする。
彼はラングドッグで発見されないように移動して、山の影にラングドッグを隠して、装甲車5両を軍の拠点に向かわせる。装甲車は夜間、拠点に攻撃を仕掛けるロケット砲で見張り櫓を破壊して装甲車は、拠点に入り込む。
装甲車は機銃掃射して寝ている兵たちを起こして、軍が動き始めると拠点から撤退を始める。
北部方面軍の指揮官は全車両を出し、自警団の装甲車を追跡させる。自警団の装甲車は軍の車両が見失わないように逃げる真似をする。
装甲車は、クリスの待ち構える岩場に軍を誘導する。地理に詳しい兵が言う。
「その先は行き止まりだ。ばかが。」
クリスのチームリーダーのエリクが言う。
「もう少しだ。1両も逃すなよ。」「了解。」
装甲車が岩場の奥に進むとルイーズが一番後ろを走っている軍の装甲車をライフルで撃つ。装甲車の車体は溶けて穴を開けて爆発する。これを合図にクリスの攻撃が始まる。
10両の軍用車は、ライフルに打ち抜かれて全滅する。乗っていた乗員も車両と一緒に焼け死ぬか、焼けながら転げ出ても自警団員がとどめを刺していく。
5両の自警団の装甲車は、再び北部方面軍の拠点に戻り、残っていた兵と指揮官を拘束する。指揮官はブリュノに言う。
「どうやってここに来たんだ。峠の道は使えないはずだぞ。」「知る必要はありません。あなた方を住民の中に放り出したらどうなりますかね。」
「待ってくれ。やめてくれ。殺されてしまう。」「あなたには、これまでやってきたことを話してもらいますよ。」
軍は住民にひどく恨まれている。指揮官は住民の中に放り込まれればなぶり殺しになることを分かっている。
自警団はラングドッグに撤収し、完全な勝利に喜び合う。